覆う
懐かしい 居合の帯を 腰に巻く 。
黒い 帯 。
擦れ切れ やや 灰色がかった
白い 中綿が 覗く 。
追い付く 変則に 。
模造の刀を 差し込む 。
○
心身は 悪い 。
寝床に着き 目を閉じる と
癌を患う人 が 死んでしまう 。
まだ 確定しても いない事が まざまざ
と 想起され 涙が 流れた 。
おお 。
ほおお 。
死んでしまう 。
身近な人が 元気なのに 。
僕よりずっと 。
必要と されて いるのに 。
するする と いなくなり 何処にも 居らず
探し ようも なくなる 。
うろたえ 唇が わななく 。
○
電動の 髭剃り 。
震動が
涙を 流させた 。
死が 恐ろしい 。
○
自身の変則を 自身の正則 で 越えん
と もどかしく 試行する 。
眠り は
他者の 助けを乞う
願い に 混ざる 。
さもしく 肌寒い 。
助けて あげて 。
繰り返し 願われる 。
睡眠導入の 羊 。
繰り返される
抜刀と納刀 。
斬撃と抜き付け 。
震える 唇を
マフラー で 覆い 公道を歩く 。
胸骨は 煮すぎた餅 。
でろでろ 。
背骨は 突き刺さる種子 。
ちくちく 。
○
心身は 悪い 。
怯え 苦しみ うなされている 。
繰り返され 試行された 所作 。
追い付けそう
でも
追い付けない
まだ 。
涙は 乾き 。
頬に
わずかな
かさつき を 残した 。
手術日の前に 僕が
潰れ そうだ 。
□
耐え 過ごす 。
刀が 鞘を 抜ける その間
忘れる事が 出来る 。
いつも 死が 在る事 。 を が
医療従事者 。
てらてら 。
目の 光 。
当たり前の 事だ
こんなことが 。




