白色赤頭巾――狼十三匹
「へぇ……俺に挑みますか。流石に無謀だと思いますけど?」
少年はそう言うと余裕の笑みを浮かべ
「……その顔、屈辱で歪ましてあげるわ」
少女は腹黒い性格が滲み出たような笑みを浮かべる。
なんだこの二人
ーーーーーーーーーーー
何故ああなったのか、説明する義務があると思うから、僭越ながらこの『悪戯灰かぶり』事、ボクが説明させてもらう。
魔女の家を出たボクと符丹は、符丹のさす黒い日傘(日傘なのに日を滅茶苦茶集めてる)に守られながら何処かを目指していた。
ちなみに今の符丹はいつも通りの黒ずくめである。
女子の服って男のボクじゃ今一分からないけど、取りあえず黒いシャツに上から黒い羽織。
スカートも勿論黒色で、やけにフリルがついている。
本当真っ黒だな……そう思ったところでそろそろ、聞くべき事を聞く事にする。
「あのー、符丹さん?ちょっと目的地くらい教えてくれてもいいんじゃないですかね?」
さっきから符丹は指さししかしない。
そう、ボクは目的地すら把握していないのだ。なんて不憫な。
「……着けば分かる」
出ました!この行き先を教えてもらえないパティーンですよ!信じられますか奥様。
なんて馬鹿な事を思いながら、ボクは馬車馬の如くコキ使われる。
「馬鹿な馬車馬……滅茶苦茶馬じゃん」
「……何言ってるの?」
こいつ大丈夫か?みたいな顔する符丹を傍目に、ボクは泣きたくなってくる。
「まあ、いいんだけどさ。符丹太……グッ」
途中で首を締められる。
良い子の真似は皆しないでね!……あれ?
「……太ってないわ。むしろ痩せたくらい……!!」
怒ったのか少し顔が紅くなっている符丹。
普段眠たげな瞳も今はパッチリ……って窒息する。誰か助けて。
ボクがギブアップを根性で訴えかけ、やっと符丹の腕の締め付けが緩まる。
だがまだ怒っているのか、符丹の顔は紅い。
そこまで怒ることだったかな?とボクは疑問に思いながら、さっき言おうとした事を言う。
「でさ、符丹太るどころか痩せた?」
引きこもってる割に、異様な軽さを誇っているから気になったのである。
「……少し痩せたわ」
「ドコマデカルクナルン」
「……知らない。それとキモい」
「カタコト関西人に謝れ!!」
そしてそんな会話を続けていると何か、異質な雰囲気を醸し出す建物に到着する。
「符丹さんや。もしやこの変な建物が目的地と仰る?」
「……うん」
その建物は明らかに浮いていた。
周りからは勿論、そのままの意味でも浮いているのだ。
ホラーチックに装飾された見た目は、周りの民家からは完全に浮き、何度でも言うが宙に浮いている。
「これ、大丈夫なのか?」
ボクは周りを見渡すが、この道を通る人物は、誰一人として気にしている素振りは見せない。
「……結界が張られてるから、保持者以外には見えないの」
「なんというご都合主義」
つまり、周りから見たら今のボクが変な子って事か。
「早く言ってくれよ……」
「……聞かれなかったから」
「単純過ぎるでしょ!?もうちょっと説明必要なところは説明しようか」
既にボクのライフはゼロ。
このまま、次回予告に入ったらボクが死ぬというネタバレをかましてしまうだろう。
「で?ここで良いんだよね?チャイム鳴らす『ピンポーン』」
聞いている途中で、符丹はボクの背中から手を伸ばし、チャイムを押す。
「あのね、人が聞いてるのに途中で鳴らさ──」
「どちら様ですか?俺に用が有るなら帰ってください」
扉を開け、現れた人物はそう言った。
何だろう。人のセリフ遮るのが流行りなの「……用がないとこんなところに来ない。初めまして『幻惑のヘンゼル』」
遂にボクの語りまで割り込まれる。
「成程、俺の事を知ってるんですか」
そう言いながら相手の少年は、きっちり着こなした制服のズボンに手を突っ込む。
「……えぇ、貴方に挑戦しに来たの……同じヘンゼルとグレーテルの保持者同士、共食いしましょ?」
そう言うと符丹は笑みを浮かべ、そして最初の状況に繋がるのであった。
――続く
ライフがゼロになってピンチの死人。
だけど符丹と少年の猛攻は止まらない!
でも死人!ここであんたが倒れたら『三番の赤頭巾』はどうなっちゃうの!?
次回『死人死す』
デュエルスタンバイ!