明日の予定
瑠璃ちゃんは気持ちが少し軽くなったのか泣き止んでいた。
話をきく限り小学校のクラスの仲いい女子で移動していたところをオーガに追われていたらしい。
俺たちはというと、錆びれて誰も居ないコンビニの控え室でたむろっていた。もう夜の七時をまわっていたし、夜は夜のモンスターが出るのでどこか建物に入ろうという案に賛成したのだ。誰も居ない一軒家はどうかと抵抗したが、みんな誰かが使っていたところにお邪魔するのは申し訳なさそうにしていたのでと鍵がかかっているからなしにした。本当はスキル”解錠”でどんな物でも開けられるのだが黙っていることにした。そうこうしているうちに、食料と狭いけどバイトの控え室で寝れるということでコンビニにした。
一応、透明化とバリアを貼っているから大抵のモンスターは入ってこれないし近づけない。
「そんなに離れてないから、魔須美の家まで今日のうちにいけると思ってたから考えなかったけど、本気で宿などの寝泊りについては考えたほうがいいかもな。毎日コンビニ探すって訳にもいかないし」
「戦斗のいうとおりね。そうすると、食料も確保したほうがいいわね」
「遊香ちゃん大抵のスキル持っているはずだから、”建築”のスキルで家作れるんじゃないっけ?」
「はい、出来ると思いますけど……」
「なら、明日になるんだけど頼んでいいかな。一回拠点作って、何か終わったらワープで戻ってゆっくり休みたいなって。俺と魔須美はの隣町に行く班と拠点を作る遊香ちゃんと瑠璃ちゃんの拠点を作る班に分かれて。何かあったら、遊香ちゃんが俺にテレパシーを送ってくれ。材料は俺が錬金するとか手伝えることは手伝うからさ」
「わかりました。出来る限り頑張ってみます」
「ねぇ……遊香ちゃんのお兄ちゃんの小屋の内装を変えればいいんじゃないの?土台から作ったちゃうと大変だし」
「魔須美の言うとおりかもしれないな。一応透明化とバリアはかけとくから」
「わかりました、わたし頑張ってみます」
「あと考えなきゃいけないのは食料か。ここにあるの俺の保管庫に出来る限りぶち込むとしても絶対足りなくなるしなぁ」
「そ……それなら瑠璃できるよ」
おそるおそるというように瑠璃ちゃんの手があがる。
「瑠璃……ジョブは薬草師なんだけど、料理が好きだから料理人じゃないけど……料理のスキルたくさん……持ってる……」
「おし、流石だ瑠璃ちゃん。料理は君に任せた。明日の予定は一旦小屋に戻ってから俺と魔須美で出発しよう」
「わかったわ」
「予定もたてたことだしすこし早いけど寝とくか」
俺ら四人は狭いスペースで雑魚寝した。俺は一番端で寝ることにした。
俺が少し仮眠をとってから何時間たっただろうか。目が覚めると涙をすする声がきこえた。四人中二人は疲れからかぐっすり寝ていたので誰が泣いてるかは一目瞭然だった。
「寝れないのか?」
「せ、戦斗……」
俺の隣で寝てる魔須美の声がきこえる。
「あたしよりさ、ちっちゃい子がしっかりしてるからあたしもしっかりしようって思ってたのに、ちょっと今は我慢できないかも……」
「家族のことが心配なのか?」
「それもある……。けど、友達のことももっと心配」
「俺と出会う前に一緒にいたって子たちか?」
「うん……、実はあたしさあの時、本当はイツメンと喧嘩して一人で帰ってたんだよね。いつもカフェでおしゃべりしたり、スマホでWMSしたりしてから帰ってたんだけどあの時は早く帰ったんだ。そしたらこんなことになっちゃって……。しかも喧嘩の内容がすっごくどうでも良くて……、自分がメール返した返してないとかそんなん」
俺は魔須美の話をききながら共感できる部分がたくさんあると感じていた。WMSの世界がリアルに流れ込んでくる前に俺も遊太と喧嘩して別れている。今も会えてない魔須美は気が気じゃないだろう。
「あたしさ、こうなる前に仲直りしたかったよ……」
「魔須美……」
魔須美は体を震わせて泣いていた。
「今だけはこうさせて」
魔須美が俺の胸に顔をうずめてくる。
「今は思いっきり泣いときな。俺が受け止めるからさ」
「戦斗……ありがと……」
俺はそんな魔須美を優しく抱き寄せた。
「ごめんね、さゆみ、えり、みかん。ごめんね……」
寝ている二人を起こさないための配慮か押し殺した声で泣いている。そんな彼女を俺は優しく抱きしめてなだめることしかできなかった。