居場所
「あんた、今日からしばらくはうちにいなさい。」
霊夢は少女にそう言った。
「あの、いいのですか?
とても居候一人置いておくような余裕があるようには見えませんが……。」
少女の発言は尤もだった。
社は最近建て替えたのか綺麗だが境内に人の気配なく、内装も極めて質素な神社の巫女が収入源を持っているとは思えず、副業をしているような雰囲気も目の前の巫女からは伝わってこないのだ。
「安心なさい。
うちはお金がないだけだから。」
少女はまばたきを繰り返していた。
「お金がないのにどうして……。」
「幻想郷で生きていくだけならお金なんていらないってことよ。」
霊夢はこれ以上話す気はないという風に切り上げた。
実際、霊夢の生活は金銭への依存が薄い。
遊びに来るものたちが手土産として何かしらの食物を持ってくるためだ。
また定期的に宴会が行われるがその準備も大半は参加者が手伝ってくれるおかげで霊夢の懐は痛まないのだ。
参加者が妖怪ばかりであるために参拝者が訪れず家計が火の車なのは否めないが。
そんな背景など知らない少女は、しかし霊夢の泰然とした態度に促されてか、
「よろしくお願いします。」
と小さく頭を下げた。