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来訪者はファンを自称する

最近ジャンルを迷走中。


リズが裏で皆を地獄の底へ叩き落としかねない計画を立てていることなど露知らず、ロイは感涙に咽び泣きそうになっていた。

目の前にいるのは、つい先日出会ったばかりの新米勇者ことナギである。しかも彼は今回、怯えることもなく溌剌な笑みを浮かべていた。運良く利害が(非道な行為なしで)一致したお陰で同盟を結べたからだろう。


「お久し振りです、ロイさん」


敵意も警戒心も全くないその笑顔。

ロイは久し振りに心が洗われる気分になった。

何せ周りにいるのは、何かしらその笑顔に裏がある人物である。と言っても大概は溢れんばかりの好意を抑えてそうなっているだけなのだが。


そういう点において、リズの精神衛生のことも考えれば、やはりナギは必要不可欠だ。魔王城に出入りする人物の中ではナギが随一の常識人なのだし。


「久し振り。前は身内が迷惑かけてごめんね。体調は大丈夫かい?」

「はい。シュヴァイン王家のお力添えもあり大分回復しています。ナーシャとミラは療養中ですが、それも数日で元に戻ると思いますよ」

「それは良かった。だが君はそうでもないようだな。立ち話も何だしそちらに座ると良い」


ナギは一瞬固まり、僅かに左足を引き摺りながら椅子に腰を下ろした。

今回は色々と不可抗力があって深傷を負ったため出来るだけ気を使われないようにしたつもりだったが、どうやら見抜かれていたらしい。




「そう言えば、前回から気になってたんですけどロイさんも魔王なんですか?」

「魔王?」


一息ついてされた突然の質問にロイは狼狽えた。


そんなことを言われたのは生まれて初めてだ。

幼い頃から普通ではないと言われていたが、だからと言って人間であることを疑われたことまではなかった。


え、おじさんそんなに人間やめてる?


「気分を害したのならごめんなさい。リズちゃんの周りの人はかなりの確率でそうなんですが、構造が普通と違うんですよね。感覚が…うーん…」

「不死の属性があるからじゃない?」

「え!?魔王じゃないのに、ですか」

「うん。…君なら良いかな」


そう言ってロイはこと細かく語り始めた。


魔王と英雄は、共に不死である。と言っても魔王の不老不死と英雄…つまりロイの不死とでは性質が異なるのだが。

魔王は他者からの攻撃以外で死ぬことはないが、英雄は『どんなことがあっても』死なない。但し不死ではないため、戦闘可能な年齢をずっと行き来する羽目になるのだ。ちなみにロイがラディウスと闘った時はまだ十代だった。


そしてこれが勇者を惑わせた理由なのだが、彼等は他の人族や魔族と異なり、繁栄によって生じた存在ではない。

『気付けばそこにいる』『いつの間にか姿を眩ませている』といった類のものなのだ。まあ魔王の中でこれに該当するのは初代だけなのだが。初代以外は、命火が消えかけている人族や魔族に魔王という概念が入り込んで誕生したものである。


「私が知っている限りではそういう…ん?どうしたんだい?そんなに震えて」


そう言えば、途中から携帯のバイブレーション並に震えていたような。


「ロイさんって、え、え、え…」

「ん?」

「英雄だったんですかぁぁぁぁぁ!?」

「言ってなかったっけ」

「聞いてねーよ!…ですよ!」


召喚されて間もないとは言え、戦闘訓練がてらお伽噺のような英雄物語は随分と聞かされていたらしい。奇獣でも見たような顔で指をさされた。


何だ、この新鮮な反応。

初対面で「は?何、あんた頭アレなの?」とか「そうですか。ではお前の命、派手に散らして下さいね(自分で)」とか心を抉る反応しかなかったから、ロイは単純に嬉しかった。


「そうでしたか!実在してるなんて感動ですよ!うわぁ、俺貴方のファンになりたいな!

握手、握手して下さい!俺、これから英雄応援隊結成しますんで!」

「え?」


但し、勇者が魔王の仲間入りを果たすまで、日はそう長くない。


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