魔王の最後
魔王の最後
いったい何人の子供がいるのだろう、ようやく魔王を討伐できると思っていたのだがそこにまた魔王子と魔王女が現れる。
最初に出てきた魔王子より若干背が低い魔王子とお面をつけて出てきた魔王女。
いやいやそこが問題ではない、何人出てこようが立ちはだかる敵は殲滅するのみ。
だが息子や娘を盾に使うこの状況に一人納得がいかない人物がいた。
「おい」未来
「は?」
「お前は戦わんのか!」未来
「女帝様、私が戦うのはまだ早いかと…」魔王
「お前のことなどどうでもいいんだよ、この状況を続けるのかどうかを聞いてんだよ」
「まだ娘も息子も残っておりますし…」
「待てない」
「え~」
「魔王、お前が戦うなら俺達どちらかと一騎打ちで片を付けてやるがどうする」のぶゆき
「そうね、言っておくけどあたしは強いわよ」ゆず
「分かったそっちの男の方と戦う」
ようやく覚悟を決めたのか、その重そうな体をのっしのっしと音がしそうな動きで魔王の座から降りて来る。
今にも床が抜けそうな気がするが、目の前に立つと確かにその大きさは他の魔族の数倍は有りそうだ。
「わしをここまで下ろしたことを後悔するなよ」
「しないよ、というか女帝に逆らえないんだな」
「あの方は怒ると后達よりも怖いんだ、しかも体のあちこちに激痛が走るんだぞ」
「早くしな」
「ほら、あの顔を見ろ恐ろしい…」
「確かに」
「ぶつくさ言ってねーではやくせーや!」
「はじめ!」柚子
確かに最初と今とではその顔が変化している様子、まるで般若の仮面をかぶっているようにも見えなくはない。
だがそれを指摘するような度胸もないし、もう一人怖い女子がいるので。
この場は文句も言わずにさっさと従うことに限る。
「ドン!」
「ギャリン」
「何時の間に武器を」
「わしだってストレージぐらいあるわい」
信之が手に持つのは最初に手に入れた甚平刀、今はLVが上がり天雷刀という名前に変化している。
初期LVは20だったが今はLV85まで上がり、このまま雷の魔法を放つこともできたりする。
「わしの武器を弾くとはな」
「そっちの武器も妖刀の類みたいだな」
「普通の武器などいまさら使えんだろう」
「まーな」
「バチュン」
言葉を交わしながら何度か打ち込むが、魔王の持つ刀はこちらの武器とほぼ同等らしい。
このまま続けてもなかなか敵のHPを削ることもできなさそうだ。
「それじゃこっちはどうだ」
「シュン」
「き きたないぞ」
取り出したのはもちろんエクスカリバー、この剣の特徴それは魔族に対して100%攻撃がヒットする事。
そしてATがプラスではなく×であること、こちらのLVが上がるとこの部分も同時に上がる。
要するに現在LVは合計324であれば×324になる。
基礎ATが1万近くまで上がっていれば3240000ということになる。
職業LVは全て+として加算されるが聖剣ともなればこういった化け物じみた威力が出せるのだ。
魔王子とは素手で戦ったが、魔王が剣を手に持ったのであれば、こちらも剣を使用して文句を言われる筋合いはない。
「降参」
「あ~」
「勝負を投げるのか!」
「その剣じゃわしは死ぬしかないぞ」
「ほんとか」
「ズシュ」
「ギャー」
(ほんとだHPの減りがえぐいな)
「降参したのに~」
「ありゃ」
「ノブ君が悪い」
【魔王の敗北が確認されました:現在の魔王は資格剥奪となり次代の魔王選出まで1年の猶予期間となります】
【おめでとうございます:魔王が討伐されました、これより数分後帰還シークエンスが始まります】
マジか、魔王が降参ってそういう結末でも良いのか?
いやできれば俺も早くこんな場所から抜け出したい、皆そう思っているのだろう。
とにかくナレーションの通りに現世へ戻るシークエンスが始まるまで、この茶番のような成り行きを見守るしかない。




