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勇者の決意


エクスカリバーで斬られた後、消滅した牧野先生を見届けた俺は元同級生を閉じ込めていたカプセル状の物をぶち壊す。


「た、助かったしー」


「あんた、根倉なだけのやつかと思ってたけど意外と強かったんだね」


ギャル二人組が感謝の言葉を述べている。


「はぁはぁ......。君に助けられるときが来るとは思わなかったよ。戦斗君」


イケメン勇者の結城は重い口を開く。


「今は別に感謝の言葉をききたいわけじゃない。プレゼンの時に言おうとしていたことについてききたいだけだ」


俺は、牧野先生と戦闘に入る前の場面を思い出す。結城は「俺らをこんな風にした奴の名前を教える」と言っていた。


「僕は......騙されたんだ!!」


結城は何かを思いだし後悔しているのだろう。苦痛で歪んだ顔で床を拳で殴った。


「すまん、時間がないから誰が何をやったかだけの結論だけを教えてくれ」


俺は、元クラスメイトの吐露された感情をきいて慰めてあげるカウンセラーでもないので早くきりあげたくて口をはさんでしまっていた。


しかし、結城は下を向いたまま黙りこんでしまう。心身に影響を及ぼすような相応酷いことでもやらかしたのだろう。言い出したくなさそうだ。


「はぁ、じゃあいいや。俺は行かなきゃいけないところがあるからな。お疲れ」


こいつら自体に用はない。元々なぎさを心配してきただけだ。それに、今は魔須美も拐われてしまっている。情報を与えることすら出来ない使えないものにかまっていてもしょうがない。俺は音楽室をそのまま立ち去ろうとすると、


「ちょ、待って!!」


ギャルの片割れの翼?だっけか。そんな名前の黒ギャルが俺を呼び止める。


「うちらが捕まったのは佐藤って奴の仕業」


俺は佐藤という何処かできいたことのある言葉に反応する。別に名字が日本一多いからという理由ではない。最近きいたことのあるからだ。


あれは、狙撃手に襲われた後だったはず。魔須美の友達を助けた後からきいた名前だった。



"「その彼氏のクラスにねぇ……陰キャの佐藤君って子がいるんだよねぇ。彼氏が佐藤君はWMSの中で宗教団体作ってて気持ち悪いから近づくなって言われてたんだよぉ……。」"


俺はその言葉を思い出す。黒幕だと睨んでいた人間は黒幕で正解だったのだ。しかし、その時は佐藤という人間の存在はつかめたが、佐藤がどんな人間でどんな人物か知らなかった。


「佐藤ってどんな人間なんだ?何やらかしたんだ?」


俺は、率直に問い詰める。すると、


「僕の......僕の、友達を殺してそいつに成り変わっていた」


口を閉ざしていた勇者は口を開く。今の話が本当なら他のプレイヤーに姿を変えることが出来る能力を持っていることになる。


「そして、そいつの姿で僕たちを嵌めやがったんだ!!!」


怒声が音楽室に響く。そして、友の死を思いだし勇者は肩を震わせながら泣きはじめる。


「ごめんよ、想太。いつも近くにいたのに気がつけなくって」


結城は泣きながら亡き友の名を告げる。



「そ、そうた.....。もしかして、あのときの......」



俺は、首謀者と会っていたことと、何もせず逃がしてしまっていたことを思いだし、悔しさで歯を噛みしめた。魔須美と買い物していたときに、声をかけてきた人物を思い出す。


「くそっ!あんとき会ってたのか」


俺は、そいつに会って倒そうと、急いで音楽室を出ようとするが、


「待ってくれ!」


プライドが高かった勇者である結城に声をかけられる。


「僕もつれてってくれないか。友達の仇をうちたいんだ!」


決意した表情で告げてくる。俺も、友達を失った気持ちはわかる。いつもなら冷たくあしらっていただろう。


しかし、


「俺の足ひっぱるなよ」


俺は、結城を許した。友達が亡くなったという共通点にシンパシーを、感じたのかもしれない。


「あ、あぁ、任せて」


結城は立ち上がり俺について来る。俺は、遊太以外のクラスメイトとはじめてタッグを組むことに気がついた。


「せ、戦斗君と呼べばいいかな。これから仲間になるの印だ」


結城は握手を求めて手を差し出してくる。そういえばこいつは、こんな恥ずかしいこと出来る奴だったな。


「あぁ、一先ず敵を倒すまでは俺たちは仲間だ」


俺は差し出された手をつかむ。


(遊太、お前の好きだったゲームで人が悲しむ姿なんて見たくないよな。俺がそいつらを荒らしてでも止めてやるから)


俺は心のなかで決意をした。




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