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クラスメイトの過去⑤~宗教団体~


「くそっ!!」


このまま攻撃をうけ、吹っ飛ばされているだけだけでは反撃出来ないと考えた結城は、動いた。まずは仰け反っている体をこれ以上後ろに行かないよう足を地面につけ摩擦で後ろへはたらいている力を相殺しようとする。


ズザザザザ!!


よっぽど、強い力と速さで吹っ飛ばされていたのだろう。両足を地面に踏みとどまるために地面を踏みしめる様に力をいれる。しかし、下からの反動でガタガタと足に振動が伝わる。それに、摩擦熱で勇者の靴を履いているのに足の裏が熱い。


上体はのけぞったままの状態ではなく相手を見据えるために腹筋運動をする要領で体を起こす。


しかし、後ろへのベクトルは消えたわけではなく、腰の曲がったまま後ろに動いている。


「くっ!!!!」


結城は両手持ちをしていた、聖剣を地面に突き刺す。


ズザァーーーー!!


少し、結城の体は多少後ろに動いたとはいえ、やっと止めることが出来た。


しかし、



「ご苦労様」


「ハッ!?」



真正面の方向にいたはずの、シロの声が右耳元で聞こえた。シロの姿をした佐藤理解は、ワープしてすぐ横に移動してきたのだ。結城の頭で考えるよりも早くシロは動く。顔面に右手の拳をストレートでぶつけてくる。



「ぐはぁっっっっ!!!」



右頬に当たった右ストレートで結城はその場にぶっ倒れてしまう。


倒れた結城は、聖剣を持っている右手をシロの左足の膝辺りで、左肩辺りを右足で押さえつけられ、馬乗りの状態にされてしまう。


「君、勇者の癖にそんな強くないね」


「ぐっ、うっ……」


シロはマウントの体制を取りながら結城の顔をぶん殴る。右手よりは自由がきく、左手で結城はシロに反撃するが、全く気にしている様子はない。



「アハッ、アハハ、アハハ、アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」



万年の笑みを浮かべながら、両手でボコボコに殴っている。結城は鼻血を流しながら、顔は至るところに内出血が見られ、唇や頬などの頭蓋骨が守りにくい部位は出血を起こしている。それでも、シロは笑いながら殴りまくる。白い服が結城の返り血で真っ赤に染まり出していても。



「や、やめて」



その異常な光景を見たなぎさは、泣きそうな表情を浮かべながら駆け寄ってくる。



「や、やめろー」


「そ、そうだやめろ!!」


「「そうだ、やめろーー!」」



それを見た結城を慕っていたクラスメイト達は駆け寄ってくる。


「おっ、慕われているねぇ勇者君。ランキングはシロの下でもクラスメイト人気は上だねっ」


それを見て、シロは結城の上から離れ、クラスメイトの前に立つ。



「み、みんな......」


「大丈夫?結城君。」


なぎさは結城にかけよりヒールをかける。腫れていた顔や内出血がみるみるうちによくなっていく。



「待ってろ、結城、今仇をうつからな。ファイアーボール!」


「サンダーボール!!」


「アイスストーン!!」



結城と同じサッカー部の仲間三人が属性魔法をシロに向かって撃ちだす。それぞれ、ジョブは"魔術師"といって、"魔女"とは違い、攻撃魔法特化でMPが魔女よりも多い。しかし、HPが魔女より少ないという欠点があった。


シロは、出してきた技を見て落胆していた。



「はぁ、つまんな」



シロは三つの属性魔法を血で染まった右手で軽く払いのける。すると、三つの属性魔法は消滅してしまう。



「えっ、なんで」


「一撃必殺を撃ち込んだはずだったのに」


「糞っ!!もう一撃だ!!」


三人はもう一度技名を唱えようとするが、



シュッ!!シュババッ!!



何かの音がした。まるで、何かを斬った音のような……


結城はシロがいなくなっていることに気がつく。


「おまえ、まさか」


「ご名答!」


クラスメイトの輪の中から拍手がきこえる。ぎょっとして拍手の方向を見ると、シロが立っていた。

サッカー部の三人の、方を見る。

すると、生気を抜かれたような目をした首が少しずれ出す。


「キャ、キャーーーー」


それに、気がついた女子は悲鳴をあげる。しかし、首が落ちる寸前で三人は消滅してしまう。首がずれる前にライフは0になっていたらしい。奴は、ワープして腰に帯刀している剣で三人の首を斬り、プレイヤーキルをしたのだ。しかし、全く、ワープしてから抜刀してから斬り、そして帯刀し、そしてワープするという一連の動作を一切見ることができなかった。そっちの方向を見てなかったとはいえ明らかに早すぎる。


「こんのやろぉぉぉ」


すぐ近くの茶髪の男子が、殴りかかる。しかし、シロは手で拳を押さえ付け関節技をきめて、茶髪の男子の体を自分の体に引きつける。


「ぐっうぉっ!」


すると、茶髪の首からゴキッと音がする。関節技を手から首に持ち変え関節技をきめ骨を砕いていた。


「ぬるいね。自分の実力もわからないで感情だけで動く人間は。実にくだらない存在だ」


そう言って、シロはクラスメイトを蹴りだす。


「ぐっ!!!」


「がああああああ!」


「ウッ」


「キャーーーー!」


キックを、受けたクラスメイトはどんどん消滅していく。大声を出して消えていくもの、声も出せずに消えていくもの、声が漏れてしまったように絶命していくもの、様々な消えかたをしていく。逃げ惑うものをシロは捉え一人残さず、消していく。


「せ、先生方はさっきからなんでなにも動かないんですか!!」


なぎさは悲痛な叫びをあげる。



しかし、その声をきいてもパーティとしてついてきた教師は動かない。


「ま、まさか佐藤が洗脳したのか」


結城は佐藤が宗教を作っていると聞いたことがあった。その能力を、使って洗脳したと考えたのだ。


シロは最後の一人のクラスメイトを、蹴りあげながら答える。


「たしかに僕は、人の闇を聞いてあげるのが好きだったからダブマスで人の相談にのってあげてたよ。気分が晴れた、問題解決した人は僕のファンになってついてきてくれたけどね。けれど、僕は先生方に、直接命令は出してないかなぁ。それに、宗教作って表現に近いのは僕ではなく、"校長先生"のほうかな」


「は?」


結城は、戸惑う。


「校長先生は食料がなくなるのを、拒んで君達が早く死ぬのを待ってたんだよ。だって、普通は正義のためだからって、大事な自分の生徒を戦場に送り込むわけないじゃん」


シロは笑いながら答える。


「そ、そんな嘘ですよね牧野先生!!」


なぎさは一番仲の良かった音楽の牧野先生に確認する。今はSっ気の強い魔女の格好をしているがいつもは気の弱く慕っている生徒が多い先生だった。しかし、


「はぁ、仕事だから、あなた達に、構っていたけど、公私がはっきりしない今の状況で先生なんて呼ばないでくれる?プライベートまで侵食されるとなるときついわよ」


いつもの優しそうな雰囲気ではなかった。なぎさや結城の知っている顔ではなかった。


「そうだな、それに、我々教師は校長先生、いや教祖様に従うだけだ」


体育教師だったファイターの山村先生もそう答える。


「校長先生から佐藤くんは生かしてくれって言われてるけど教祖様に何をしたの?」


「僕はゲームの方向性を決めかねていた校長先生の背中を押してあげたんですよ」


牧野先生の質問にシロの格好をした理解は答える。


ショートカットの秘書のような女性が眼鏡をかけ直しながらでてくる。彼女は二十九才で教頭になった黒澤鏡花である。いつもは出来るキャリアウーマンという感じ立ったが、今はさらに冷たさが増したように感じる。


「教祖様から連絡がありました。佐藤様が私達の仕事であるクラスメイト殺害を行ってくれたお礼がしたいそうです。何がよろしいでしょうか」


「そうだなぁ……。あっ、僕の会いたい人を学校に呼びだしてほしいんだ。そのついでに彼の能力、戦力をみたいな」


「それは、少し注文が多いような……」


「う~ん、別に悪い話じゃないと思うのになぁ。今校長先生を嗅ぎ回って探しているらしくて後々邪魔になるかもしれない人物だからね」


「どなたでしょうか?」


「このクラスの勇者である"神谷戦斗"だよ」


「なるほど」


鏡花は納得したように呟く。教祖様の信者の中に神谷戦斗の知り合いの両親がいるらしく探し回っているのを見かけたからだ。


「ちなみに、倒せるなら倒してもらっても構わないよ。そんなもんで死ぬ雑魚は僕にはいらないから」


「わかりました、では彼の幼馴染みであるなぎささんを使いましょう」





教師の目がなぎさに向く。


「な、なぎさ。大丈夫だ、おれがまも……る」


結城のその言葉をきいてシロはにやける。



「あっ、待って。この二人僕に任せてよ」



白い悪魔は笑っていた。

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