どうしても伝えたい思い
どうしても伝えたい思い
花梨や未来そしてマリカたちが話に夢中になっているところを見計らって席を立つアンナ。
それまでは何事も無く良い雰囲気を楽しんでいたノブユキ、小用を済ませてトイレのドアを開けるとそこにはアンナが立っていた。
「な、どうしたの?」
「私覚えてます、ノブユキ様のあれ」
「え?何のこと」
「私正規版のデスアプリ所持してます」
それを聞いて、ようやく気が付いたノブユキ。
あの世界の中で起こった事を覚えている、それはデータをコピーして渡されるかそれとも正規版のアプリを所持しているかどうか。
コピー版はあの世界に転送されると消えてなくなるらしい、その代わりヘブンスバースの中では流魂者用のアプリがスマホにインストールされる、もちろんそれは一時的にであり。
現世でアプリとして機能させるにはまたあの世界にダイブしなければ機能しないらしい。
だが正規版のアプリを持っていたのならば現世でもゲーム内の記憶が蘇り全ての記憶は維持される。
「嘘でしょ」
「本当です」
(まじ!)
「アンナちゃんは、俺にどうしてほしいの?」
「これ私の連絡先です、いつでも待っています」
そういうとぺこりとお辞儀をしてトイレの方へと向かって行った。
もちろんノブユキも彼女とは幾度となく愛しあったことを覚えている、思い出すとあそこが固くなっていくのがわかるが。
今は彼女ができたばかりということもあり、アンナの誘いを受けるわけにはいかない。
(これがモテ期というやつなのか?なんちゅうタイミングだよ)
確かにモテ期と言っても過言ではないが、ようやく好意を寄せていた女子とうまく付き合えるようになったのに。
別な女性からアプローチを受けるとは、ミツルのようなお気楽な考えだったら二股も許されるのだが、もちろんそんな中途半端な恋愛を花梨が許すはずもない。
(だめだよなやっぱ)
半殺しを覚悟できるのならばワンチャンスにかけることもできるが、ノブユキはそれほど度胸のある人物ではない。
いまだにあの世界でNPCも含め何人の相手をしたのか、すべてを話す勇気が無かったりする。
おぼろげではあるが沢山の女子と何かをしたという記憶が時折股間を熱くする。
柚子の魔法で全員と経験したかもしれないとは花梨に告白していない。
「おそい」花梨
「ごめん別な人が入っていたみたいでさ」
「アンナちゃんは?」
「ああ少し待ちながら話してたんだよ」
(この場でアンナの事を話すわけにもいかない)
柚子の方を見ると、してやったりとでも言いたそうな笑みが…
そういえばアンナの事は例のデスアプリSNSで知り合ったとだけ聞いていた。
「ふーん」
「なんか俺まずいことした」
(なんだ柚子と有希は知ってたのかよ!)
「なんでもなーい」
たぶん二人は事の成り行きを知っていたりするのだろう、だが信之にはそのことを言わないことにしたのらしい。
男と女の色恋など若いうちにできるだけ経験しておくものだ、そこに口を出しても仕方がないし。
こういうことは自然に任せた方が良い、無理に行動を制限してもうまくいくのかは分からないし。
それにあの世界からの帰還者で記憶を持ち帰った全員が何らかの能力までも手に入れているのだ。
いくらあの世界のことが思い出に変わったとしても、性奴隷として過ごした数日の事を忘れることなどできるのだろうか。
まあそれは本人の考え方次第だとは思うが、ノブユキにとっては心配事の種が増えただけという結果になった。




