プレズント~待ち人~
「は!?」
眠気も吹き飛ぶ勢いだった。とにかく驚いた……というか意味がわからなかった。
「いやー、だからさ」
相手の方も少し気まずそうだ。私の態度を見て話す意欲がなくなったのかもしれない。
「駄目元だから、そんな期待してないから、僕はいいんだよ? でもさー」
と、もごもごいって済ませようとしている。
「あの、ごめんね、もう一回言ってくれる?」
できるだけ優しい声音でお願いすると、多少効果はあったみたい。相手は表情を和らげた。
「だからさ、バスケ部マネージャー募集中だからどうかなーぁって」
「……私が?」
「うちのクラスで部活入ってないの旭さんだけだから」
やけに言い訳めいた口調が勘に障る。クラメイトでバスケ部の……山田くん、だったっけ。
「あの、山田くん」
「……田中だけど」
「あのね、田中くん」
私はしれっと言い直す。彼は複雑そうな表情をしていた。
「私、部活に入るつもりないの。他をあたってくれる?」
「僕だって旭さんは無理なんじゃないかって言ったんだよ。でも向井が抜けちゃって手が足りなくて、誰でもいいから勧誘してこいって……。三山がいたら、あいつ人望あるから人集めてくれるんだろうけど」
ある名前が耳に引っかかる。心臓がトク、と波打つ。
「三山くん?」
「あーほら、同じクラスの。知らない?」
「知ってる……バスケ部なの? ふーん……」
「部長候補だったんだけどね、あれだよね、学校来ないんじゃ仕方ないっていうか」
彼に人望があるって本当なんだろうか。あの嫌味の塊みたいな人が?
「今いるマネージャーの人に友達とかを勧誘してもらえばいいんじゃないの」
自分が引き受けるなんてもってのほか。私はとりあえず適当な提案をしてみる。
「それは無理なんだよね」
「なんで? その人たち、友達少ないの?」
「それは旭さんのこと……あわわ、じゃなくて、マネージャーいないんだ。一応籍だけは置いてるのが四人いるんだけど、そのうち三人は受験生で部活にあんまり顔出さなくて……あと一人は不登校」
「不登校?」
「隣のクラスの向井心音っていう人、知ってる?」
「ムカイ……」
私は少し考えたあと首を振る。
「知らない。とにかく私、マネージャーなんて無理だから」
「うん……ごめんね、無理なこと頼んで」
山田……じゃなくて鈴木でもなくて、誰だっけ。とにかくそのクラメイトは申し訳なさそうに言い、去っていった。