買い物デート~戦斗からのプレゼント~
「あっ、戦斗おはよう!!」
「あぁ、おはよう」
眠気眼をこすりながら魔須美が俺に朝のあいさつをしてくる。
俺は、あの後、一睡も出来ずなかったので、一人でスキルの確認などをするために一人外にいた。
「今日はどうするんだ」
「ちょっと、街をまわってみようかなって……。商店街できたらしいし、そこにお父さん、お母さんがいるかもしれないし」
「他の三人はどうするんだ?」
「きょ……今日は、別行動するみたい。だから、二人でいこうっ!!」
いきなり、きょどりだしたが何かやましいことでもあるのだろうか……
「いいぞ」
まぁ、気にしないでおこう――
俺たちは政府が急遽作ったといわれる実際に使えるWMSのポーションやアイテムなどを売っている商店街にやってきた。
「時々来てた駅前のゲーセンのためここ通ってたけど、鉄筋コンクリートが並んでいた頃と違い商店街もぼろくさくなってるなぁ」
変わりように驚いていたが、この人だかりは人気を証明していた。
特に回復するアイテムや薬草、お助けアイテムなどは行列が出来てる。
「一列に並んでくださーい。回復ポーションはまだまだ在庫がありますので!!押さないでくださーい」
スタッフが大きな声をだして整列をしている。大繁盛なのは今来た俺でもわかる。
「あたしもアクセサリー系のアイテム買っていい?」
「あぁ、いいぞ」
アクセサリー系のアイテムはポテンシャルを上げたりするので、とても重宝されている物だ。自分のステータスを今後のために少しでもあげときたいのだろう。いい心構えだ。
「その……、あたしアクセサリーよくわからないから戦斗に選んでもらっていいかな」
魔須美が珍しく上目遣いをしながらすりよってくる。
「あっ、別にお金払ってほしいとかじゃなくてっ!!あたしであたしの分は出すからさ」
近づいてきたかと思ったら顔を茹蛸のように赤くしながら急に手を振りながら後ずさる。
「別にいいぞ」
お金も別に気にしないで出してやろうと思ってたのに律儀に自分で払おうとしているなんて感心する。やっぱりWMSの向上心が金銭欲より勝っているのだろう。
「俺が、魔須美に似合ういいアクセサリーを探してやるよ」
「うんっ!!」
俺と魔須美はアクセサリーショップの最後尾に並んだ。
「次の方どうぞ」
三十分くらい並んだ後に自分たちの番が回りショップに入っていく。
「わぁ~可愛いのがいっぱい」
魔須美の目も宝石のようにきらきら輝かしながらあたりを見渡している。あんな大事件が起こって数日後にこんな品揃えのいいお店が出来るとは思ってもなかったから俺も内心驚いていた。
しかし、喜んでいる魔須美とこのお店の充実具合を見ると、ほっこりとした気分になってくる。
「魔須美!お前に勧めたい物はこっちある。ちょとこい」
「うん!!」
うきうき顔でついてくる魔須美だったが、品の棚に近づくに連れて肩がドンドン落ちていく。
「見てくれ!!これが魔須美にお勧めの品だ」
俺は熱帯雨林の先住民が儀式の時につけてそうなお面を手に取る。これは、”魔よけの仮面”と言ってつけていると、呪いや状態異常攻撃が一切効かなくなる優れものだ。
「却下……」
しかし、その品を見た瞬間俺の手から奪い商品棚に返す。
「なんでだよ。あれめっちゃ強いんだぞ!!」
「あたしはああいうのほしいわけじゃないの!」
「じゃあ、どんなんがいんだよ?”速さの仮面”か?」
「ちがう!」
「”魔よけの髑髏”」
「ち~が~う!!」
「”筋肉ムキムキブレスレット”」
「……、もう知らない!!」
魔須美はぷんすこと怒りながらお店を出て行く。何がいけなかったのだろうか。女心という者はつくづく難しいと実感した。
「はぁ……追いかけるか、んっ……」
お店から出ようとしたとき、何故か目に留まってしまってその場で少し立ち止まる。俺はその場ですぐに買うことを決めた。
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「はぁ……、なんであたし怒っちゃったんだろう。あたしらしくないな」
今、モンスターや他のプレイヤーがいるこの世界でアイテムは性能重視で決めなければいけないことぐらい頭ではわかっていた。けれども、いざ商品を見ると何故か気分が落ち込んだ。
「戦斗からのプレゼントだって期待してたのかな……」
自分でお金も出すから選んでと言っておいて怒ってしまったのは、今思い返すと矛盾してるし、戦斗にも悪いと感じた。
「謝りにいこっ!」
「魔須美~!!」
お店から出てきた戦斗が手を振りながら駆け寄ってくる。
「戦斗……あのっ!!」「魔須美っ……あのっ!!」
二人の声が重なる。
「戦斗からどうぞ」
「おぅ、じゃあ……。さっきはごめんな。だからこれお前にやるよ」
戦斗から手渡されたのは神社とかでもらえる御守り型のキーホルダーだった。
「これは……?」
「会いたい人とまた縁があるようにって願いが籠められた御守りだ。WMSでは探してるアイテムが見つかりやすくなるアイテムだったけど、ここで効果があるかわかんねぇけど使ってくれ」
「戦斗……。ううん。嬉しい。ありがと」
あたしは涙を浮かべながら戦斗に抱きついた。
「おっと……なんだよ急に……」
「ちょっとだけ……こうさせて……」
「しゃ~ね~な~」
こんなにもわがままな自分に振り回されても付き合ってくれる、こんな戦斗が好きなんだと今改めてあたしは気付いちゃった――





