続アンナの場合
続アンナの場合
目が覚めたのは自分の部屋であり、いつもの朝を迎えていた。
布団を力いっぱいめくると自分の顔を確かめるために洗面所へと急ぐ。
頭は何ともないがいつもならぼやけているはずの目が、なぜかすっきり前が見えている。
実はアンナは眼鏡を使用していた、最近ようやくコンタクトを手に入れたが。
使い慣れないとコンタクトは面倒だったりする、眼鏡をしなければ顔はそこそこ美人に見えるらしい。
「ダダダ」
「バタン」
「え!」
肩までだった髪はいつの間にか長くなり胸を半分以上隠している。
そして鏡をしばらく見ながら考え込んだ。
「何時の間に?」
ありえないことだった、どうやら背も少し高くなった気がする。
胸は元々やや大きかったが、さらに大きくなった気もする。
腰回りも一回り大きくなっていた、それなのにウエストのくびれはそれと比例して細くなっているように感じる。
変化はそれだけでは無かった、言葉では言い表せない大人になった変化が残っている。
Hは未経験だったはずの彼女、だが今はS〇Xを経験した感覚が頭の中に残っている。
「ノブユキ様」
何故彼女の記憶が残っているのか、流魂者としてあの世界に呼ばれたはずの彼女。
実は彼女のスマホには初めから正式版のデスアプリがインストールされていたらしい。
いつインストールされたのかは分からない、あまりアプリに対して詳しくない彼女。
そういう物があったことすら気にもせず忘れていたのだった。
正規版のアプリがあればあの世界から記憶を持ち帰ることが可能だ、それが予期せぬ事件であっても自らが望んだことであってもだ。
「ノブユキ様を探さないと…」
もちろん今は性奴隷の印などは残っていない、アプリの世界の物理的な出来事は現世に戻ればリセットされる。
本来流魂者であったならば体の傷やあの世界の出来事で負った経験など、何の傷跡も残ってはいないはずだった。
だが記憶が残れば信之を愛しそして愛されたことは、しっかりと記憶に残っていてもおかしくはない。
脳の中にはノブユキに愛された日々が昨日のことのように刻まれていた。
「ミリちゃん…」
そして日付を確認する。
思わず大声を出してしまったのはあれから1日しか経っていなかったからだ。
「えー!」
「なに!」母
「なんでもねー」
実家に帰ってきて二日目、そうあれから1日しか過ぎていなかった。
だがあの世界のことが嘘ではないということは知っている。
デスアプリはスマホの中に存在するし、それが原因で一時は性奴隷にまで落とされたことはしっかりと記憶している。
取りあえず友人(仮)だったミリちゃんに電話を掛けることにした。
アプリの世界では友人に騙されて奴隷にされてしまったが、その後ノブユキ達に助けられヘブンスバースの仕組みも少しは分かった。
ならば助けられた二人がどうしているのかを確認しなければ。
『プルルル』
『はーい』
『ミリちゃん』
『アンナちゃん?朝早くからどうした』
『今日の約束』
『何?約束って』
『マー君と三人で遊ぶって約束よ』
『そんなの聞いてねーべ』
『そう?』
『じゃあまた嘘つかれた…』
『マー君がそう言ってたの?』
『そうだべ』
『そういえばアンナがしつこいって言ってたけど本当?』
『したっけ、今だからばらすけんどマー君って高校の時私を襲ったんよ、そんな奴と付き合うわけねーべ』
『え!』
『萌も言ってたけどあいつは大嘘つきだべさ、早く別れた方がえーよ』
『嘘でしょ』
『信じなくても良いけんど、私はあいつと金輪際会わないから、そう伝えといて』
『ブツッ』
この際だからぶちまけてしまった、次にあの顔を見たら手が出そうになりそうだったから。
だがこの後ミリちゃんから電話が入る。
どうやらマー君はあの後ミリちゃんとは別れ実家ではなくホテルに宿泊したらしい。
そこでは男友達と遊ぶのだとか言ってミリちゃんを家まで送り届けたらしい。
そして朝になりアンナからの電話内容を問い詰めようとミリはマー君へと電話をする。
『ツーツーツー』
『なんで出ないんだべ』
それから数時間、ミリのスマホに警察から電話が入る。
『こちら橘田己理さんの電話でよろしいでしょうか?』
『え―とどちら様ですか』
『警察の者です』
交通事故だという、同乗者は髪の長い女性で車は崖から数十メートル落ちて助け出された時は意識があったらしいが。
病院に運ばれていく最中で息を引き取ったということだった。




