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クラスメイトの過去⑥~囚われた聖女~

ちょっと胸糞シーンがあります。嫌いな人は流し見してください。


何か思惑があるのだろうか。何て先かの未来を見据えたような眼差しで、なぎさと結城をシロは見つめていた。



「そうだねぇ……。日向しか知らずに育った温室の花を暗闇の崖に落としてみたいと思わない?」



誰に問いかけるわけでもなく、独り言のように呟いた彼はパチンと右の指を鳴らした。すると、緑色の縁をしたゴシック体の黒い数字が彼を包んでいく。完璧に彼を包んだあとに数字は四方八方に飛び去っていく。


中から現れたのは、結城の親友である想太であった。彼のスマートな顔に似合わない不気味な笑みを浮かべながら結城となぎさに近づいていく。


「おまえっ!!」


結城は目の前の悪魔が友達の姿を借りたことに怒りを覚えた。起き上がろうとするが、手足が動かないことに気がつく。結城の手首や足首には銀色に反射する手枷、足枷がついていた。ジョブが"大工"である想太の能力であった"ものづくり"という技を使ったのだろう。

そんな結城には目もくれずなぎさの両手を掴む。なぎさは驚き「キャッ!」という小さく短い悲鳴をあげ抵抗するも虚しく、両腕を同じく"ものづくり"で作り上げたロープで締め上げなぎさの頭の上の位置まで持ち上げる。


「おい、なぎさに何する気だ!」


怒りを、露にした結城が怒鳴りつける。


「まぁ、見ててよ」

「なぎさに手をだしたらただじゃおかないぞ」

「傷つけたりはしないさ」


フッと笑いながらなぎさを見据える。


「君も想太君もバカだよねぇ。自分のジョブや能力の1%も使いこなせていない」




そういうと、パラパラと何か音がする。何か違和感を覚えたなぎさは自分の胸元を見る。


「キャーーーーーーー!!!!」



甲高い悲鳴が響く。なぎさの聖職者を思わせる丈の長い白い衣や、その上に着用していた肩衣やら下着やらが塵へと変わり、地面にそのまま落ちたり風にのって飛ばされたりしていた。


想太の能力である"物質変化"だった。"大工"はなにもない場所で構造が簡単なものを作り出すだけではなくひとつの物質を違う物質に変えることが出来るのである。高レベルの大工は木造建築を鉄筋コンクリートや煉瓦の家に変えることが出来るのだ。しかし、それは相当難しい技術であり、体力もたくさん使う。しかし、目の前の想太はそれを、簡単にやってのけた。


その能力によってなぎさが着ていた布だったものは塵へと変えられたのだ。その下からは少し塵がついた生まれたままの姿が、見られた。艶かしい白い肌やスタイルのよいからだのラインなど、全てが解放され丸見えになっている。彼女の控えめな胸には塵が少しのっていた。


「ほぅ、いいもんが見れたわ」

「山村先生はロリコンだったのですね。仕事を一緒にしていて気がつきませんでした」

「いやっ!見ないで……」


山村先生と牧野先生の会話をきき、恥ずかしそうに茹で蛸のようになった顔を下に背けながら下半身の恥部を足をくねらせて隠す。


「佐藤!!!!キサマーーーーーー!!!」


結城は震えるような叫び声をあげる。それを、見て、楽しそうに結城の顔を想太の顔をした理解は覗きこむ。



「気分はどうだい? 光のヒーロー。友達の顔した人間が君の大事なものを傷つけているのは」

「佐藤ぉぉぉぉぉぉぉ!!!おまえを絶対に倒してやる!!」

「そう!その目、その目が欲しいんだよ。人が感情という重力によって落ちていくことを表しているその目を……」


愉快そうに笑う理解を結城は人を殺しそうな目で睨み付けている。


「ゆ、結城」


ふと、声がする。結城はなぎさの方に、目を向ける。


「わ、私のことはいいから……」

「や、でも、しかし」

「ほんとうに、いいの……。結城くんは結城くんにしか出来ないいつものような人助けをして」


なぎさは目に涙を浮かべながら訴える。結城はその言葉により、結城は我にかえったのだ。


「あぁ~あ。なんかさめちゃった」


結城の瞳の変化を見逃さなかった想太の姿をした理解は休み時間が終わった子供のようなつまらない表情を浮かべそのあとなぎさの手を強く握る。


「キャッ!」


すると、なぎの足が石のような色に染まっていく。いや、石に変わっていたのだ。やがて、灰色はなぎさを包んでいく。今までそこに立っていたものには生命の温もりは感じず、灰色の裸婦像だけが建っていた。


「あっ……な、なぎさ」


結城は信じたくない光景を見たという表情を浮かべる。


「彼にはまだ、光があったみたい。闇は小さいままだから、この勇者は今日のとこは用済みだ。先生方、そこの銅像とこの勇者をを神谷戦斗君を誘き寄せるだしにつかっていいよ」

「わかりました。教祖様に見せた後ですが、このお二人と学校に残っている数名の生徒をプレイヤー戦斗を誘き寄せる餌に使わせてもらいます」


鏡花が軽く会釈をして答える。彼女はゲームのなかでのキャラロールプレイが執事だったので今も礼儀ただしく、丁寧な話し方なのだろう。



「しかし、佐藤なんでなぎさを殺して結城を絶望させなかったんだ?」


山村先生はたずねてくる。


「人間が善でいられるのは彼らを取り巻く環境がいいからさ。今彼女を失っただけだと僕にしか結城くんの闇は向かない。彼の胸には彼女の光が残り続けてるからね。けれど、それじゃつまらないよ」


理解は笑う。


「この世界を闇で包むほど憎んでほしいんだ。校長先生みたいに」



結城の視界はそこからぼやけて記憶がない。



気がついたら音楽室で、透明なカプセルに学校で留守番をさせていたギャル三人と入れられていた。





次の話からは戦斗君が帰ってきます。

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