クラブでライブ
クラブでライブ
大人になると様々な事を経験するのだが、その前段階と言った所かこのライブはいわゆるドラッグパーティだった。
何処で手に入れたのかはわからない、ミツルの友人は幅が広く半分以上が遊び人のはずだ。
もしかしたら確実に女を落とすことができるぞ、とでも吹き込まれたのかもしれない。
だがクラブのライブを隠れ蓑にこういうパーティが都内で行われているとは世も末だ。
「着いたぜ」
やや薄暗い階段、その手前にはタトゥやピアスをいくつも付けた若者達が10人以上開演を待っている。
後10分ぐらいでライブが始まるらしい、目の周りをどぎつい化粧で飾った若者が一人。
並んでいる若者達から一人ずつチケットを確認して行く。
「…出せ」
「これか?」
「ブチ」
「入ったらすぐ右へ行け」
「次」
「入ったらすぐ右…」
独特な雰囲気だった、通常のライブとはどこか違う。
並んでいる若者は半分がすでにトランス状態なのか、目を合わせたくない感じがした。
カップルも何組かいて、既にきつく抱き合って唇を合わせている。中にはお互いに手を体に這わせているやつも。
恋愛初心者には目の毒だと言っておこう。
「マジか」
「このぐらい普通だぜ」
「うわ…」
お嬢様には少し刺激が強いようだった、そう言うカップルを見る度に手で顔を覆いながらチョロ見をしている。
少し時間が経つと地下にあるライブハウスのドアが開き、先頭から順番に中へと入って行く。
「右だったな」
薄暗い会場、中にはステージが設けられており壁際には長椅子が置いてある。
個々に座るのではなく自由に腰掛けても良い形。
そして真ん中はホールになっているのか、そこで踊れるようにしてあるのか。
問題は会場の右へ進んで何をするのか。
「イッペンに飲むなよ」
「次」
受け取ったのは錠剤が3つ、どうやらやばい薬の様だ。
「ゴクン」
「これを飲んで」
「え?」
(飲んだふりで)
(了解)
おれと金城さんは多分この薬を飲んだとしても何の変化もないだろう。
あの世界から持って来たスキルにはアンチポイズンなどと言うスキルも有ったりする。
オートリペアやキュアなどの回復系の魔法やスキルを何度か使うと解毒のスキルが解放される。
魔物や敵が使用する武器にはそう言ったデバフ効果が有ったりするので、あの世界で生活すると自動的に身についてしまう。
だが一応その成分が分かるまでは無駄に能力を使用する事は無い。
「何これ?」
「天国へ行く薬だよ」
周りの若者たちも、それを口にするようだ、俺と金城さんは一応飲んだふりをする。
「始まるようだ」
【おい おめーら、やってるか!】
「ワー」
【いくぜ ゴートゥーヘブン!】
いわゆるヘビメタと言うやつ、あっという間に辺りは熱気に包まれ。
中央には30人以上が腕を突きあげ音楽に合わせて叫んでいる。
カップルは当然のことながら壁際に置いてある椅子に座り、辺りの暗さを利用してHな事を始め出した。
そして俺の隣に座ったミツルも、息が荒くなり朝倉さんに襲い掛かる。
「ア ン だ だめ」
「スリープ」
金城さんがそう言うと、ミツルと朝倉さんが壁に倒れ込む。
俺はそれを受け止め真横にならないように抑える事にした。
それ自体は何も問題は無かったが、いつの間にかステージ上にいるバンドのボーカルに何かを叫んでいる人物がいる。
【邪魔すんな!】
【悪魔!人でなし!】
【こいつ連れ出してくれ】
【殺してやる!】
どうやらバンドのボーカルはクズらしい、そして女は壇上に上がるとスマホを手にする。
何でそこでスマホなのか?バンドの他のメンバーは全員顔をニヤつかせている。
「鑑定」
バンドのメンバー全員がクズどころか人でなしだった。
言い寄って来るファンを食うのはよくある事だ、但しやたらめったら食うとどうなるか?
この場では言い表す言葉が見つからない、多分壇上に乱入した女子は身も心もずたずたにされた被害者本人かそれとも関係者に違いない。
だがそれよりも気になったのは手にしたスマホで写メを撮った事だ。
「パシャ」
一瞬会場全体が光に包まれる。




