勇者Bチームもなかなか
勇者Bチームもなかなか
勇者Aチームから遅れること半日、迂回ルートを進んでいる彼らだったが。
途中で何度もの危機的状況に陥る、最初の危機で11人もの仲間を失い、その後はより用心深く行動するようになっていたが。
既に魔王国の王城へと向かうルートも半分という所まで来ていた。
「パカッパカッ…」
「もうそろそろ食い物がなくなるんじゃないか?」
「できればどこかで手に入れないといけないな」
2台の馬車に分乗した彼ら、行軍スピードは時速10キロ前後とかなり遅い。
既に丘をいくつか超えて右側には魔の森が延々と続いているのが見えるが。
彼らはその中へ入って狩りをしようとまでは考えていなかった。
「前方に何か見えるぞ」
それは町のような、半壊したような建物がいくつか見えているが。
人も魔族も動物一匹として動く物などその廃墟には見られなかった。
既にあたりは薄暗くなり、Bチームも今夜の宿を取る場所を探していたところだった。
「雨風をしのげる場所は無いか?」
「何人かついてきてくれ、もしかしたら使えるものがあるかもしれない」
「俺が行く」
「俺も行くぞ」
町、いや村の跡と言って良い、壊れた家の残骸が10か所ほど。
そして井戸のようなものが見えるが、その他には何も見えない。
所々に生えている木は枯れはて、時折土埃が舞う、
「どちらにしてもここで休む方がよさそうだな」
「ねえ、食べ物を探しに行かなくていいの?」
「食べ物=魔物だろ、ここまでやってきて手に入れたのはオークの肉だけだったよな」
2日前に手に入れた肉、オーク13頭分。
9人で1日2頭分の肉が消費される、解体して取れた肉は1頭で50k前後。
ストレージの中に入れておけば腐ることもないが、そのまま食べられるのかと言えばそれは難しいらしい。
信之や柚子のように調理セットやケミカルセットを手に入れていれば、食に関する不自由さはかなり軽減するのだが。
Bチームの勇者達は皿や鍋を所持している者はだれもいなかった。
「よしここで今夜はキャンプを張ろう」川村
「この村、見回ってきたが何もなさそうだ」鈴木
「分かった、だがもう遅いからな」
「じゃ食事の用意でもするか」
火は魔法で何とか起こすことができる、肉は剣や刀で切り分けどこかで見つけておいた棒を刺し焚火の周りの地面に刺していく。
食事の用意ができた頃には周りの景色も闇にどんどん浸食され、いつの間にか月明りが荒野を照らし出す。
「俺達どうなるんだろう」
「おいおい、いまさらかよ」
「感傷に浸るのはまだ早いぞ」
「隊長さん、こんなものを見つけたよ」立川
それはこの国の地図ではあるが、そこには大きな印が付いており。
どうやらどこかの洞窟を指示しているようだった。
【魔王国の未踏破洞窟を攻略せよLV100:成功すれば善行LV+30、各種パラメーター+10】
「LV100!」
「後回しだな」
「そうだな」
「無理よね」
「でも善行LV30だろ、この世界で死んでも生きて戻れる」
「攻略できた場合な、できなかったら無駄になる」
Bチーム9名全員にクエストが発生するが、LV100と聞いて全員が攻略に対して無理だろうという判断を下す。
結果としてその地図はその場で無かった事になるが、次の朝ある出来事のせいで彼らはその地図の通り進むしかなくなっていく。




