乱入者によりゲームの世界へ
乱入者によりゲームの世界へ
歩いて数分の場所に(R阿吽の一)というカラオケボックスがある。
そこにはボーリング場も隣接しており一晩中遊べる人気のスポットだった。
部屋を予約して何曲か歌って飽きた頃ボーリングへと移動すると、先に予約を入れに出ていたはずのマー君が見知らぬ女性と言い争っていた。
「お前なんか知らねーよ」
「あれほど愛してるって、言ったじゃない!」
「そんなこと言ったか?」
「マー君なんだべ?」ミリ
「こったら女、頭おかしいだべ?」
「どうしたん?」アンナ
「地獄へ落としてやる!」
まさか包丁でも取り出すのか!と思ったが、取り出したのはスマホ。
たまたま萌はトイレへと行っており、現場に出くわしたのはアンナと巳理そしてマー君の3人。
そして怒り狂った女性の顔は長い髪に隠れてはっきりとは覚えていない。
スマホからはシャッター音と同時にわずかなフラッシュが炊かれ。
目の前にいた女性は捨て台詞をはいてその場から立ち去った。
「くたばれ!」
同じ女性なのによくもまあそのような汚い言葉が出るのだろうと、その時はそう思うだけだった。
もちろんマー君にはその後やっぱり翌日遊ぶのは辞めると断りを入れたのだが。
その晩に起きた出来事は今でも忘れない。
ちゃんとベッドで寝たはずなのに、目が覚めるとそこは荒野だった。
どこかのパンフレットで見たことがあるような景色、そして時折砂埃と共に風が吹き抜けていく。
「寒!」
「ヘイガール」
「誰?」
「ポケットの中をルックして」
(スマホ?)
その声はスマホから発せられているが、スマホには電源など入っていない。
だが声だけはそこから出ているようだった。
アンナは不思議に思いながらもスマホに話しかける。
「私 死んだの?」
「うーんまだそれは決定事項ではないかな」
「したっけ、あなたはどこにいるの?」
「それは秘密かな」
着ているのは寝間着代わりのスウエット上下、部屋の暖房は付けっぱなし状態だったはず。
だから自分は火事で死んだのかなと思っていたのだが、そういう事ではないらしい。
「ここはヘブンズバース、要するにアプリの中の世界」
「もしかして転生とか転移とか?」
「イェス」
(そんな世界が本当にあるんだ…)
「それで、冒険するって感じなのかな~」
「オフコース、ユーは善行LV20だから結構楽に冒険できるよ」
「そうなんだ」
いつの間にか方言は無くなり、普通に会話できるようになっている、アプリの中では標準語に直されるのかもしれない。
そしてスマホから聞こえる声に誘導されながら選んだのは様々な武器や防具そしてスキルなど。
それらを身に着けて挑めばそれほど危険なゲームではないということだったが。
問題なのは辺境の町に転移された時に間違って王国側に進んだのではなく。
魔王国側へと足を踏み入れてしまったことだった。
そうなるように誘導されたような気もするが、進む先にクエストがどんどん出てきていつの間にか魔王国の中へと入り込んでしまっていた。
【仲間を救え:LV10】
「これがクエストってやつね」
国境線からやや魔王国側へと入るとすぐにクエストが表示され。
索敵スキルと敵感知スキルを使い進んでいくと、今にも崩れそうな山小屋の中に人らしき影を発見する。
「誰かいない?」
「助けて」ミリ
「やっと出会えた」マー君
「え?なんで二人が」
そこからは事情を聴いて困っているらしいことやクエストがやたら難しいということで。
いくつかの防具や武器を貸してあげることにした。
「ありがとう」
「これでクエストをこなせるぜ」
「ちゃんと後で返してよね」
「大丈夫だって、俺は嘘つかないぜ」
この時はまだ鑑定魔法も索敵スキルも初級だったため、マー君の嘘を見抜くことができなかった。
友人を疑うことにためらいがあったのも彼の嘘を見抜け無かった原因だった、そしてミリとの関係を壊すようなこともしたくはなかったからだ。
魔王国をさまよい何とか生き残る努力をしてみたが、ミリとマー君はアンナの足を引っぱってばかり。
「見捨てるのか?」
「そうじゃなくてあなたたちも戦わないとLVが上がらないでしょ」
この頃はまだ性奴隷になるとは思っても見なかったアンナ、始めからおバカな女ではなかったのだ。
「それよりお腹減ったよ~」
「あ そういえばなんかチラシがあったよな」
〈食べ放題10G、挑戦者求む〉
「これってお金は?」
「このぐらいなら何とかなるって」
これまでに稼いだお金は100Gぐらい、だが手に入れたドロップ品は魔王国内での換金方法が分からずまだストレージの中にある。
「ほらこの魔法で変身すれば」
「本当だ、魔族みたい」
「ところでさ、これから先何かあったらまずいから、貴重品をまとめて金庫に入れておかないか?」
「金庫?」
「ああ、おれこの世界に来たとき魔法の金庫とかいうやつを手に入れたんだ、いつでも好きな時に登録した全員が使うことができるってやつさ」
「でも落としたりしたら出せないじゃない」
「そんなことはないさ、ほら」
そう言って金庫のカギを渡してくる、もちろん出し入れは簡単だが。
「ミリも預けてくれているんだし、アンナも預けておけば安心だろ」
「全部は預けられないよ」
「ああ少しでもいいよ」
後で分かったことだがこれは罠だった、魔法の金庫には中に入れた物の所有権がフリーになる魔法がかけられていた。
頃合いを見はからって私が預けた武具やお宝を搾取する、カギも途中で変えてしまえばよいのだから。
まさか友人の彼氏がそんなことをする人だとは思っても見なかった。




