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オーガの群れ

とりあえず、”Saints”は魔須美の家である隣町まで向かうことにした。


「とりあえず、移動手段は歩いていこう。WMSのクロのアカウントを使用できるからワープの能力を持っているはずだが、行ったことがある街にしかワープすることが出来る。この現実世界のマップがどうなっているのか皆目見当もつかないし、ワープの効果や使用制限をまだ把握しきれてないから危険に晒されるかもしれない。座標がわかってもモンスターの真上にワープしてしまう危険性もあるし、もしかしたらワープした後、動けなくなるとかの効果があるかもしれないし」


「長い、長い……!!もう、わかったわ。あたしの家まで案内するわ」


「よし、ひとまず、ここを出よう」


遊太の小屋を出た俺たちはゴーストタウンと化した街を歩き出す。倒したビッグスライムがここら辺の住民を軒並み食べていったのだろう。声一つしない。


「きん……きゅう速報で……す。き……んきゅう……速報です。WMSにログインしていない……」


無人の車のラジオからはノイズのひどい音が流れている。政府も全国的にWMSにログインすることを呼びかけているので、今生き残っている人たちはなんとか、WMSの姿になっているだろう。


「魔須美は俺と会う前にどんなモンスターに会ったんだ?」


「あたしが会ったのはファイアーウルフとゴブリンとかよわっちい奴かな……ビッグスライムみたいなA級にはあってないわ」


「そうか、遊香ちゃんは?」


「わたしはビッグスライムが他のモンスターを食べていたのかそれにしか会ってないわ」


「なるほど、それじゃぁ、他のモンスターは未知数ってことか……」





「キャーーーーーーーーー!」



少し遠くから、甲高い女性の悲鳴がきこえる。


「行ってみよう」


「けれど、あたしたちが今行っても間に合うか……」


「乗れっ!」


魔須美をおんぶしようとしゃがみこむ。



「えっ///えぇっ///」


「いいから早く」


「わ、わかったわよ」


なぜか顔を赤くした魔須美がおそるおそるというように背後に抱きつく。俺の背中にやわらかい二つの球体がくっつく。なんの感触かわからないが全体的に女の子の体は柔らかかった。


「お、落とさないでよね///」


「落とさねぇよ……、じゃあ遊香ちゃんは前に……」


「わたしはチート持ちなので、自分で走れるから大丈夫です」


「わかった、よしいくぞ!!」


俺と遊香ちゃんはフルスロットルで街を駆け抜ける。全身に風を受けながら走り抜ける。


「早いいいいいいい。目が回る~」


後ろの魔須美が何か言っているが無視をする。走り去る際に葉っぱや埃は宙に舞うが、風においてかれる。




どれくらい走っただろうか、2メートルくらいあるだろうか、巨体の”オーガ”が10体見える。


「遊香、あれだ」


「うんわかった……」


”オーガ”とはDランクのゴブリンの体やパワーが段違いに大きいものをさす。ランクもAランクと跳ね上がっており、相当危険なモンスターだ。奴は豚みたいなひどい顔をしていて、オスのオーガは女プレイヤーをよく襲っている。メスは逆に男プレイヤーを襲う。


俺と遊香は”オーガ”から少し距離を離れて急ブレーキをかけ立ち止まる。

”オーガ”はこちらを一斉に振り返る。”オーガ”の周りには衣服がぼろぼろになった女の子がたくさん転がるように横たわっている。


「ちょっと、戦斗。Aランクモンスター10体も相手にするなんて大丈夫?」


「大丈夫だ魔須美。お前は俺の後ろから出るな。そして俺が注意を引きつけている間に、遊香ちゃんと魔須美は女の子たちの介抱を頼む」


「わかりました」


「わかったけど……気をつけてね」


「楽勝だ」


フガッ!!フガッ!!


オーガ達は一斉にこちらに向かってくる。


「おい、豚野郎ども。お前らの相手は俺だ、こっちにこい」


俺は魔須美や被害者の女の子たちから引き離すために塀や家の屋根を飛び移り、出来るだけ移動する。


フンガッ!!


いったいのオーガが俺目掛けて右手に持っているこん棒でぶん殴ろうとしてくる。


「甘いなっ」


俺は体をこん棒と水平方向に傾け、足場の屋根が崩れる前に屋根を蹴りつけ飛び上がる。こん棒で殴ることに力を入れていたオーガは俺の動きに反応できずに目で追っているだけしか出来ない。俺はそいつの首をエクスカリバーで切りつける。


ウガアアアア!!


最後の悲鳴と共に首は落ち絶命する。


「残り9体か……」


倒されたオーガのすぐ後ろにいた、オーガ2体が俺に向かって走ってくる。エクスカリバーの切れる範囲に届いてないので俺は高速でジョブ”シューター”のバズーカ砲を召喚する。


「発射っ!!」


俺は二連射した。スキル”百発百中”のお陰で狙いを定めなくてもオーガ2体の顔をぶっ飛ばすことができる。


「あと7体」


ウガアアアアアアアア!!


痺れを切らしたオーガ7体はそれぞれ、俺に向かって走ってくる。

俺はバズーカ砲を捨て、右手をかざす。


「ファイナルエクスプロージョン!!!!!」


ウガッ!


半径300メートルの火球がオーガたちを包み込みやがて爆発四散させる。ファイアーインパクトは燃えて熱が発生することによって爆発するのであり、ファイナルエクスプロージョンは関係なくただ爆発させるだけである。最初からこれをやっても良かったのだが、被害者にも爆発の影響が出る可能性が高かったのでやめた。ビッグスライムのときと違い屋外なのでむやみやたらにバリアを使いたくはなかった。MPやHPの存在もゲームと違い体にどう影響してくるのかまだわからなかったから。



「ふぅ、終わったぜ。……他のみんなは……」


「…………」


魔須美が首を横に振る。

俺が戻ると、一人の女の子を残し他の女の子は全員消えていた。魔須美の膝元で眠る裸をマントで隠されている女の子の姿があった。


「んっ……」


女の子はどうやら目を覚ましたようだ。


「大丈夫かい?」


「うん……なんとか……」


「俺は神谷戦斗。君は?」


「瑠璃は瑠璃。小学六年で名前は薬袋瑠璃(みないるり)


「あたしは氷山魔須美よ」


「わたしは大泉遊香」


「み……みんなはっ!!」


「すまん、それが……」


「うっうぅ、うわあああああああああん」


小さい体の中に溜まりこんでいた感情が涙として表れた。俺は泣きじゃくる幼い子どもの姿をじっと見つめることしか出来なかった。


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