巫女、来襲
小高い丘の上にある小さな神社、博麗神社。
小さいが人が住んでいることもあり小綺麗な神社である。
その神社の表参道を掃除している腋の開いた紅白の巫女服に身を包んだ少女がいた。
彼女はどうやら先程の不思議な現象を目撃していないようである。
そこに緑の巫女―――東風谷早苗が物凄い勢いで現れた。
「霊夢さん、霊夢さん、一大事ですよ~!」
霊夢と呼ばれた少女は溜め息をついた。
早苗が持ち込んでくるものは決まって騒動のタネでしかない、彼女はそう考えていたのだ。
そして早苗が抱えている“それ”はやはり面倒そうなものだと少女―――博麗神社の巫女、博麗霊夢―――は直感したのだ。
「霊夢さん、霊夢さん、空から女の子が!!」
早苗は何故かドヤ顔で言い放った。
霊夢はまたひとつ息を吐くと、
「とりあえず上がりなさい。
“外”の人なら手当しないと。」
彼女の頭の中にある“面倒事対処マニュアル”に沿ってとりあえず神社の縁側へと招いた。
縁側に来てから二人は漸く少女の事をしっかりと見た。
髪は漆黒を思わせるほど黒くて長く、肌は血色こそあるものの、病人と見間違うほど白い。
そしてくすみひとつ存在しない白と黒袴の巫女装束は、しかしなぜかぼろぼろであった。
「やっぱり、“外”の人ですよね?
少なくとも、私今までこんな人見たことありませんよ。」
「あんたの世界観は広いんだか狭いんだかわからないわね。」
早苗の発言を適当にあしらいつつ、霊夢は少女に注視していた。
違和感。
霊夢は少女を人だと思っている。
しかし、微かな妖気と強い霊力を少女から感じたのだ。
早苗がこれに気がつかないわけは無いと思うのだが―――。
「このまま目が覚めないなら着せ替え人形にでもしちゃいましょうか?
なに着せても似合いそうですし着せ替えがいがありますよ~!」
駄目だこの巫女。
早苗を神社から追い出したほうがいいとまで思いすらした霊夢であった。