勇者候補
勇者候補
数人は床にへばりついて空ごとのように何か呟いている、どうやらライブ会場でもらった薬の効果が切れていないらしい。
あんな状態でちゃんとナビゲーターから説明を受けたのだろうか?
「座っている者は別室へ連れていけ」
「ハッ!」
衛兵とみられる男達が数人床に転がっている召喚者達を担ぎ上げどこかへ連れて行くようだ。
「おい 俺達は勇者候補なんだろう?扱いが雑過ぎないか?」
「これはこれは失礼しました、あなた方は勇者候補ではありますが、現在は一般市民より下の流魂者(流れ者)になります」
「この後選定の儀を行います、そこでいくつかのランク分けをいたします」
「勝手に呼び込んでおいてふざけんなよ」
あの薬物ライブに参加していたにしては、ちゃんとした考えを持った奴がいたらしい。
しばらく信之も柚子も成り行きを見守る事にする。
「ねえ柚子ちゃん…」
「大丈夫?」
「うん、少し頭が回るだけ」
「なんでこんなことに?」
「多分あの子が原因だけど、今はそんな事どうでも良い、明奈は私に付いてきてね」
「有難う柚子ちゃん」
魔法陣のやや右側にライブの壇上で叫んでいた女子が一人、下を俯きながら笑いをこらえているように見える。
鑑定してみると善行LVは10、多分写メで他人を巻き込んだ事により本来あった善行LVを失ったと言う事なのかもしれない。
「残りの方は衛兵に付いて選別の間に進んでください」
「お前らに指図される云われは無い!」
「抵抗なさいますと痛い目を見ますよ」
「バシン!」
「ウッ」
「ここは言う事に従おう」
「マジかよ」
全体的に善行LVが少なめ、ライブのバンド達はLV5以下であり、参加者の半分も同じぐらいだ。
先ほど異を唱えたおじさん(40代)と数人は善行LV15前後であり、中には勇者セットを身に着けている者もいる。
(あれ着るとすぐばれるんだよな)
信之は勇者セットを着るのを避けていたりする柚子も同様だ、この世界で勇者セットを装着することはそのまま勇者であると名乗るみたいなものだから。




