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クラスメイトの過去④~シロい悪魔~


さっきまでボサボサ髪の黒髪で眼鏡をかけた少年は消え、その代わりに現れた死んだはずの少年は口を開く。


「すごいでしょ、この技術。理解した?僕は天才なんだよ」


意気揚々と語る様は状況を知らなければ小さい子供が自分を誉めて欲しいと、ねだっている様に見える微笑ましい光景だ。しかし、現実は違う。外見は子供でも中でサイコパスが微笑しているおぞましい状況にあった。


「さ、佐藤はさっきまで、ブルードラゴンに殺された想太の姿で俺たちと過ごしてたんだな」


震える声で結城は質問する。


「う~ん、ちょっと語弊があったね。ブルードラゴンに瀕死寸前まで追い込まれてたけどとどめをさしたのは僕」


男の子はにこやかに告げる。


「はっ、な、なん……で……」


「瓦礫の下敷きで助かりそうにもなかったし、アカウント乗っ取れるか確かめたかったんだよね。それに、君たちに近づきたかったし」


「近づく?なんの目的でっ!」


「ハッキングして一人一人のステータス見たんだけど、ここのクラスは、珍しいことに勇者が三人いたんだよね」


「えっ!」


結城は驚く。周りの人たちも初めて知った情報らしくて驚いているみたいだ。なぜなら、勇者のジョブだけは他のジョブと違い抽選があり選ばれた人でないとなれないのである。しかも相当低い倍率である。しかし、誰が……。


「結城君達はもう一人の勇者とはもう顔あわせてるでしょ。ファイアードラゴン討伐中だったはずだよ。神谷戦斗っていうプレイヤーなんだけど」


結城達は驚く。会ったときは人権とまで言われてたWMSをやってるかすら怪しかった人間が、蓋を開けてみたら強豪プレイヤーだったという印象しかなかった。勇者っぽい服装や武器をしていたが、模造品だと考えていた。


勇者は大抵光属性を選ぶし、戦斗も使っていた。属性はひとつしか選べず、他の属性を使えたとしても攻撃力はさほどない。

しかし、ファイアードラゴンに最初の一撃にブリザードランスを使用していたのでジョブは"魔女"だと勝手に思っていた。


「神谷戦斗君が学校にいると思ってきたんだけど見当違いだったよ。彼はこんな下らないスクールカーストなどが存在する学校のコミュニティには興味がなかったみたい。僕といっしょだぁ。あは、あはあはは、アハハハハハハハハハ!!!」


同士を見つけたかのように笑う少年を結城はじっと見つめながら考えていた。神谷戦斗の話をきいていない訳じゃないが今はそれどころじゃない。目の前に人の生活を脅かす悪魔がいるのだ。


(このまま奴を見過ごしてしていいのか。プレイヤーキルをする極悪人を)


シュバッ!!


そう考えると、勇者の剣を両手で握りしめ走りだす。


「おっと……」


結城の第一撃である縦斬りは少年の軽々としたサイドステップで避けられる。次は当てようと結城が振り上げた刹那、


「あんまり、手荒な真似しないでよ。疲れるんだから、理解できないのかな」


囁き声がきこえた。それと、同時に


パチン!


右手の指パッチンの音がきこえたと頭で理解したと同時に結城は気がついたら宙を待っていた。


スローモーションに落ちていく、飛ばされている感覚だった。何者かにただ殴られただけで吹き飛ばされたのだと。


見える目の前の光景を、空中を漂いながら結城はただ眺めていた。


そこには、白いコートを羽織り、顔を全て白い仮面のようなマスクで隠した人物が立っていた。それは、まるで、上位ランカーであるオセロと、呼ばれていた二人組の一人である、"シロ"というプレイヤーにそっくりだった。その人物は結城を殴ったと思われる右手を引っ込めながら体制を整え、マスクを顎まで下げて口を動かす。





「勇者対勇者のはじまりだね」




と言っているように思えた。結城は理解した。クラスにいた三人目の勇者は誰もが名前を知る"シロ"なんだということを。そして、彼は、今はもう生きてないということを。



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