ライブアプリ
ライブアプリ
金城柚子(19歳)信之より一つ上だが、誕生日は9か月しか離れていないので後2か月でノブユキも同じ年になる。
今から5か月前、彼女は後輩に頼まれて予備校の手続きに同行していた。
後輩が東京の大学へと行くからと、その間に住む場所や各種の手続きなど、遠い親戚だったが田舎の遠い親戚は姉妹みたいなものだ。
そして彼女の場合は少しイレギュラーだったことが判明した。
「違うのか?」
「私は写真を撮っていない、撮ったのは別の子で、その子がスマホに入れていたのはデスアプリの方」
彼女がいじめを防ぐべく間に入ったと言う事は確かだ、だがその時いじめられていた子がデスアプリを起動させて5人のいじめっ子を証拠として写真に撮った。
その中に彼女も含まれてしまったらしい。
生還したのならば、警察に事情を聴かれたはずなのだが、アプリの事は話さなかったのだろうか?
「よく聞いて、スマホに入ったアプリ、ライブアプリを所持している帰還者以外には見る事が出来なくなるのよ」
「え?じゃあ警察が調べても君のスマホにあるアプリは…」
「ええ存在すら知ることができなかったわ」
「確かデスアプリは消えてしまうし帰還者は記憶を無くしてしまうんだよな」
「だからこのアプリは貴方と私にしか見えないはず」
「そうなんだ!」
「あなたも身長とか、体格とか変わったでしょう?」
「ああ だけど俺は戦士を希望したからそう言った魔法は使えないよ」
「そうなんだ」
「ああ、それから帰還者は俺もだけど後2人いる」
「この間の子?」
「そう、そしてもう一人はあの世界で5か月放浪していた勇者マリカだ」
その名前を出した途端、金城さんから涙がこぼれ出した。
「勇者様が帰還したの?」
「え!知り合い?」
「私を助けてくれた人、だけど100クエストが終わった時、彼は現世に帰らないって言った…」
次々に遺体で見つかった女子達にマリカの名は無かった、だがそれがあの世界で生きているのかどこかで死んでしまっているのかはわからない。
死に戻る場所は自宅ではない、どこかの岸壁かもしれないし雪山かもしれない。
発見されることが無い場所に死に戻ったのなら、それは行方不明のままと言う事になる。
「マリカはあの後転職して聖女になったらしい」
「聖女に?」
「彼女トランスジェンダーでしょ、戦士として暮らしても納得できなかったみたいだ、その後聖女=癒術士に転職したんだけど、それでも男から言い寄られていたらしい」
「え?じゃあ彼に会ったの?」
「ああ一緒に現世へ戻ったんだ」
「でも彼、巻き込まれたはずでしょう」
「裏技、というかスマホの機能を使って情報を持ち込んでみたのさ」
ライブアプリはあの世界の情報を現世へと持ち込める、それはスマホと言う通信システムを介してならば可能であり。
2名以上でその通信方法を使用してどちらかがライブアプリを所持していることが条件になる。
「そんな事、考え付かなかったわ…」
「君はその時一人だったんだろ」
「ええ勇者マリカも最後の半月ぐらい同行しただけよ」
「そうなんだ」
「連絡先教えて」
「それなら俺より秋元君の方がよく知っているよ」
「え?」
「マリカは彼の従姉妹なんだってさ」
まさかそんな近くで繋がっていたとは思わなかったが、これで金城さんがあの話に食いついてきたのか説明がついた。
「おい」
「ミツル」
「そろそろ時間が来たから次の場所に行くぞ」
いつの間にか結界魔法が解かれており、周りにいた人の声が聞こえて来る。
「話が弾んでいたみたいだな」
「そっちもだろう」
「ああ、ばっちりだぜ」
結界魔法、と単純に言ってもその強弱や範囲でかなり用途は違ってくるらしい。
まさか現世でも魔法を使用できるようになるとは思わなかった。
但し、使用するにはいくつかの決まり事があるらしい。
MPと言うのは異世界であれば表示されるが、現世では何も表示されない。
ならばどうやって魔法を発現させるのか?その方法とは、もう一つのエネルギーをMPの代わりに使用する。
単純に考えればそれはカロリーの事であり、10分程度の結界魔法でも相当お腹が減るらしい。
それともう一つ、常にスマホの充電は60%以上をキープすること、スマホとの関係性はまだ解明されていないが。
向こうの世界からデータを持ちこめるということは、スマホを仲介してということに関係しているのかもしれない。
「グー」
「だれだ?」
「お腹減ったわ」
「OKOK次の場所に行く前にどこかで腹を満たそう」
時間は午後1時と言う事もあり、何処の店も混みあってくる時間帯。




