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あさひ  作者: 瑞鳥ましろ
11/17

プレズント~元クラスメイト~

何日が経っただろう。

私が彼の家に通わなくなって。


ある日、ちょっとしたニュースを耳にした。

不登校の生徒が学校に来た、らしい。


「いた!来てたよ!」


興奮した様子で報告してきたのは佳恵。


「ふうーん……」


はっきり言って興味がなかった。シャーペンに芯を補充しながら、適当に相槌を打つ。


「なんかちょっと痩せたみたい。やつれたっていうのかな」

「……そう」

「それでね」


佳恵はまだ何か話そうとしていた。でも続かなかった。


「佳恵ちゃん!あのね、この数学の問題教えてほしいんだけど」


弥生だ。またこの子。私と佳恵が話しているとすぐに割り込んでくる。それも佳恵を奪うように。


「えーっ、私、数学なんてわかんないよー」

「お願い!ちょっとだけでいいから!」

「しょうがないなあ。ごめん、まふぃ」


佳恵が軽く手を合わせながら弥生の席に移動していく。それに対して私は別に何も言わない。

ひとりには慣れている。


不登校の生徒は、隣のクラスの誰からしい。佳恵が名前を言っていたけど忘れた。

隣のクラスの人なんてどうでもいい。


私は自分の隣の空席を見る。


来ない、のかな。

三山くんは……。






廊下を歩いているときだった。


「……旭さん!」


他のクラスに友達なんていないし誰だろうと振り返ると、実際私を呼んだのは全く知らない人だった。

校則よりわずかに短いスカート丈。そしてそこから伸びる折れそうなほど細い脚。彼女は全体的に細い。モデルのような体型、というわけではなく、言うなれば栄養が足りていない、もしくはストレスによる激やせといったところ。

他に特徴的なのは、リスの尻尾のようにカールしたポニーテールだ。癖毛なのか、巻いているのか。


「えっと……」


相手は私を知っているようなので、誰かとあからさまに尋ねるのは気が引ける。


「旭さん、だよね?」

「そう、ですけど……」

「私のこと覚えてない?去年同じクラスだった……」


去年?そんなの覚えてるわけない。今のクラスメイトの名前だってあやふやなのに。


「まあ、ずっと学校来てなかったから知らなくても無理ないか」


その言葉を聞いて、なんとなく思い当たった。

……隣のクラスの不登校。


「改めて。ムカイココネです」

「……ムカイ」


ムカイココネ。聞いたことある。どこでだっけ。思い出せない。


「私、アサヒの幼馴染なんだ」


彼女は(かげ)った瞳で私を見る。


「旭さん、アサヒのこと好きなの?じゃなかったらふって。アサヒに変な期待持たせないで。アサヒのお見舞いだったら私が行く。……だから」

「何、言ってるの?」


私はゆっくりと口を開いた。


「それ、誰のこと?私は別に誰のお見舞いにも行ってないし。人違いだと思うけど」

「人違いなんかじゃない」


彼女はまるで幼子のように何度も首を振った。瞳が透けて見える。透明な膜。あと少しでこぼれそう。


「私は、旭さんのせいでふられたんだから!」


顔を赤く染めた彼女は、呪いの言葉を投げつけるかのように言った。


呪い。まさしく呪いだ。

私の頭を埋めつくし、狂わせようとする。


ワタシ ガ ナニ ヲ シタ ッテ イウノ?


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