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パーティ結成。その名は”Saints”

俺は壁にうな垂れていた。

久々に泣いた。どれぐらい泣きじゃくっただろうか。泣きながら戦斗は遊太との事を思い出していた。一緒にモンスターを討伐したこと、全てのランキングを荒らしまくって俺ら二人で一、二位独占したこと。様々な思い出がかけ巡っていくが、最後の思い出は……屋上で喧嘩してしまったこと。最後に交わした約束。


(この世界と妹を頼んだぞ……セント……)


「おしっ!」


俺は濡れた頬を袖で拭い去り、気合を入れるため頬をパンパンッとたたき立ち上がる。


「戦斗?」


魔須美は俺が行動をしたことに気付き心配そうな顔をする。俺と同じように壁に寄りかかっていたらしい。泣いていたのか目が腫れぼったくなっている。


「お前優しいんだな」


「目の前で人が亡くなってるの見たら誰だって悲しくなるよ」


「そうか……そうだよな」


俺は自分に関係のない他人のことはどうでもいいと感じていた。そのため、流行っているアイドルの名前や顔も知らず、隣のクラスの生徒はおろか自分のクラスメイトの名前も全員は覚えていない。けれど、彼女は違っていた。まっすぐな気持ちで心配してくれていたのだ。


俺は、遊太の妹に近づき出来るだけやさしそうな声で話す。


「遊香ちゃんだっけ?大丈夫?」


「うん……」


「怪我とかしてない?」


「うん……平気」


「遊香ちゃんっていうんだ。はじめまして、あたしは氷山魔須美よよろしくね」


「うん……よろしく」


さっきまで泣いていたのが嘘のように遊香ちゃんが不安にならないように出来る限りの笑顔で接している。子どもや年下の扱いに慣れているように見える。


「遊香ちゃん、俺は遊太との約束どおり君を守る。だから、俺を信用してほしい。だから約束の指きりだ」


俺は右手の小指を彼女に向かって伸ばす。彼女もおそるおそる手を伸ばしてきてやがて小指と小指が絡み合う。一つにほどけてしまった糸が絡み合うように……


「ありがと……」


「ううん……わたしこそ」


そっと指と指を離していく。すると、ずっとこっちを向いていたらしい魔須美と目があう。


「魔須美、お前行くつてとかあるのか?」


「あたしは……家族や友達が無事かどうか知りたい。さっきから連絡しても通じなくて……」


「そうか……、なら俺のパーティに入ってくれ」


「けど、あたし、戦斗みたいに強いわけじゃ……」


「そんなこと気にしねぇよ。俺が一緒にいたいって思うから一緒に居るだけだ」


「えっ……」


「俺を連れてきてくれるときに言ってくれた言葉そのままだ」


「そっか……うん、ありがと」


「よし!これで現状のパーティはこれで三人だ。後はジョブと役割を決めていこう。魔須美は魔法使いだから俺の援護に回るとして、遊香ちゃんのジョブはなんなんだ?」


「わたしは五感を良くするスキルを持っているからアーチャーを選んだけど……。お兄ちゃんがチート能力を授けてくれたからなんでも大丈夫」


「そっか。わかった」


「えっ、このパーティで一番あたしが弱いってこと……」


「規格外二人がいるだけだけだから気にすんな」


「う~、そうは言っても~」


「パーティ名は何にしますか?」


「パーティ名か……、俺名前決めんの苦手だしな。魔須美お前が決めていいぞ」


「えっ、あたし……、センズだったら図形みたいだし、セントってまんまだし、う~ん」


「一回俺から離れてくれないか……」


「あっ、”Saints”ってどう?」


「”Saints”かいいんじゃないか」


「わたしもいいと思います」


「ちなみにどんな意味だ?」


「たしか聖人とか聖職って意味の複数形だったよ~な……」


「おっ、おう」


俺知ってるぞ、”Saints”その中に死者って意味も入っているのだが言わないでおこう。


「まぁ、とにかく魔須美が親や仲間たちと合流するまではこの”Saints”で頑張ろう。絶対生き残るぞ。オー」


「「オー」」


(遊太……、こんな俺にもパーティの仲間が出来たぜ。最高のプレゼントありがとよ。俺、この世界守るから)


俺たちは新たな希望と誓いを胸に歩みだすことに決めた。



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