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葛藤の中で……

「戦斗君、よかった。生きてた……」


なぎさは目に涙を浮かべて俺の右手を嬉しそうにつかんで来る。それはまるで、生き別れた恋人との再会を喜ぶかのように……


「おい、あいつ生きてたのかよ。死んだと思ってたぜ」


「WMSも最弱のくせに良く生きてたわね。なんかずるでも使ってるんじゃない?」


「まぁ、どうせ後で死ぬでしょ」


元クラスメイトの勇者一行は俺に罵詈雑言を浴びせてくる。ドラゴンとの戦闘中だというのに余裕があるようだ。


「なぎさ!!何をしているんだ。彼のことより今はファイアードラゴンに集中するんだ!!」


ファイアードラゴンの相手をしながら結城は叫んでいる。前半の言ってることは良くわからないが、後半は正解だ。ジョブは勇者の結城翔(ゆうきかける)は正しい判断が出来るらしいし、ここは結城御一行に任せるとしよう。


「魔須美、どうやら俺らは邪魔だったらしい。教祖とやらを探しに行こう」


「う、うん……」


強引に手を引かれて魔須美は俺についてくる。


「待って!!結城君。彼をパーティにいれてあげても――」


「なぎさ!今はそんなことをしている暇はない早く僕に”聖女の祈り”をささげてくれ」


「わ、わかった……」


”聖女の祈り”とは、女性の聖職者が祈ることにより、勇者の能力値を何倍にも跳ね上げる効果を持っている。しかし、持続効果は一分だけで、それ以上を過ぎると勇者は行動不能になってしまう。最後の勝負を決めたい時にしか使ってはいけない技である。


しかし、見たところファイアードラゴンの体力はまったく削れてなく、使うには時期尚早だ。しかし、俺には関係のない話だ。



「待って!」


魔須美が握られている手を払いのける。


「ここで、戦斗は彼らを助けなくていいの?」


「なんでだ?別に俺と彼らは仲良くしたことはない。だから助ける義理なんてないはずだ」


「ほんとに?」


「どういう意味だ」


「だって……、だって……、知り合いなんでしょ。今まで嫌なことしてきたかもしれない、好きな奴じゃないかもしれない。けど、見捨てていいの?」


「…………」


「だって知り合い、なんでしょ。絶対後悔するよ。救えなかったんじゃなくて見捨てたんだって。助けないで後悔するなら、助けてから後悔したほうが絶対いいよ!」


魔須美が泣きそうになりながらも俺に訴えかけている。その心の叫びがまっすぐと俺に届く。自分の友達と喧嘩別れして会えてないことが心残りなのだろう。俺は、遊太の言葉を思い出す。




(もう一度お前の手でこの世界を救ってくれないか)




遊太の俺への思いが込められた最後の言葉を思い出す。


「そっか――。そうだよな、遊太。俺はこんなところで立ち止まっちゃいけないんだよな。これは、俺とお前との約束だったな」


俺は、誰に聞かせるわけでもなく独り言のように静かにつぶやく。


「魔須美……、ごめんな。そしてありがと」


「戦斗……」


俺は結城勇者一行のほうを振り向く。


「ぐあああああああああああ」


「きゃああああああああああ」



結城達はドラゴンに圧倒されていた。どうやら、なぎさの”聖女の祈り”の効果が切れたらしい。結城は、ファイアードラゴンの吐く火球に吹っ飛ばされている。


ガルゥゥゥゥゥゥゥゥ!


「くそっ、僕たちもここまでか、すまないみんな……」


結城は地面に伏せた状態でこぶしを強く握り、悔しそうに唇を強く噛んでいる。


「見てらんねぇな!!!ブリザードランス!!!」


俺は、氷の槍をドラゴンの顔面にぶつける。しかし、皮は分厚いらしく、当たった瞬間砕け散る。しかし、ファイアードラゴンの視線を結城達から逸らさせるにはそれだけで十分だった。


「戦斗くん!!!」


「なぎさ、勘違いするな。俺はこのドラゴンが目障りだから倒すだけだ。お前らはさがってろ」


俺は結城パーティ一行とドラゴンの間に立ち対峙する。


「おい、ドラゴン。俺は今気分が悪い……。だから、派手に荒らさせてもらうぜ!!」


ガルゥゥゥゥゥゥゥゥ!!



俺とファイアードラゴンの戦闘が今始まる。




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