トイレの前
トイレの前
俺は花梨に手をつかまれてパーティーブースからトイレの近くまで引きずられていく。
ややムスッとした感じの顔をしている花梨、多分アンナがなぜなれなれしく俺に話しかけるのか聞きたいのだろう。
俺も今日彼女が来ているなんて知らなかったし、なぜあの世界の情報を持ってきているのかさえ分からない。
俺と柚子が持ち出したデータは未来のデータのみ、しかもそれを預かっていたのは柚子だけだ。
と言うことはアンナが誰かからデータを受け取ったか、もしくは彼女が正式なデスアプリの所有者だったかだ。
ヘブンスバースで最初に出会ったアンナは性奴隷であり、魔王国の兵士という位置づけだった。
俺は彼女がコピーされたアプリであの世界にジャンプしたものだとばかり思っていた。
鑑定スキルでも流魂者と出ていたからだ。
だがもう一つの可能性がある、元々彼女は善行LV20あったという事。
そしてコピーされたデスアプリによって転送されたということだけだ。
そこに嘘はない、元々嘘など付けない女性であり、俺のスキルによって性奴隷になってからはいかなる命令も言うことを聞くという形になっていたはず。
(マジか?そういうことってあるのか…)
彼女は正規のアプリを所有していたに違いない、だがあののほほんとした雰囲気から分かる通り。
そのアプリがあったとしても気が付かなかったか、もしくは一度として起動させたことも無かったのだろう。
所がだ、何らかのアクシデントによって友人たちと一緒にヘブンスバースへと連れてこられてしまったという事。
俺が聞いた話だと他にも数人あの世界へと転送されたと聞いた、友人二人はあの世界でアンナを罠に嵌めたらしい。
彼女の話だとあの世界へ何人が転送されたかどうかまでは分からないという。
「あの子、何なの?」
「怒らないで聞いてくれる」
「ふー、どうぞ」
「顔が怖いよ」
「嘘は無し、分かったかな!」眉毛がピクピク動く
「イエスサー」
そういうと俺の体を引き寄せ俺の顔をじっと見る。
「なんですか!」
「あたしはノブ君の何?」
「え、花梨は俺の彼女だよ」
「正直に話してくれるよね!」
股間がなぜか縮みあがってしまったが、正直に話す以外にこの地獄から逃れることなどできそうもない。
「アンナはあの世界から生還した鎮魂者だと思う」
そう考えるしか、つじつまが合わないからだ。
「でもどうしてノブ君に色目を使うのかな~」
「今回の話したよね、一人だけ事件とは別に性奴隷になっていた子を助けたって」
「聞いた、それがあの子?」
「そういうことになる」
「じゃあノブ君とHをした記憶を持って来たってこと?」
「うん」
「もしかして今でもノブ君の性奴隷って設定?」
「いやいやそれは無い、俺もさっき初めて彼女が合コンに来てることを知ったんだよ」
「もちろん拒否ってくれんだよね!」
「当たり前だよ」
「あの世界で起きたことは交通事故のようなものだって思ってるよ、でも帰還した後は別だからね」
「ハイ肝に銘じておきます」
「よろしい、それともう一人あの眼光の鋭い人が女帝で合ってる?」
「イエス」
「何だろ、女として戦いを挑まなければいけないような気がすんだけど」
「やめて!」
「冗談だってば」
(ウフフ)
いやマジで心臓に悪い、確かに二人は同一方向に進んで行きそうな感じがするのだが。
「じゃあ戻ろうか」
「俺はトイレに寄っていくから先にどうぞ」
いやマジでちびりそうになった、久々に見た花梨の気合が入った顔。
今の俺ならば少しぐらいは耐えられると思うのだが、勝つとか負けるとか以前に絶対に許さないと言う気概がオーラとなって発散されていることを感じ取れた。




