一高校生の平凡な毎日
「ねぇ、昨日のゴブリン大量発生イベント。やった?あれ、ちょ~うざくない?」
「キャハハッ!わっかる~。いくら雑魚でもあれは数多すぎでしょっ!!」
俺は、ギャル二人の会話を耳に挟みながら、帰宅するため鞄に教科書を詰めている。他の奴らにも耳を傾けるとl現代では、やってない人類はいないのではないのかと疑いたくなるほど大人気VRMMORPGの”World of Magic Sword”、略してWMSの話題があちらこちらからきこえてくる。
ちなみに”World of Magic Sword”はワモスとか、ダブマスとか言われている。俺はダブマスと呼んでいるが……
「ちょっとそこ邪魔だからどいてくんない」
「んっ。あぁ、俺かすまん」
自分の席の範囲内で立っているのにWMSをプレイしてない俺は人権もなく迫害されるのであった。特に、争いを好むわけでもないので、リアルファイトを避けるために俺はそそくさと教室を出て行く。
学校を出て、でっかい電子看板を横目に駅に向かって歩いていく。どこもかしこも、WMSの話ばかり。スマホやタブレット端末をいじっている奴らもWMSで使えるアイテムを集めているのだろう。アプリをダウンロードすると、ガチャやミニゲームなどでWMSに使える武器や装備のコードが貰えるらしい。
少しの空き時間を見つけてゲームに没頭している人たちを客観的に見て俺は素直に羨ましいと思える。
俺はもう、趣味といっていいものはなくなっていた。
ボーっとしながら歩いていると、
「よっ!!カミセン!暇だろ付き合えよ」
「ちょっ!いきなりだし強引だな」
俺の左腕をつかんで引っ張ってる奴がいる。大泉遊太といってWMSをやっていない俺に話しかけてくる変わった奴だ。
「いつものことだろ。まぁいいからいいから」
このまままっすぐ行くと電車一本で自宅付近まで行ける駅に着くのだが、遊太に連れられて右の道路へと進行方向を変えられる。
「しゃ~ねぇな。まぁ、家に帰りたくないのはいつものことだしいっか」
「さっすが、カミセン。そうこなくっちゃ」
趣味とは言えないけれども、こいつといると楽しいと感じるからこの世界も捨てたもんじゃないと少し思っている俺がいた。