巨大な蛇
巨大な蛇
それは大きな蛇だった、しかも頭は3つありそれぞれに意思のようなものを感じる。
ハーピーの攻撃と同時にゴブリンも地上を攻撃してきたが。
ゴブリンは近衛兵と町の警備兵によって駆除は完了している。
だがそのどさくさに紛れて魔獣が数体、隠れて出番を待っていた。
「あんた遅いよ」
「な なんだよ」
「男なら先頭に立つのが普通じゃない?」
いつの間にかペアを組まされ柚子と一緒に回ることになったクズ勇者。
いつもの自信に満ちた口調とはえらい違いだ、それも仕方が無いとはいえるが。
この世界夜になると月明りと星灯り、いわゆる自然の明るさのみであり。
夜にはどこの家も灯りなど灯していない。
街灯なども整備されておらず、歩いて町を見回るとなればどこから魔物が飛び出してくるのか常に注意していなければならない。
だがクズはようやくLV12までは上がったが、そこからはレベルを上げられずにいた。
「お前は何で平気なんだ?」
「死んでも生き残る可能性が高いからよ」
「どうして?」
「善行LVって積み上げ式でしょ、LVポイントを沢山確保していれば死んだ時に現世へ帰ってもそのまま生きて帰ることができる」
「そんなの分かんのかよ」
「分かるわよ ああ あなたスキルで取らなかったのか…」
「そんなスキル無かったぞ」
「もしかして善行LV5ぐらい?」
「ああ」
「という事はEクラスぐらいか」
「なんだよ、仕方ないだろ 普通このぐらいじゃねーのか」
「まあそうかもね」
「ザー」
「なんか音がする」
「な なんだよ」
「シー」
柚子は咄嗟に身構える、ちょうど建物が無くなって雑木林に差し掛かる頃。
目の前に巨大な蛇が現れた。
「シャー」
「ウワー」
「タタタタタ…」
クズ勇者は速攻で逃げ出した、どうやら速足のスキルを持っているらしい。
「チッ まあ良いわ」
(あれがいると邪魔だろうし)
クズ候補はいつの間にか建物がある場所まで逃げてしまい、壁の下でうずくまっている。
いざという時の行動はこういう時にこそ現われたりする。
いくら経験を積もうが危険に対して立ち向かうか逃げるのか、こういう時にこそ真の勇気が求められるのだ。
「かかってきなさい」
柚子は今回のプレゼントで得たエクスカリバーを手にする。
まだ勇者セットは装着していない、魔術士でLV82迄上げていたこともあり。
両方のLVを足すと100は超えている。
この世界のLVは積算方式、いくら転職しても転職した職業LVが増えれば加算されるのだ。
今回は戦士を選択したことで武術のスキルが増えていくが、各種魔法のポイントも増えて魔術スキルも増やすことが可能だ。
すでに戦士スキルもいくつか手に入れた。
「シャー」
「それ!」
「ズシュ」
「ガー」
「これで首2つになったわね」
跳びかかった大蛇の大きさは月明かりに照らされようやく判別できるようになる。
全長は20メートルを超す、首の太さは50センチ以上。
そのキバには毒があるのだろうが、嚙まれなければどうという事は無い。
「シャー」
「いらっしゃい」
「ジャー」
いくら大きくともとびかかる時は体を一度縮めるのだから分かりやすい。
だが油断していたこともあり、蛇の尻尾が横から飛び出てくるのまではよけきれなかった。
「バン!」
「く」
「ドン」
「やっぱりこの程度」
LV50の魔物、その程度の魔物であればほぼ無傷である事は検証できた。
「それじゃ覚悟しなさい」
「ドン」
土埃と共に大蛇に向かって柚子がジャンプする。
大きな口を開けて待ち構える大蛇、だが空中から柚子の魔法が放たれる。
「フリーズ!」
「パキキ」
「セイ!」
「バキャキャバラバラバラバラ…」
魔法で凍った大きな体が粉々に砕け散る。
断末魔の雄叫びも無く無残に散る魔物。




