ヨタ26
満月が 過ぎた。
やはり 何も 変わらなかった。
何も見なかった。
嬉しかったよ。
いい気分だ。
自分の 主張が 証明されたのだから。
脅かしやがってよ。
霊媒の ばばあ が。
僕は 何も 見なかった。
気楽だ。
やった
終わった。
有頂天だ。
歩みも軽い。
ざまあ見ろ。
ご機嫌な一日。
でも 何にもない 一日が
こんなに ご機嫌なのは オカシクないか。
そう 思うと 陰りが 出てきた。
ちょろく 騙されている みたいで 少しだけ 引っ掛かる。
現状維持を
ここまで喜ぶのは 不味いのでは。
有る と 言われたモノは 無く。
本来なら がっかり するのでは。
今までは 少なくとも そうだった。
分かりきっていても 残念に 思っていた。
今回だけか これからも そうなのか。
無い事の喜び。
気になりだすと 気持ち悪いな。
托鉢の 坊さんに 十円を 寄進した 事がある。
あの時も 有頂天で やったぁ と
嬉しくなっていた。
お坊さんの 手に有る ウツワの内に 滑らせた硬貨。
本物かどうかも分からない 僧侶の格好をした人に
お金をあげたことが 何故だか 嬉しかったよ。
でも ちょっとそこから 離れると 思っていた。
よろこび過ぎた。
嬉しがり過ぎた。
急に 恥ずかしくなった。
心の平静を ミダシタ事が。
乱したのが ヨロコビで あっても。
結局 自分の制御を 離れている。
ヨロコビは 小さく ちっぽけになり
嫌になった。




