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白灰童話  作者: 七罪愛
10/25

白色赤頭巾――狼十匹

「なんであの変な人が居るの……!?」


なんて失礼な事を言うのだろう。


ーーーーーーーーーーーー

1、

そこからボクと白い少女、雪見(ゆきみ)(ゆき)は互いに自己紹介をし、皆で晩御飯を食べたのだった。

紅さんの作ったシチューは、肉が独特の味だったが非常に美味しく、ボクは図々しくもおかわりまでしてしまった。

「それじゃ、あまり遅くまでいると悪いですし、ボクはもう帰りますね。今日はありがとうございました」

ボクはお礼を言い雪見家を後にする。

「いえいえ、いつでも来てくださいね。わたしはいつでも歓迎しますから」と言う紅さん。

そして、梅さんは「なんか色々ごめんね。雪も悪気はないの」と言い、その言葉を聞いた雪見さん(ややこしいが雪さんというよりは雪見さんの方がいい気がした)は拗ねたように頬を膨らませ「別にそんな事ないよ……」とむくれている。

(今もだけど食事中もずっと警戒されてた。なんでだろう……?)

ボクは釈然としないまま帰路についたのである。


2、

そして夜十時ジャスト。

ボクはやっと、愛しのマイスイートホームに帰ってきた。

良く考えたら、名前しか書かなかったり、足に鋏を刺されたり(手当てが良かったのか全然痛くない)、今日会ったばかりの人の家にお邪魔したりと色々あった一日だった。

何より雪見雪。彼女と会えたのはボクにとっては最高の出来事だった。


「ふぅ……ただいまっと」

我が家の近所の家のドアと比べても、随分質素なドアを開け帰った事を告げる。

だが、その言葉は誰も居ない真っ暗な闇の中に吸い込まれ――


「馬鹿(にい)ぃぃぃい!!」


なかった。なんて台無しな事だろう。

ボクはその声の主の顔を見る。

中の中くらいの平坦な顔立ち。髪は血が繋がってないんじゃないかと思う程紅く、まるで血のようだ。

(くちなし)音子(ねこ)。認めたくないが紛れもなく、どうしようもない程ボクの妹。

そんな妹がボクの視線の先、そこで仁王立ちしているのだからなんというか、溜息が出る。

確か溜息をすると幸せが逃げるとか言うが、ボクは今日何度溜息を吐いただろう。

結構な数の幸せに逃げられてるような気がしてきた。

「メールくらい返してよね!!あたしがどれだけ晩御飯食べるの待ったと思ってるの!?てか女装とかキモい!帰れ!」

「あっ、悪い。あのメール見ずに消した。それとこれには訳があるし、今帰った」

取りあえずボクは事実を伝えておく。

それを聞いた音子は、握り締めた拳をわなわなと震わせボクをキッと睨みつける。

「分かったよぉぉだっ!そんな事するならお兄ちゃんには晩御飯あげないんだから!!」

音子はそう言うとリビングに向かう。

「音子ー、悪いけどボク食べてきたんだよね。だから、無いならないで良いんだけど」

リビングにまで届くように言ってボクは着替えに向かう。

流石に似合わない女装のしたままというのは勘弁被りたいし。


サッと着替えたボクはリビングに舞い戻る。

すると音子は凄い不機嫌な表情をしていたが、二人分のご飯を用意していた。

「へぇ、なんだかんだで用意してくれたんだ。このツンデレさんめ」

食べてきたばかりなのにどれだけ食べるんだ、と思う人もいるかもしれないが、ボクは能力を使うとお腹が減るのだ。

今日は結構使ったから、相当お腹が空いていたりする。

「うっさい!食べるならさっさと食べてよ!」

「えー、でもあんまり美味しそうじゃないし……」

勿論大嘘である。空腹は最高のスパイス。

それに音子は留守がちの両親のお陰で、かなり料理が上手い。

今、目の前に並べられている料理達も、匂いを嗅いだだけで美味しいと確信出来るレベルだ。


――ダンッ


音子は机を思いっきり叩き立ち上がる。

そしてそのままリビングを出ていってしまう。

「変な奴。あそこまで怒りっぽかったっけ?」

ボクは〝温かい食事〟を食べ終え自室に向かう。

うちはあまり大きくないが、息子と娘にそれぞれ部屋が与えられるくらいではある。

まあ、両親が殆ど帰ってこず両親の部屋がないからというのもあるだろう。

あの人たち帰ってきても、リビングのソファーで寝るし。

そして、自室についたボクは部屋に敷っぱなしの布団に入る。

「やっぱり布団だよね」

ボクはベッドより布団派。

それと布団が敷っぱなしになってるところから、部屋の中が散らかってる事は察して欲しい。

そして、ボクは今日一日の考えをまとめながら眠るのだった。


――続く

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