光のあと
光のあと
確かカリンの髪はショートカットだったはず、そして身長は俺より少し低いぐらい、それほど高くはなかったはず。
なのに、目の前の花梨は光に包まれた後ショートカットの髪からセミロングへと変化し頭頂部の位置が3センチほど高くなったように感じた。
「思い出した!」
そう言うと自分の体を、手と腕、そして何故か胸まで触って確かめだした。
「なんかきつい」
「え?」
「トイレ」
「ああ、どうぞ」
男には分からない事だろう、いや俺も目が覚めた後わずかに違和感を感じていた。
まるで1日で体が成長したような感覚、多分それがカリンにも表れたのだろう。
カリンはトイレの中で鏡をまじまじと見ながら、別人とはいかないにしても今までの自分ではなく目の前にいるのは別人になったような感じ。
いやまるでバージョンアプして綺麗になった理想的な自分の姿。
「こ これがあーし?」
(え?背が伸びてる?胸も…)
「デカくなった!」
(え~下は)
「きっつ、脱いじゃった方が良いか…」
彼女の身長も170センチを超えていた約8センチ増えた身長、それだけではない胸が一回り大きくなると言う事はカップも1~2大きくなければ収まらない。
同じ理由でショーツも一回り大きい物でなければ当然きつくなっている。
「あちゃー、買い足さないと無理か―」
ブラもパンツも、そのまま装着していると苦しくて頭まで痛くなってくる。
そして髪の毛は横でピンを使い止めていたのだが、ここまで長くなると後ろで縛った方が楽になる。
持って来たカバンからゴムひもを取り出すと、器用に毛を纏め後ろでポニーテールに結ぶ。
もう一度鏡を見るカリン。
そこにはいつの間にかいい女になった自分の姿が写っていた。
「おまたせ」
「…」
「なんだよ そんなに変わったか?」
「綺麗だ…」
「パシン」何故が信之の頭を両手で挟むように叩く
「なんつった!」頬が真っ赤
「え きれいだ」
「そ そうかな~えへへ」
どういう仕組みなのだろう、アプリの機能はあの世界内でのみ発現するものだと思っていた。
確かに俺のようにデータを持ち出して別の参加者に与えたりする参加者は今まで居なかったのか、もしくはいたとしても誰にも口外していなかったのかもしれない。
10センチ近く身長が伸びて、その上ボディラインまで変化する、それはアプリの世界で培った身体能力を現実でも発揮できるようにするものに他ならない。
「もしかしたら能力も?」
「そうらしい」
「でも現実では使えないだろ」
「いじめ対策にはなるよ」
「う~ん」
「この力でいじめ撲滅ってか…」
「どうした?」
「なんか引っかかるんだよな~」
「ん…」
「あ もう一人の聖女、いや勇者探さないとじゃん」
「それは今度の土曜日、秋元君に会って説明する」
「そっか、従妹だったよね」
俺も自分のインベントリーを確認した、そこにはいくつかの加護スキルの名称とアプリの世界で使用していた武器や防具の名前があり。
それぞれにデータとして保管されていた、だがそれらはタップしても表示、いや具現化されるようなことは無く。
やはりアプリの世界でなければ武器や防具、そして材料や魔法具などは取り出せないらしい。
その代わり肉体に起きた現象はとんでもない物だった。
「ノブ君さー今度デートしない?」
「え え なんで?」
「ああ、そういうデートじゃなくて情報交換かな…」
「で ですよね~」
「告って来るなら話は別だけど、そういう勇気は?」
「え!」
「あ~今のは無し、ごめん少し頭の整理が必要かも…」
勇者カリンのデータは渡すことができた、だがそれがこんな変化をもたらすとは。
彼女の変化は俺の時とほぼ同じだろう、身長も体格も勇者と呼べるような外観に変わり。
同時に以前の身体能力ではできなかったことができるようになっているはずなのだ。
ちなみに100メートル走は10秒台以上、垂直ジャンプは3メートル以上。
それらの能力上昇は隠しておかなければならない事だ、自分のお腹を見ると見事なシックスパックに仕上がっている。
スポーツはもしかしたら球技以外万能なのではと思われる、格闘技ならばかなりいいところまで勝ち進むことができるのではないだろうか。




