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窒素

作者: 無口人

日常的なお話です。

俺が人を殺したって誰も興味なんてない。


今日だってほら、午前中に大きめの冷蔵庫を買いに行ったが、家族はそれほど驚かなかった。


「部屋に一つくらい欲しいから」

という理由一つで、家族は納得したんだ。


俺の身体は此処に在るが、魂だけで区別すると、透明人間に近いだろうね。



だから俺は、身体が透明人間の、一人ぼっちの彼女を、今日ここで殺した。


彼女を探す人間は居ないだろう。


元から透明人間なんだから。


魂は花畑みたいに煌びやかだったのに、可哀想にね。


俺が殺しても、彼女が殺されても、何も、誰も、興味なんて持たないんだ。




****




朝の光が俺の机をほんのりと暖かくする。

誰も温もりなんてくれないから、その時くらいは机に甘えても良いだろ。


遠くではカッカと文字の音がする。


「街森くん、起きなさい。」


いつの間にか先生は俺の肩を揺すっていた。


俺が目を覚ますと、先生は何も言わずに、また教卓へと戻って行った。


辺りを見渡すと、誰一人、俺の方を見てはいなかった。


結局、俺は透明人間なんだよ。


次の授業は、試しにトイレに引き籠ってみた。


授業の半分はトイレでのんびりしてから、教室の後ろの扉から入ってみた。


授業は真摯に進んでいたが、俺が入ると一瞬だけ止まり、先生が言う。


「君、どこに行ってた。」


「トイレに行ってました。」


俺がそれだけ言うと、何も言わずに授業が動き出した。


そういうもんだよ。世の中って。


結局、俺に興味のある奴なんて居ないんだ。


俺が人を殺して、今も部屋の冷蔵庫に保存してるなんて、誰も考えやしない。


家族だって部屋に入らないし、冷蔵庫の中なんて興味も無い。






さて、今日も社会に溶けるか。

読んでくれてありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] お久しぶりです。新作が出ていたので読まさせていただきました。 虚無感に浸りきると、今日はなくなる。 きっと明日を見なくなる。 誰も私を見なくなる。 それは透明人間と変わらない。 非日常…
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