白色赤頭巾――狼二匹
1、
突っ伏しながらなうえに遅くなってしまったがボク、梔死人という人間について話をさせてもらおう。
ボクは昔から今程ではないにしろ、周りとはズレていたと思う。
例えば、急にわざと給食を全部ぶちまけたり、学校で飼っていた金魚を食べ
「美味しそうだったから」
と言って怒られたり、列を作れと言われたら汚いものを振り回し皆を散らし、という具合である。
まあ、皆もこれらの中の一つは体験した事はあるだろう。
むしろ無いとか言わないで欲しい。
だってボクは少しズレているだけなのだから。あくまでも、少し。
そうじゃないとボクの気分は地に堕ち立ち直れなくなる。
なんて言ったけど、実のところボクの気分はどうでもいいから、立ち上がり会場内の薄汚れたゴミ箱を探し、それを捨てる。
(それにしても……)
会場は静まり返り空気はどんよりしている。周りには試験官も他の受験生ももういない。
誰も居ない――少し嫌な思い出がフラッシュバックする。
仲が良かった人達。
黒く染まった世界。
紅く染まった白。
そして誰にも救われずに、幽鬼のような表情で立ち尽くすボク。
「……嫌な事を思い出した」
一人呟くが、その声は虚空に溶け誰に聞かれることもなく消える。
誰でも経験した事のあるような、在り来たりな不幸話。
そんな話をしても誰一人やして得をしまい。そう思いボクは周りの人間にこの話をした事はない。
「うだうだ考えても仕方ないか……帰ろ」
――ボクは考えるのをやめた。
そして会場を後にしたのだった。
2、
「クッコ」
外は白くて眩しかった。眩しすぎて奇声を上げちゃうくらいには。
あれはない。そもそも奇声だったのかすら怪しい。
「それにしても雪か……ここまで積もるのは久し振りだね」
正直テンションが上がっていた。
ボクは色だと白が一番好きだからだ。今すぐこの雪に飛び込み、この白の冷たさを満喫したい。そういう衝動に駆られるもすんでのところで我慢する。
そういえば昔一度白への愛が爆発し、白髪にしようとした事があった。
だが親に「それはない。何があってもない」と言われやめたのだ。
あれがなければ、きっと今頃白髪になってたんだろうなと思う。
「なんで反対したんだろ……謎だ」
ボクはそう呟くが、それを聞いていたのか近くを歩いていたヤクザのようなお兄さんが「お前の方がな」と呟いた。
――Twitterで。
「返事するなら普通に言えよぉぉぉッ!!」
と、言おうと思ったが相手のお兄さんが怖すぎて思うだけに終わる。
そんな事があり気分も沈み、溜息をつきながら白い世界を歩く。
そして、ボクは忘れていたその存在を見つける。
白い世界の中、道の隅に蹲っている少女を。
それは確かに試験中に見つけた少女だった。
物憂つげに伏せられた瞳、クールに整った顔立ち。そして何より、現実では有り得ない程綺麗な白髪。
だが見つけた所で、ボクは彼女には話しかけられない。彼女の雰囲気が近づくなと言っている。
そもそもあまり喋ってくれるタイプとは思えない。
諦めてその場を去ろうとする。
が、ボクはここで暴走した。
もしかしたらここから、全てが変わったのかもしれない、なんて言わない。
しかし、ボクはここで声をかけた事を後悔することはないだろう。
「ちょっとそこの君。初めまして、ボクと秘密組織を始めないかい?」
「お断りします」
続く