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第45話 ソフィアの尋問

 破壊したアストラルナイトの残骸を解体し、構造を調べながらエンジン部を取り出す。精霊を捕えている部位で、かなりの魔力を宿しているが――。

円盤状の金属板の中央に大きな宝石。その周囲を囲うようにいくつかの小さな宝石が嵌っているようなデザインだ。機体内の位置的にはパイロットシートの真下に大きな宝石が来るような配置になっている。


 魔道具作りでの知識もヴァルカランで得ているから、それらの宝石そのものに術――プログラムが組み込まれているというのが分かる。エステルの分析からすると小さな宝石の方のいくつかにそれぞれ波長の異なる精霊の力が宿っているようだ。


 パイロットシートも特徴的だ。レバーやパネル、フットペダルのような操作系ではなく、手足を置く場所に水晶球が配置されているような構造になっている。アストラルナイトがパイロットの動揺なども反映していたことを考えるなら、意志を伝えて機体を動かすような操作系統になっているのだとは思うが。


「……必要なのは制御用の宝石の解析だが……そうなると実際に動かすために入力をして、そこから魔力の流れを追っていく形になるかな」

「どういう形で制御しているのかが分かれば、精霊を眠らせて力を引き出している方法も見えてきますからね。信号を与えて動作確認するのが近道になるかと。ただ、セキュリティがあるかも知れませんので、その辺、夜になってソフィアさんと協力しながらの方が安全かも知れませんね」


 ソフィアに捕虜を尋問してもらって、認証システムなどがあるか、破壊された時に精霊がどうなるのか等々を確認しようというわけだな。では、通信機でソフィア達に連絡を入れつつ、それまでは解体しながら機体の構造を調べ、解析することに集中するとしよう。




「お待たせしたわね」


 夜になって、ソフィアとルヴィエラ、ハーヴェイ。それから魔道具を装備した亡霊騎士達が空を飛んで集落の広場へやって来た。アルタイル修復用の素材も運んできてくれているな。


 訪問してきた面々はエルフ達から注目を集めていたし見た目から怖がる子供もいたが、まあ怖いと思えるのは外見だけで、憎悪さえ抑えられていれば中身は普通の人と変わらない。少し芝居がかった調子やおどけた調子のオーバーリアクションで自己紹介や挨拶をして見せると、警戒もかなり緩んだという印象がある。


「その……お父さんをメアリさんに助けてもらったの。だから、あの人にありがとうって伝えておいて欲しいな」


 と、そんな風に駆け寄って来たエルフの子供から言われた亡霊騎士はその場に膝をついて子供と視線の高さを合わせてから言う。


「おお。それはメアリ殿も喜びましょう。このエイギル。ヴァルカラン王国騎士の名誉にかけて必ずや今の言葉を伝えるとお約束しますぞ」


 亡霊騎士のエイギルがそう答えると、子供はにっこり笑って頷き、母親の元に駆けていった。


「騎士団の方々も歓迎する。何か必要なことや分からないことがあれば、可能な限り答えるつもりだから、遠慮なく言って欲しい」


 集落に訪問してきた騎士達にライヒルがそう伝える。


「これはご丁寧に痛み入ります。我らは――食事や休息の必要はありませんからな。歓待などは必要ありませんが……こうしてソーマ殿とエステル殿のお陰で、外の方と普通に接することができるようになりました。見かけた時は気軽に挨拶をしたり話しかけたりしてくれれば、皆も喜びましょう」

「承知した。我らはソフィア陛下やハーヴェイ殿、メアリ殿には深く感謝している。きっと皆も、騎士団の方々と良い関係を築けるだろう」


 そう言って。ライヒルやマデリエネ、ハインと言った集落の主だった顔触れは騎士団の面々と自己紹介をしあっていた。


 俺は俺で、昼間判明したデータや精霊の力を減衰させるフィールドへの対抗策をソフィアやハーヴェイに伝える。

 既にエンジン部回りに精霊減衰の力が味方に及ぶのを防ぐためのシールド処理らしきものも発見している。ヴァルカランで色々魔導書の類を読ませてもらったが、その知識がここで活きてきた形だ。


「ほうほう。もう対策まで練っているとは」

「効果が確認できたら、次はソフィアと一緒に戦える」

「そうね。次は全力を出せるわ」


 ハーヴェイが感心して声を上げ、ルヴィエラとソフィアは顔を見合わせて頷き合う。ソフィアは精霊騎士であるが故にアストラルナイトに対しては安全策を取って戦ったが……やはり生身ということでどうしても質量という面で押し切れなかった。湖水を精霊器として使えるというのなら、その辺のハンデを帳消しにできるだろう。


「というか、大量の水を操れるという理解で良いのでしたら、面白いことができそうですね。流体制御技術を駆動系に使った機動兵器も過去にはありましたし、私のデータベースにも入っていますから」


 そんなことを言い出すエステル。


「それは――こっちの技術とアストラルナイトの技術を一部流用してソフィアとルヴィエラ用の専用機を作るとか、そういう話か?」

「お二方が良ければの話ですが、そういう話です。普通に機体を組むよりは色々省略しながらも強力なものが作れるかも知れませんよ」

「興味があるわね……。ソーマの世界の乗り物をこっちで作ろうという話でしょう?」

「専用……。アルタイルみたいな格好いいのなら、嬉しい」


 ソフィアとルヴィエラも乗り気な様子だ。……そうだな。一国の資源を使える関係上、潤沢なリソースが集まってきている。工作機械はナノマシンで組み上げて制限以上のものを段階を踏んで作ればいいわけで。その上でソフィアとルヴィエラの専用機となれば、現時点で考えられる戦力の増強という意味では最高のものになると予想された。


「アルタイルと同じものは――私達にも機密にされている情報や制限があるので作れませんから、旧世代の技術にはなってしまいますが」

「それでも、攻防両面で不利はなくなりそうね」


 確かにな。装甲に守られているだけでもかなり違ってくる。機体があるだけでハッキング……呪術に対しても結界のように作用する魔法的意味合いが出てくるようだし。

 とりあえずまずはエルフの集落に一機。ソフィアとルヴィエラの専用機として一機を作る、という方向で考えてみよう。


「動力部――精霊を捕えている部分も見つけたけど、普通に破壊して大丈夫なのかどうか。その辺のことを知らないか、捕虜に尋ねて欲しいと思っていたんだ」

「良いわ。精神支配の上で尋問すればいいのね?」

「ああ。集落から精霊を奪った上で何を狙っていたか、そういう部分も知りたいかな。その他の細かいところや質問の進め方は、ソフィアに任せるよ」

「気になる部分が出てきたら都度その場にて、ということで」


 エステルと共に言うと、ソフィアは「分かったわ」と応じる。


「では、捕虜のところへ案内しよう」


 ハインがそう言って先導し、捕虜達を捕えている場所へと向かう。エルフの集落は長らく平和だったため牢はなかった。だから精霊術で形成した丈夫な蔦で即席の牢を作り、見張りを置いて監視しているという状態だそうな。


「捕虜の手足の骨折などは添え木をしただけだな。逃亡や仲間達への攻撃を防ぐために、治療は死なない程度の最低限……というところだ」


 捕虜はマインラートと、もう一人。

 他の者達は埋葬した形だ。遺品は誰のものか同定できる状態で保管してある。


 ――集落内の情報を与えないためにか、太い木に囲まれて周囲への見通しがきかない場所に牢は作られていた。木々の間に太い蔦で編まれた足場が空中に形成され、そこにやはり蔦牢が形成されている。小さな精霊達が多く浮遊し、エルフの戦士達も常駐して見張りに立っている形だ。


 滅多な動きが出来ないようにきっちり監視されているというような状態だな。


 ハインが精霊に魔力を渡すと、蔦が動いて足場の高さまで牢が競り上がってくる。


「何の……用だ?」


 マインラートは牢の中で顔を上げて言う。痛みがあるからか表情は疲れていたが、心はまだ折れていないといった様子だ。俺は尋問の様子を見に来ているが、エステルのハッキング魔法で姿を見えないようにしている。アルタイルの操縦をしていたのが俺だということを連中は知らないし、余計な情報も与えない。


 ソフィアは無言のままで前に出ると、小さな三日月状の、赤い刃のようなものを形成した。それを飛ばすと、マインラートの頬が少し切れる。傷口から滲んだ血が空中を漂うように浮遊し、ソフィアの指先に纏わりつく。


「っ……。貴様、何を――」

「ブラッドドミネート」


 血の支配。ソフィアの血魔法は正しく効果を発揮した。その言葉と共に何かを言いかけたマインラートの目から光が消えて虚ろな表情になる。


「なるほど。これが血に聞くって言っていた魔法か」

「ええ。血を触媒にした精神支配の術よ。血を採取して視線を合わせることだとかいくつかといった条件が必要なのだけれどね。名前も知っていないと精度も上がらないわ」


 なるほどな。それで精神支配できるというのなら、ハードルは結構低めだとは思う。知っているなら視線を逸らすといった対処はできるが。


「さて……。私の質問に嘘偽りなく、正直に答えなさい」

「……はい……」


 ソフィアが言うと、マインラートは抑揚のない声で答えた。


「まず名前と、肩書きを答えなさい」

「マインラート=マクマフォン……。ゴファール王国の白銀将マインラート……だ……」

「ゴファール王国……ゴファールの王家はかつての同盟と変わる事なく続いているのですな」


 ハーヴェイが顎に手をやりながら言う。

 ゴファール王国、か。外の情報が殆どなかったからソフィアの知る隣国が続いているかも不明であったが、王家と国体は存続していたらしい。


「アストラルナイトで森人の集落を攻めたのは、精霊を捕えるため?」

「そう、だ。エルフ達が育てた精霊、は……アストラルナイトの動力として非常に、有望視……されていた……」

「……囚われている精霊は、宝石に閉じ込められて眠らされている、のかしら。その宝石が破壊された場合どうなるのかしら?」

「……解放、されてしまう、はずだ。操騎士に襲い掛かる可能性があるから注意が必要だと……そう言われた」


 その言葉にハインが眉を顰める。


「であるなら、精霊をなだめ、落ち着いてもらう処置が必要だろう。眠りから目覚めさせる形だから、その時にマインラート達の仲間だと思われては困る」

「精霊の解放は尋問を待ってからで正解でしたね」


 エステルは俺に言う。


「そうだな……。ハイン達に協力してもらえば、安全に解放できそうだ」

「ああ。そこは任せて欲しい。しっかり対処して見せる」


 ハインは真剣な面持ちで応じる。エルフ達は精霊達との付き合いに関しては専門家だからな。そこは心強い。


「解放した精霊さん達はどうするんですか?」


 エステルが首を傾げて尋ねる。


「それぞれの精霊の司る力に応じた場所、依り代を用意して、集落に留め置くしかあるまい。ゴファールの振る舞いを見ている限り、元の場所に帰してもまた利用されてしまう可能性がある」


 精霊はエルフの集落で受け入れか。妥当なところではあるだろう。

いつもお読みいだたきありがとうございます!


別作品の告知で恐縮ですが、今月12月25日発売予定の、

コミック版『境界迷宮と異界の魔術師15巻』の特典情報が出ております。


詳細は活動報告にも記載しております。

今後とも書籍や更新共々頑張っていきますので応援して頂けたら嬉しく思います。ではでは。

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