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白灰童話  作者: 七罪愛
11/25

白色赤頭巾――狼十一匹

1、

翌日、土曜日の朝。

勿論昨日は金曜日だったわけだ。

まあ、なにはともあれ今日は一日自由なのである。

このまま布団にくるまったまま、昼間まで寝るのも悪くはな――『また君ーにー恋してるー』ピッ

こんな時間に電話とは非常識な人だ。勿論拒否した。

人の安眠を妨害するとは罪――『また君ーにー恋してるー』ピッ

「も・し・も・し?」

『……なんで一回目の拒否があんなに早かったのかしら?』

符丹だった。凄い不機嫌そう……というよりか不機嫌なのだろう。

その声はおぞましく、きっと邪悪な言霊か悪魔でも宿っているに違いない。

『…………今失礼な事考えたわね?』

「めっしょうもごじゃいませぬ」

『……噛み過ぎ』

「え?これは新人類語だから。動揺とかしてないよ」

ボクは冷や汗をかきながら誤魔化す。

それに新人類、変に進化してるし。

『……別に良いけど。あんた、今どこ?』

「家だけど?まさか調査しろとか?どうせあんな怪物――守護者(ガーディアン)はこの時間じゃ見つからないよ」

夢童話と伴って現れる怪物。

今回の場合はあの狼人間、あれはボクらの間では守護者(ガーディアン)と呼ばれている。

在り来たりだとは思うけど、シンプルな方がいい事もある。

『……違うわ。手伝って欲しい事があるの。……そろそろどうにかしないとダメだと思ってたから』

別件だった事にがっかり(断れないからである)して、ボクは気になっていた事を聞く。

「そういえばあのクイズ何?あんなタイミングで送ってくるなんてどうかしてるよ……」

『……あれはヒントよ。それにあんなタイミングって?』

一応何かヒントだったらしい。

「いや、なら別に気にしないでいいよ」

『……別にあんたの頭のネジがどうなってようと、私は気にしてないし』

「流石にひどい。そんな子に育てた覚えはないのに」

結構真面目に傷ついた。一応短くない付き合いだというのに、冷たいではないか。

『……あんたに育てられたからこそ、でしょ?』

「育てられたんだ!?育てられたんだ!?」

流石にこう返してくるとは思ってなかったから、二度言ってしまった。恐るべし符丹。

『……まあ、どうでもいいから取りあえず早く魔女の家……来なさい』

最後にそれだけ言って電話を切られる。

人使いが荒いな、嘆息しボクは渋々着替えを始める。

何処に行くも無難な格好を選び、小さな鞄に必要なものを詰め準備完了。


2、

そうして家の廊下をパタパタ音をたてながら歩いていると、そこには仁王立ちの我が妹。

その表情は言うまでもなく怒り。


「用件・帰宅時間・行き先!!」


どうやら昨日帰りがかなり遅れた事をまだ怒っているらしい。オカンか。

「デート・晩御飯までには・カフェ」

嘘は言ってないはず。そもそも用件知らないからいつ終わるかも分からないし、行き先も待ち合わせ場所しか分からない。

これボクに非はないだろ。全部符丹が悪い。

そんなことを思っていると、音子は小指を突き出してくる。

「……んっ!」

反応しないボクに焦れたのか、グイッと更に突き出してくる。

いや、何も言わなくちゃ分からないでしょ。この子どうしたの。

「指切り!約束!」

頬を膨らませ、人の頬に小指をグリグリ押し付けてくる。

指切りって子供っぽいな。しかもそんな風に頬膨らませても可愛くないぞ。

後、押し付けられたら指切り出来ない。

取りあえず心中で全てにツッコミをいれてドヤ顔。

そのドヤ顔が気に触ったのか音子にぶん殴られる。

鈍い音がしてボクは床に突っ伏す。

グーはダメだよ、グーは……良い子の皆はやったとしてもパーまででね。

「もう知らない!帰ってくんな!」

そう罵倒を浴びせ自室に駆けていくのであった。

「……反抗期かな?」

釈然としないが、昔はもっと可愛かったのに……と残念な気持ちが込み上げてくる。

まあ、ボスである玄関前の仁王立ち少女は撃退したし、これは先イベントに旅立ってよいということだろう。

ここまでしてボクはようやく、家を出れたのだった。


――続く

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