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「むむ、ここはこうしたいけどそうするとご主人様の服との親和性が……」
「おはようアイビー。今日はギルドに行こうと思ってるんだけど、一緒に行く?」
朝からゲームにログインしたウィンはあくびをしながらアイビーに挨拶する。ウィンがあいさつするとアイビーは立ち上がって丁寧にお辞儀をして「おはようございます」と笑った。
「ぜひお連れください!」
「じゃあ、行こうか。この前はルージュさんとあったからクエスト受けられなかったけど、今回はうけれるからね。この前はどんなのがあったけな」
ギルドについたウィンとアイビーは何のクエストを受けようか相談する。
「討伐系はちょっときついよね~」
「できなくはないですけど、やっぱり戦闘をないわいにしている人には及びませんからね」
「採取は昨日俺が行ったし、あ、掃除クエストとかどう?」
「掃除クエストですか」
「この街にきてしっかり見て回ったことないから、掃除しながら見て回ろうよ」
ウィンドウを捜査して街の清掃クエストを受けた二人は、街の大通りから外れた道に掃除しに行った。
清掃のクエストの内容は街に落ちているごみを拾い集めてゴミ箱に入れようという内容だった。ごみはきらきらと光るエフェクトで、このクエストを受けている間だけ見れる仕様らしい。
「結構楽しいかったな清掃」
「ですね、思わぬ貰い物もありましたし」
ふたりは町中にあったベンチに座りながら肉串をほおばっていた。この肉串は「頑張ってるねぇ、掃除ありがとう」と屋台のおじさんにもらったものだった。
「俺この肉串のたれの味好き」
「ホーンラビットの肉のようですね。変な臭みもないですしよく付け込まれています」
肉串を食べ終えた二人はベンチから立ち上がり、次に行く場所を話し合う。
「どっか、面白そうなところないかな」
「ご主人様、僕に提案があります!」
アイビーが手をあげてウィンを見る。そんなアイビーにウィンは「なんか思いついたの?」と問いかけた。
「武器を新調したり、アクセサリーなどを見て回るのはどうでしょう」
「採用!確かに、武器新しくしないと、攻撃力が低いままだもんね」
「だけどアクセサリーは、何のために?」
「……従者がご主人様を着飾りたいと思うのはおかしいですか?」
「おゎ」
服のすそをきゅっと握りしめながらアイビーはウィンを見上げた。ウィンは呆然としながらもアイビーの言ったことの意味を考える。
「そうだよね、俺今めちゃくちゃかわいいもん。着飾らなきゃ損だよな」
「今の服装ならばきっと赤のジュエルが合うと思うのですが、僕が作っているご主人様の服に合うアクセサリーがあるか見てみたいですね」
「じゃあ、見に行ってみようか。アクセサリー高いだろうから買うのはまた後でになるかもしれないけどいい?」
「承知の上です。まずは武器を調達しに行きましょう」
「そうだね」
ウィンはマップから武器屋を探しそこへ向かった。
「こんにちは、失礼します」
武器屋のドアを開けて挨拶をしながらウィンは店の中に入る。けれど、店の中には誰もいなかった。
「あれ?場所間違えたかな」
「誰もいませんね」
「けど、武器がたくさん飾ってあるし、ここで会ってると思うんだけどな」
ウィンは不思議そうに首をかしげながら、店の奥に向かって「すみませーん!誰かいますか!」と大声で呼びかけた。すると、一拍おいて焦ったような女性の声が聞こえてきた。
「ちょっと、お客さんが来てるじゃないですか師匠!」
「黙っとれ、もうちょっとで終わるんじゃ。客なんか待たせとけばいい」
「そんなんだから師匠、腕はいいのに客が来ないんですよ!」
店の奥から髪をサイドにまとめた女性がぺこぺこと謝りながらウィンたちの目の前に現れた。
「本ッ当にすみません。師匠はいつもあんなんで武器を打つこと以外に興味がなくて。私、トレニーって言います。ご迷惑おかけしました」
「本当ですよ、ご主人様に失礼です」
「こら、アイビー」
ウィンはジトっとした目でトレニーに苦言を言葉にするアイビーを叱った。その様子を見たトレニーは、はっと何かに気づいたように両手で口を押えて目を見開いた。
「お貴族様でしたか、すみません!どうか命だけは……」
「違う違う!俺、普通の人間!貴族じゃないです!」
「よ、よかった。私の人生はここまでかと思いました……って、俺?」
トレニーはぽかんとウィンの顔を見つめる。あまりにも長い時間見つめていたのでアイビーが「ちょっと、僕のご主人様を見過ぎです」といったことでやっとトレニーは我に返った。
「あ、あの、男の人、ですか?」
「そうです、冒険者のウィンって言います。訳あってこんな格好をしてますが男です」
ウィンのその言葉を聞いたトレニーはぱちぱちと瞬きをして、大きく息を吸った。いやな予感がしたウィンは、両手でアイビーの耳をふさいだ。
「ええーーーッ!!!!うそーーッ!!!!!」
トレニーの放った風船が破裂するような大声が店の中全体にいきわたる。店の奥からは「うるさいぞ」とトレニーの師匠らしき人の怒鳴り声が聞こえてくる。ウィンは目を白黒させながら、「嘘じゃないです」と小さく答えた。




