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デスアプリ(帰還できるのか…悪事を裁くのは誰だ!)  作者: 夢未太士
デスアプリシーズン2 エピソード1 目覚め
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本当の麻里華

本当の麻里華


まるで絵にかいたような風景に一瞬ドキッとなったが、次の瞬間その気分はもろくも崩れ去る。

ヘブンスバースで会った秋元麻里華はその外見とほぼ変わらぬ口調と、所作や物腰さえ性同一障害とは分からなかった。

だが目の前にいる秋元麻里華は外見こそあの時より弱弱しく美しいが、その口から発せられる言葉は真逆だった。


「おお、久しぶり 一緒に来たのは誰?」

「ああ、僕の友人だよ、君に会いたいって」

「有希ちゃん話してくれてないの?」

「いや知ってるよ、そして君が5か月放浪していた秘密もね」


外見が美しいのに話す言葉は花梨より男性っぽい。

あの世界にいた時は何らかのバイアスがかかっていたのか、それとも言語機能がそういう風に表現するようになっていたのかはわからない。

だが目の前にいる綺麗な人物から放たれる口調は女性の言葉から程遠いようだ。


「短刀直入に説明する、その前にスマホは?」

「これだけど、何するんだ?」

「俺が預かったデータを君に渡すだけだよ」

「俺、君に会った事なんてないよな…」

「この世界ではね」


記憶喪失、確かにアプリの世界の事は全て忘れて、違う情報を生みつけられているような、そんな感じだ。

まったく違和感が無いのが不思議、現世へと記憶を消されて帰還する。

それは一部ではあるがあちらの世界で起こった出来事を全て消し去ることになる。

どうやってそんな事が可能になるのか分からないが、花梨の時もヘブンスバースでの事を全く覚えていなかった。

だが麻里華からスマホを受け取るとおれはすぐに、あの世界から持ち帰ったデータを無線で送ってみる。


「データ移譲完了、俺が送ったボックスを開けてみて」

「なんだ、変な奴 これか?」

「ああ」


次の瞬間やはり目もくらむような光が病室を覆い、一瞬だが目が見えないぐらい真っ白になった。


「あれ、ここは?」

「どうだ?」

「君は勇者!」

「お前もだろう」

「そうか、戻って来たんだ…」

「そういう約束だったからな」

「…」

「有希 何驚いてるんだよ」

「え 鏡」

「スマホで写真撮った方が早いよ」

「ああ そうだね」


その写真には髪の長さもだが、先ほどの白くやせ細った姿ではなく、やや日に焼け精悍な顔をした女性がいた。


「え?チョト待って」

「バサッ」


おもむろにベッドから降りるとすぐに俺の隣へと並ぶ。

そう言えば向こうの世界で麻里華と一緒に歩いた事がある、あの世界での俺の身長は5センチほど高かったのを覚えている。

現在俺の身長は180センチ近くまであるので横に並んでも5センチぐらいしか違わない。

麻里華の元の身長は160センチぐらいだったらしい。


「え?身長が伸びた!」


そう確か以前、有希の身長は160センチと聞いた、そして麻里華も同じくらいだったはず。

なのに、3人が並ぶと有希より10センチ以上麻里華の身長が高いのが分かる。


「麻里華ちゃん、身長伸びた?」

「どうやらあの世界から帰って来ると5センチ以上背が伸びるみたいだな」

「それでノブ君も背が高く見えたんだね」

「細かく調べると他にも違いがあると思うよ」

「ほんとだ」


俺がそう言うとおもむろに麻里華は自分の胸を揉みしだく。

前にもましてその膨らみが強調されている様に見えるが、胸が大きくなったと言うより胸筋が増えたからと言った方が正しい。

入院中の寝間着の下はパンツ以外の下着は付けていないようだ、その間俺の目は赤い顔をしながら天井を見つめていた。

いや確かに変身前の彼(彼女)も胸が大きいように見受けたが、現在はそれだけではなく明らかに肩幅も腕の筋肉も全体的に膨れ上がっているように見える。


「お~これならこっちの世界でも以前よりマシかもしれない」


言葉使いは男性だが声の質は普通より高いので、彼の精神が男子だと感じる人はいないだろう。


「改めて自己紹介するぜ、俺の名は秋元麻里華よろしくな」

「そう言えば自己紹介はまだだった、俺の名は佐藤信之 こちらこそよろしく」

「すごーい、こんな事が有るんだ…」


そう一度見てみないとその違いに気づく事すらないだろう、筋肉の増量だけでなく身長迄伸びたのだ。

まるで魔法にかかったように感じる、もちろん体を動かしてみればさらに驚くことになるだろう。


「ノブユキ君、もしかして身体能力も?」

「ああ 100メートル11秒を切ると思うよ」

「そ そんなにか?」

「麻里華はあの世界に3か月いて2回も限界突破しているだろ、もしかしたらおれより身体能力は上かもしれない」

「やった!これならこの姿でも馬鹿にされないぞ」


彼(彼女)が何に対してコンプレックスを感じていたのか、そして何になりたいのかはわからないが。

どうやら3か月の間に起こった出来事は、彼(彼女)にとってはプラスになったのかもしれない。


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