記憶を無くした少女
少女は目を覚ました。
見知らぬはずの、しかし懐かしい感じがする天井。
上体を起こしてみると、目の前に赤いリボンの巫女がお茶を啜りながらこちらを見ているのに気がついた。
……その横で伸びている緑髪の巫女姿の少女も見えたが気にしないことにした。
「やっと目が覚めたのね。」
赤いリボンの巫女が起き上がった少女に気がつき声をかけてきた。
「あの……ここはどこでしょうか。
あなたはどなたなのでしょうか。」
起きたばかりだからなのか、出てきた声は弱々しいものだった。
「ここは博麗神社で私はここの巫女、博麗霊夢よ。
で、あんた名前は?」
そっけない態度で赤いリボンの巫女───霊夢は答えた。
「私は……。」
名前を言おうとして、黙りこんでしまった。
「あんた、もしかして名前を忘れたの?」
霊夢の言葉に少し間をおいてから首を縦に振った。
「ふーん、じゃあなにか覚えてることはないかしら。」
「えっと、両親は人間、ということくらいしか……。」
少女の返答に霊夢は眉を潜めた。
その反応に少女は気がついたが、気がつかなかったことにした。
「とりあえず、あんたの記憶が戻らないことにはどうにもならないわね。」
霊夢の判断は先送りであった。
少女もその判断に同意した。
そうと決まると次の問題は───。
「あの、私、どこにいればいいのでしょうか?」
少女をどこに住まわすか、だ。