03
「所詮ゲーム内だけの縛りだし?ネカマしてると思えば全然……全然、大丈夫じゃない」
しゃがみこんだまま動かなくなったウィンに、オロオロとしながらどうにか元気を出してもらおうとアイビーは声をかける。
「だ、大丈夫ですご主人様。僕がご主人様に似合う服装を作って差し上げます!」
「でも、俺フリフリしか着られないんでしょ?」
「…………はい」
アイビーはウィンの問いに悲しそうに押し黙った。
ウィンはそんなアイビーの悲しそうに俯いている姿を見て、こんなに小さい子を困らせていることに罪悪感を覚える。
「わかった。取り敢えずさ、街に行ってみて考えよう。せっかくこの世界に来たのに落ち込んでるのはもったいないからな」
「はいっ、僕もお供します!」
マイホームからフィンルスの街へスポーンすると、始めに来た時よりも人の密度が多くなってきていた。そこでアイビーは気づく、なぜか街に行っている人よりも、街から出ていっている人が多いことに。
「なんか向こうに行ってる人が多いな」
「こんなに人が多いの始めてみました!」
物珍しさに目を輝かせているアイビーはとても目立つ。このゲームは15歳未満は遊べないのでこの見た目だと必然的にNPCだとバレてしまうわけだ。
じろじろと突き刺さる視線に耐えきれずウィンはアイビーを抱きかかえてこの場を走り去った。
「はぁ、はぁここまで来れば大丈夫かな」
孤児院の近くにあるベンチにウィンは座り込む。ウィンが呼吸を整えているとアイビーは座り込んで孤児院の中に生えてる植物を観察していた。
「何見てるの?」
「あ、ご主人様この植物はワタタの花といってタネを破裂させると大量のワタが手にはいるんです。これがあればもしかしたら布が作れるかもしれないなと思いまして」
「そっかぁ。でもそれは此処の人たちのだからほかの場所で見つけなきゃいけないね。そういえば、どんな風に俺の服作ってくれるの?俺は裁縫できないから想像がつかないや」
「僕はまだ裁縫のレベルが低いので、時間はかかってしまいますが糸魔法で糸を作れるので元手は少なくて済むと思います。ご主人はどんな服がお望みですか?」
「俺?ロリータ以外なら何でもって言いたいけどロリータ縛りなんだよな。どんなのを作るかは任せるよ」
「だったらご主人様には、!」
そう2人が話していると、孤児院の方から声が聞こえてきた。
「おいそこに居る男ら!暇なら手伝っておくれ収穫の人手が足りないんだ!」
手ぬぐいを首にかけて麦わら帽子をかぶった初老の女性がこちらに向かって手を振っていた。
「ご主人様、行きますか?」
「そりゃあ、手伝いに行くよ」
ウィンはアイビーの問いに頷いたあと、孤児院にいる女性に向かって大きな声で「今行きまーす!」と言って歩き出した。
「いや~、来てくれて助かったよ。ここの子たちはまだ小さい奴らが多くてねぇ手伝いもできないから、まさか今日で収穫しきれるとは思わなかったよ。」
「いえいえ、こちらこそこんなにいただいちゃっていいんですか?野菜も、ワタタのタネまで」
「ああ、どうせ使い切れない分は売るか捨てるかするしかないんだ。それに、アンタたちワタタをみていたじゃないか、欲しかったんだろ?」
「バレてしまいましたか、実は服の材料が必要でして」
「へぇ、アンタが作るのかい?」
女性はウィンの顔をのぞき込むが、ウィンは首を横に振った。そして視線を自身の影に隠れているアイビーに向ける。
「そっちの坊主が作るのかい!?」
「偉い子だねえ、うちの奴らにも見習ってほしいくらいだ」
女性はアイビーの頭を少し乱暴に撫でつけた。アイビーはそれに顔を真っ赤にして更にウィンの後ろへ隠れてしまった。
孤児院を後にした2人は行く当てもなくフェンルスの街を歩きながら話していた。
「まさか、アイビーが人見知りだったとは思わなかったよ」
「う、情けないです……!」
アイビーは両手で顔を覆って恥ずかしそうに嘆く。そんなアイビーの姿を微笑ましそうに見ながらウィンは孤児院でもらったものをインベントリを開きながら確認をしていた。
「赤カトラに白カトラ、紫カトラ。カトラ多いな」
「カトラはどんな場所でもほんの少しの魔力があれば作れますからね、安くて栄養が有ります。美味しくはないですけど」
「そうなんだ。そうだ、服を作るのにさワタタのタネ以外に必要なものは何がある?」
「染色するための染料と、恥ずかしながら僕は今裁縫道具を所持していないのでせめて針だけでも……」
ウィンが所持しているお金は3000ルチル。ルチルとはこのゲームの通貨のことだ。ウィンはこの世界に降り立った時にもらえたお金でどこまで買えるかわからないが、アイビーのために買ってあげようと思った。
「買うよ、必要なんだろ。取り敢えず商業施設が集まってるところに行って探してみようか」
「ご迷惑をおかけしてすみません、ご主人様」
「迷惑じゃないって、必要なものはどんどん言って?俺はアイビーの主らしいから」
「ッはい!」
ウィンはアイビーの手を引いて歩いていく。そしてふと気がついた。
「ところでさあ」
「どういたしました?」
「商業施設、何処かなぁって」
「……ご主人様」
「アイビー、そんな顔しないでよ!きっと人の多いところに行けば見つかるから!!」




