第一章
この世界には蓬莱と呼ばれる神聖な土地があり、そこには人間が崇める神々がおられ、厳しい修行をした者だけが仙人として迎えられる世界がある。人間は神々に見守られながら七つの国を治めていた。七つの国は一つになり王朝が誕生した。しかし権力に取り付かれた者たちが王朝を徐々に衰退させ、乱世を引き起こしてしまった。天下を統一するため一二〇年にかけて繰り広げられた乱世は一つの豪族によって成し遂げられた。
乱世が終わり新王朝ができてからおよそ二〇年で始皇帝が突然の病にて崩御してしまった。始皇帝には四人の妻がおり、正妻の子は女の子であった。二番目の妻は男の子を生み、次の二代目皇帝となることとなった。しかし子供はまだ六歳。皇帝として即位するには幼すぎた為実質的権力を我が物とし、朝廷でやりたい放題であった。それに激怒した始皇帝の正妻は何度も話し合いをしたが、第二婦人は言葉を受け入れなかった。正妻の持つ権力も恐れていたが、官吏や民に慕われる人格を妬み、いつしか自らの権力で処刑しようと考えていた。その企みは官吏たちも気づいており、正妻側に付く官吏たちは正妻と姫の身を案じていた。すると正妻とその娘は朝廷から忽然と姿を消してしまったのである。第二婦人は二代目皇帝となる息子を溺愛し、即位するまで自らが朝廷を動かしていた。
二代目皇帝が正式に即位し、五人の妻を迎えていた。正妻は国で最も美しい踊り子の一人で二代目皇帝の一目惚れであった。生まれた子供は男の子であり、三代目皇帝となる跡取り息子ができたことに二代目皇帝もその母も喜んでいた。だが子供が生まれてから正妻は皇帝の行いに異議を申し入れるようになった。その正妻の姿はまるで初代皇帝の正妻のようであり、二代目皇帝の母は正妻に敵意を抱くようになった。しかし二代目皇帝は妻を溺愛している為、妻を守ろうとしていた。同時に第二婦人から第五婦人は母に味方している為正妻は孤立していたが、二代目皇帝が溺愛していることと正妻に味方する官吏もいた為必死に二代目皇帝に道を示そうと努力していた。
新王朝からおよそ四五年、二代目皇帝は病により療養生活となってしまった。贅沢な暮らしが二代目皇帝の体を蝕み病となってしまった。二代目皇帝が病に伏せてしまうとすぐに跡取りについての話し合いが行われた。次の三代目皇帝の座は正妻との間に生まれた子供であったが、二代目皇帝の母は反抗的な正妻を嫌い第二婦人から第五婦人の子供を即位させようとしていた。だが同時に民たちは貧困に苦しみ苦役を課せられ高い税を払わされていた。