七学の秘密
俺の名前は水無月 悠真。
この春、両親の仕事の都合で――という表向きの理由で、南方の孤島《久遠島》に転校してきた。現実はもっと深い。俺は「霊を死後の世界に送り届ける」家系の末裔だ。霊能の血を引き継ぐ者として、島に封じられた「七不思議」の監視と調査、それが本当の転校理由。
俺の家は山奥の古びた洋館で、地下には古文書と霊具が眠る秘密基地。人には見せられない場所だけど――なぜか今、俺の部屋には白ギャルと黒ギャルの双子姉妹が足を投げ出してゴロゴロしている。
「マジ、ユーマの家、落ち着くわー」
「ガチそれ。Wi-Fi飛んでんの神すぎ~」
白ギャルのミルクと黒ギャルのココア。明るくてうるさくて、でも妙に俺に懐いてくる。最初は戸惑ったけど、今じゃもう日常だ。
彼女たちとの出会いは転校初日。校門前で幽霊に取り憑かれかけた俺を、なぜか助けてくれた。彼女たちはただのギャルじゃなかった。霊感が異常に強い――いや、島の霊と「契約」していた。
「ねぇ、ユーマ。あんた、この島の八つ目の七不思議、知ってる?」
ミルクが言ったその言葉が、全ての始まりだった。
---
久遠島には七つの怪異が存在する。
夜な夜な笑う校舎の鏡
誰もいない体育館のピアノ
学園の屋上で泣く赤い傘の少女
校庭の地面から出てくる手
毎晩勝手に書き換わる黒板の文字
保健室に現れる白衣の女
七不思議を知った者は消える
だが、本当は八つ目が存在する。それは、「霊を喰らう者」。つまり――俺自身だ。
「お前が“八つ目”なんだよ、ユーマ」
その言葉を告げたのは、閻魔大王を名乗る女性だった。突然俺の夢の中に現れ、こう言い放った。
「この島の欲に呑まれた霊どもは、放っておけば人に憑き、暴走する。お前の力で“正しい死”へと導け。でなければ、この島は呪いに飲まれる」
---
翌日、俺は“最初の事件”に巻き込まれる。
図書室で人が変わったように暴れ出した委員長・高峰 梓。理知的で真面目な彼女が、突然、「全部、欲しかったの……全部、私のものに!」と叫び、教室の天井を這う霊に操られていた。
俺は特別な家系に伝わる“鎮魂の札”と霊剣で霊を斬り、彼女を正気に戻した。
梓は涙をこぼしながら呟いた。「ありがとう、助けてくれて……私、あなたに何か返したい」
そこから彼女も、俺に距離を詰めてくるようになった。
---
数日後――
「よう、転校生。あんた、最近変なもんに関わってるだろ?」
そう言って絡んできたのは、学園最強の不良少女、鬼塚 凛先輩。けんかっ早い彼女に睨まれた時は終わったと思ったけど……彼女もまた、過去に霊に命を助けられた経験があり、俺の力を感じ取っていた。
「アンタの力、あたしに貸せ。あたしの“過去”も消してくれ」
彼女の腕には、霊と融合しかけた“影”が潜んでいた。
---
更に、新任教師の水嶋 玲奈先生も巻き込まれる。
「あなた、普通の生徒じゃないわね……」
玲奈先生はかつて霊研究機関に所属していた過去を持ち、俺の正体に気づく。
「手伝わせて。これはもう……私の使命でもあるの」
そう言って、彼女は自ら封印の術を施し、俺の戦いを支えてくれる。
---
後輩の花守 華は、清楚で笑顔が天使のような少女。けれど彼女の裏には“完璧を求める欲”が潜んでいた。
「お兄ちゃんみたいな人が、私の初めてでよかった……」
そう言いながら、彼女は霊に意識を乗っ取られ、自ら命を絶とうとする。それを止めた時、彼女は俺を「運命の人」と呼ぶようになった。
---
さらに、義姉の水無月 薫。彼女は両親の再婚でできた姉で、霊に強い耐性を持つ。俺がピンチになるたび、必ず駆けつけてくれる。
「私は……あんたを守るために、この家に来たんだから」
そして、常に塩対応の月城 澪。クールで口数も少なく、俺にも冷たかったけれど、実は幼少期に霊に取り憑かれた経験があり、人を信じるのが怖かっただけだった。
「……別に、好きとかじゃない。けど、あんたじゃなきゃ……ダメだったの」
---
霊と欲が融合し、人を喰らい始めたこの島で、俺はヒロインたちと共に戦い、導き、救ってきた。
ついに最後の七不思議――“八つ目の七不思議”に辿り着いたとき、閻魔大王が再び現れた。
「お前は“選ばれし者”ではなく、“選ぶ者”だったのだ」
七不思議すべての霊を成仏させたとき、霊と人間は融合を解かれ、世界は静寂を取り戻した。
そして――
---
3年後。久遠島に、新たな学園が建てられ、俺はその敷地の中心にいる。
周囲を囲むのは、かつて共に戦った8人のヒロインたち。
ギャル双子のミルクとココアは笑いながら腕を組み、梓は指輪をいじって照れ笑いし、凛先輩は頬を赤く染めてそっぽを向き、玲奈先生は白無垢姿で微笑む。華は嬉しそうに泣き、薫姉は誇らしげに頷き、澪は無言で指を絡めてきた。
「さぁ、皆さん。契約、交わしましょう」
閻魔大王の号令とともに、八人の花嫁との結婚式が幕を開けた。
俺は、七不思議を終わらせた存在。
そして、今は――八人の“嫁持ち”という、現実的に最恐の存在になったのだった。




