ヘブンスバースの話
ヘブンスバースの話
飲み屋さんではあるが二人を除き全員が未成年者ということもあり。
目の前に出されたアルコールは全てノンアルという事になった。
ミツルの彼女だけが俺達の話していることに加われず、終始ミツルとイチャイチャしている形になったが。
その様子を見て何か違和感を感じていた。
「彼変じゃない?」柚子
「ああ 今気づいたよ」
「前の時はベッタリされてもイチャイチャしてたけど」柚子
「少し避けてるわよね」花梨
「ああ、あの世界から戻って少し落ち着いたみたいだね」
「その違いって何かわかる?」
「あいつはあの世界で落ちこぼれ組になったところまでは覚えている」
「勇者として?」花梨
「ああ、俺達とは別のグループになったんだ」
「でも帰ってこれたんだね」花梨
「一応善行LVは40近くまで上げる事ができたということか」
「落ちこぼれグループだったのに頑張ったということかな」
「そのせい?」
「そうとしか思えない」
勇者グループは3つに分かれ行動していたので途中で何があったのかまでは分からない。
特にBグループとCグループはミツル以外ここにいる帰還者が誰も加わっていなかった。
だが帰還した当日、ライブハウスで見たBグループの半分は覚えていたりする。
やや年配の3人はあの煙の中でもめげることなく他の人に肩を貸していたり、救出された後でも水を配っていたりした。
「ノブ君、彼女連れてきてまずかったかな~」有希
「いや、そんなことは無いよ、だって正規版のアプリを所持している人が3人に増えたんだからね」
「そうだよね」
「それでSNSサイトの方はどうなってる?」
「彼女以外は冷やかしが多いよ、それとどこかのゲームアプリと勘違いしている人が多いね」
「そうなるよな」
「いつもこんな感じなの?」未来
「いやいつもはもっと男子が多いよ、今回はあまり部外者を呼ばなかったからね」
「うーん、あの彼トラウマを抱えてるようね」
「何か分かったの?」
「あの世界で悪夢を見たって感じかしら」未来
「そういえば勉強の方は?」
「ちゃんとしているわよ、来年は大学に入る予定だから」
「そうなんだ」
「未来ちゃんは元々勉強はできる人だったんだよね」
「事件さえなければね」
「データを受け取った後、調べてみました?」
「ええ、3人は交通事故で亡くなって一人は自殺していたわ」
「マジか」
「仕方がないわ、まさか友達が裏切るとは思わなかったから」
未来を貶めていた人物もそしてそれを誘導していた人物も全て亡くなっていたらしい。
全員の死亡した日時は別々なので事件としてではなく通常の事故扱いだった。
「ノブユキ、またゲームの話かよ」
「ああ、柚子ちゃんと有希はそのつながりだからな」
そう、ミツルにはゲームの話として認識させてある。
彼にアプリの世界の事を切り出した時、こう答えたからだ。
「なんだよ、ゲームの話か、現実の方が面白いだろ?」
あの世界での出来事が彼の記憶から全部消去されているのなら、何を聞いても答えは架空の話として話は進む。
別にそれが歯がゆいとは思わない、だが彼は俺から見ればそれほど悪い人間ではないし。
死ななくてよかったと思っている。
ライブハウスでの事故で死んだのはバンドの6人、観客50人中26人合計32人が死んだことになる。
ニュースに出るということはその年の大惨事として記憶されるということだ。
ちなみに俺達以外にはアプリの所有者はいなかったとみている。
もしあの場にヘブンスバースの記憶を持って生還した者がいたのなら、その時点でおかしな言動をしているはずなのだ。
だがアンナのような、知らずに転送された人間が他にいないとは限らない、有希が管理しているSNSは今後もそういう情報を得るためには必要だろう。




