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デスアプリ(帰還できるのか…悪事を裁くのは誰だ!)  作者: 夢未太士
シーズン3 エピソード1 現世へ(次なる事件への介入)
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夏休み

夏休み


いくつかの事件を何とか無事にクリアし、アプリの事を少しずつだが理解できるようになってきた信之達。

いまだにヘブンスバースへと転送するロジックは分からないままだが、写メ機能を立ち上げて実行に移さなければ問題ないことまでは分かっている。

そして無事に帰還すると正規のアプリがスマホにインストールされていなければ記憶さえも失っているという事。

そして正規版アプリの所持者にのみ許された恩恵、アプリの世界で経験を積むと現実でもその経験値を持ち帰ることができる。

但し現実に即した事象の変更にしか使用できないが、それでも魔法に近い物はいくつか使用できるのも確認できた。


「ねえ、指定席なんてよくとれたね」

「格安チケット手に入れたからね」

(有希に頼んでおいて正解だな)

「やるじゃん、見直したかも」

「いまさら?」

「そういえばあのアンナあれから現れないけど、もう大丈夫そう?」

「あ えーと話したら分かってくれたみたいだよ」

(ここははぐらかすしかない)

「ほんとに?」

「俺には花梨しかいないからって」

「うふっ」

(うれし)

(そうなんだよな、あれから姿は見ていないけどいるのは分かってる)


片桐杏奈はノブユキをあきらめたわけではない、元々それほど馬鹿な女性ではない。

アンナはアプリの世界で起きた出来事は忘れることなどできなかった、大学生になるまではごく普通の女子であり。

彼女は割と奥手だと言って良い、そんな女子に強烈な性の記憶だけ植え付けたらどうなるのだろう。

彼女も日々、頭の中で聖女と悪女が格闘するようになっていた。

ノブユキに会いたいのは山々だが、会ってしまうと我慢できなくなるのを恐れているに過ぎない。

だが信之が恋人とどこかに行くとなれば、後を付けないでいることなどできなかった。

ヘブンスバースで手に入れたスキルや魔法を最大限利用して、マーキングしておいたノブユキの動向を探るぐらい簡単な事だった。

尾行というより自分自身も一人旅をするだけと自分自身に言い聞かせて、同じ列車に乗り込んでいたのだ。


「お弁当たべよう」

「そうだね」


品川から乗り込んだ新幹線、東京からだと安いチケットが無かった。

目的地までの停車駅は4つ、300k以上ある距離を約2時間で走る。

以前にも乗ったことはあるが、彼女と二人という状況は今回が初めてだった。


《名来屋~名来屋~お忘れ物はございませんようにお願い申し上げます》

「もう着いた」

「忘れ物ないよね」

「大丈夫だよ」


今回の旅行、ノブユキは家族に男友達と行くと言ってある、なぜそんなことを言ったのかというと。

いつ花梨にフラれるかもわからないからだ、要するにそうなった場合に恥ずかしいから。

花梨と交際すること自体が夢のようなものだが、そんな関係がいつか無かったことになったら。

信之自身かなりショックを受けるだろう。

何度かこういう経験をすれば心配など無駄なことだと分かるが、初めてできた彼女との関係が壊れてしまう。

考えても無駄なことだがそれでも考えないわけにはいかない、そういうところがまだ初心者だったりする。


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