表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

自転車のお家

掲載日:2025/12/18

私のお家の横にはね、小さな林と公園があるんだ。ある日、そこに一台の自転車が置いてあったの。だれのものか分からなくて、ずっとそのまま。持ち主はぜんぜん来なくて、ただ静かに置かれていたんだよ。


しばらくすると、ツタがぐんぐん伸びてきて、自転車を半分飲み込んじゃった。木とくっついて、一緒になっちゃったみたい。カゴと後ろのタイヤだけが、ちょっと見えるくらい。まるで森のお友だちになったみたいだった。


ある年の初夏、ツバメがそのカゴに巣を作ったんだ。小さなヒナがぴいぴい鳴いてて、私と友達は毎日見に行った。親に相談して、ヘビが来ないように、とげとげのヘビよけをつけてもらったの。夏の光の中で、ツバメは元気に育って、秋になる前に空へ飛んでいった。


秋になって風が冷たくなったころ、後ろのタイヤにカマキリが卵を産んでた。白い泡みたいな卵で、未来がぎゅっとつまってる感じがした。


冬になるとツタが枯れて、自転車の姿がちょっと見えやすくなった。サドルにはふかふかの草がいっぱい詰まってて、その中で小さなネズミが丸くなって眠ってた。友達と覗いた私は、びっくりして、でもそっと元に戻した。寒い冬をがんばって過ごすためのお家だったんだね。


春になると、ネズミはいなくなってた。そのかわりに、サドルの奥にヤモリの卵が並んでたんだ。小さな白い宝石みたいで、見たとき胸がどきどきした。


そして初夏、ツバメが戻ってきた。去年と同じカゴに巣を作って、またヒナを育て始めたんだ。


気がついたら、自転車はもうただの乗り物じゃなくなってた。ツタに隠れて、鳥や虫や小さな生き物たちの居場所になって、季節ごとに違う命を迎えていたんだよ。


私はそれを「自転車のお家」って呼ぶことにした。

冬の光に照らされると、枯れたツタの間から鉄のきらめきが見えて、森の中の秘密の宝物みたいに見えるんだ。


自転車はもう走れない。でもね、そこにはたくさんの物語が生まれてる。

春も夏も秋も冬も、命が集まるきらきらしたお家。


次はどんな生き物のお家になるのかな。



読んでくださってありがとうございます。

子どものころ、身近なものが「秘密の宝物」に見えたことはありませんか?

もしよかったら、教えてくださいね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
 走る機会がなくなった代わりに、四季の移り変わりにあわせて様々な生物の命の揺りかごとなりながら、ツタと一緒に成長や巣立ちを見送る自転車のお話、素敵でした。
秘密基地が好きな私にとって、とてもワクワクするお話でした。 人気のある動物でなく、嫌われ者や日陰者の動物・昆虫というところも素晴らしく、自転車には可哀想だけど、家としての「成長」を楽しませ貰いました。…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ