約束の完了
約束の完了
とりあえず俺が頼まれていた花梨と麻里華へのデータ譲渡は全て完了した。
俺の時と同じ、花梨や麻里華に劇的な変化があった事、それは有希も目の前で見たので信じるだろう。
そして秋元有希は病院からの帰り道、どうやらあのアプリに対しての好奇心がさらに強くなってしまったようだ。
「それじゃここで」
「え?もう帰るの?」
「今回でアプリの話は完了だろ」
「まだだよ」
「もしかして自分もヘブンスバースに行きたいのか?」
「そ …」
(そうだけど)
「ダメだ たまたま俺達は帰って来る事ができたけど、向こうの世界に行くと最初の出発地点は全員バラバラなんだ、助けたくても手助けしてやれないんだよ」
「そうなんだ」
通常のゲームの世界なら始まりの町とかいう場所があるのだが、ヘブンスバースと言う仮想世界は、そこに招待された全員が全て違う場所へと連れていかれる。
勿論時間差もあるので、いずれどこかで出会う事もあり得るのだが、少しの時間ずれているだけでも最初のクエストはかなりの危険を伴うはずだ。
善行LVが他の人より高かったおかげで、俺達3人は無事に帰還することができたのだが。
有希の善行が最高LVでなかった場合、俺達のような恩恵が受けられないはず。
それに帰還する時には必ずライブアプリを使用しなければ記憶もデータも持って帰る事が出来ない。
と言う事は俺も一緒にあの世界へ行って絶対に帰還すると言う条件でなければ、有希と一緒に写メを撮る事は自殺行為になる。
「実はもういじめの現場を見つけてあるんだ」
いつかの計画、それを俺は冗談だと思っていた。
いじめの現場を見つけその当事者を写メに撮る、それは実験であり自分達の安全が確保されていると言う条件があっての事だった。
だが写す方と写された方、双方があの世界に引きずられてしまうとなれば話は別だ。
「それ、実行に移すつもりなのか?」
「じゃあいじめを黙って見ているの?」
目の前で起こっている事ならば放って置けない、だが有希が探してきたのはまるっきり他人の生活であり俺達には関係ない事だと言える。
果たして他人がそこに介入しても良いのだろうか?
「じゃあ、こうしようもしいじめられている子が助けを求めて来て、アプリのデメリットまで受け入れたなら計画を実行しよう」
「じゃあそこは俺一人でやるよ」
「え~僕は探してきただけになるじゃん」
「でも有希がもし帰還できなくなったら…」
「僕はノブ君に責任を取れなんて言わないよ、逆にうまくいかなかったら文句を言ってくれても構わない」
いじめ、それは多分簡単には無くならない、それはいじめる側から見れば競争相手を排除する事であり生きて行く為には必要だと思っているからだ。
過激な暴力や誹謗中傷がいずれ自分をも傷つけてしまうのだと解かるまで、いじめている本人がいじめを止めることは無いと思う。
「そうだ言ってなかったけどもう一人参加したい子がいるんだ」
「地獄行きを?」
そんな勇気の塊みたいな人がいるとは思わなかった、だが聞いてみたら確かに彼女ならばいじめをなくすためそこへ参加するだろう。
「ほら、この間合コンで会った金城さんだよ」
金城柚子19歳、クールビューティー、先輩の白石晃が何度となく言い寄っても軽くあしらう事数回。
顔色さえ変えずこちらをジッと見ていた女の子、外見はかなり綺麗目でしかも身長は175センチを超えていたのを覚えている。
要するに以前の俺や先輩の身長より背が高い、ミツルでさえ手を出さなかった女の子。
何故彼女が俺達の話に興味があるのかはわからない。
「そう言えばあの後ずっと彼女と話してたよね」
「色々聞かれたよ、行方不明の従姉妹の話とか」
この時はまさか金城さんが帰還者だったとは思わなかった。




