小細工
小細工
駅からは数百メートル離れたコインパーキング、表通りからは陰になるのでほとんど人影はない。
だからこそ隠れて物事を進めるには良い場所ではあるが、敵が待ち伏せする場合にも都合の良い場所である。
そしてその場所を使って行われる各種の取引を抑えるにはもってこいの場所だった。
「ハアハア、ここまでくれば」
「それデスアプリか?」
「だれだ!」
隠蔽スキルで姿を隠し、繁華街から住宅地そして人影のない場所へと。
追ってくること数キロ、第三の人物は息を切らし公園のベンチへ座り込む。
逃げきれたと思った男は、まさか自分を追ってくる奴がいるとは思わなかった。
「足、速いじゃん」
「どこにいる!」
「探しても無駄だ」
「くそ、あいつらの仲間か」
「違う違う、あんな馬鹿どもと一緒にすんな」
「じゃあなんだよ」
「それデスアプリだよな」
「!」
「あーそうかなるほどな」
考えもつかなかった、その方法。
スマホのカバー、いや別にカバーでなくてもよいのだが。
写メを撮る時に自分側のレンズにカバーで目隠しをしてしまえば、自分自身は写メを撮られないようにできる。
「考えたな」ノブユキ
「出てこい!」謎の男
「やだね」
「パシャパシャ」
「無駄だぞ、俺もアプリ持ってるからな」
「な なんだと」
「俺が写メ撮られたらお前の写メを撮ればいいんだろ」
「くそ!なんだ、何がしたい!」
「したいではなく知りたいだな」
「事件のことか?」
「正解」
これで行方不明者をヘブンスバースへ送った犯人が分かった。
「あいつらは俺の妹を嵌めやがった」
「あいつら?」
「あいつらって、今日の奴らもか?」
「美人局のグループは今日の奴らだけじゃない、このあたりの不良全部だ」
全く学生の身で何をしているのだろう、傷害窃盗万引き暴行など。
不良グループが組織化すると、893も及ばないほど凶悪な事件を引き起こす。
総勢数百人にも及ぶハングレのグループであり、その資金源の一つがおやじ狩りや美人局。
中には危ない薬を売りさばいている学生までいるという。
「俺の妹はあいつらに殺されたんだ」
その先はありがちな話だった、友人にそそのかされて軽い気持ちで入った不良グループ。
若いころはよくある話、そして美人局のおとり役になり。
何度かおやじ狩りをした頃、おやじが持ち出した凶器によって刺されてしまったという。
自業自得だとも言えなくはないのだが、妹さんはいやいや従っていたという事らしい。
そして復讐を計画したが、調べてみると不良グループはかなりの大きさだったことに気付く。
「要するに根絶やしにする計画を立てたんだな」
「俺は間違ってない」
「正しくも無いだろ」
「…」
「俺をどうするんだ」
「スマホからアプリは消してもらう」
「いやだ、まだ20人以上あの世に送らないといけない奴らがいる」
「もしかしてお前そのアプリで全員死ぬと思っているのか?」
「違うのか?」
「死ぬ奴もいるが生き残るやつもいるが」
「え 死なないのか!」
「そう言う場合もある」
「嘘だ、このアプリを買うとき、そんなこと言ってなかった」
(買っただって)
「そんなにうまくいくはず無いだろ」
「嘘だ、こないだの奴は死体で見つかった」
「それはたまたまだ」
「嘘だったのか…」
「たまたまだろ、2回や3回で結論なんか出ない」
(ちょっと拝借)
「あ!」
「こうして削除」
「あー」
「消しておいたぞ」
スマホを取り上げアプリを削除、そうしてようやく自分の姿を見せる。
「なんだよ、敵を討てないじゃないか、返せよ!」
「こんなこと続けていたらお前自体が死ぬかもしれないんだぞ」
「俺は覚悟してる」
「そうか、それが仇討ちなのか?」マリカ
「終わったようだね」有希
「なんとかね」
「だ だれだ」
「皆仲間だよ」有希
「ところでアプリを誰から手に入れたんだい」マリカ
「し 知らない」
「もうばれてるわよ」柚子
「それってここでしょ」有希
「…そうだ」
「有名なサイトだよ、リベンジライフとかいう」
「なんだよそれ」ノブユキ
「また手に入れてやる」
「じゃあ君も行ってみるか?」マリカ
「え!」
「私にやらせて」柚子
後からどんどん人数が増えてくる、有希だけは隠蔽スキルなど持っていないので普通に現れたが。
他の5人は隠蔽スキルだけではなく魔法も使用できる。
いくつかの特殊能力を使えば姿を消すぐらいは難しくない。
信之が対応している間に花梨が皆に電話してくれたらしい。




