巨大な魔物
巨大な魔物
いくら何でもその大きさはずるい、魔蛇を倒しクエストをクリアしたと思ったのもつかの間。
目の前には森の木々より上背のある魔物が現れた。
【ジャイアント魔猿を倒せLV80:全員にLV+5、VIT・HP+20】
【初めての解剖:魔物を解剖しよう、貴重な内臓を取り出そうINT・MP+30】
どうやら特殊なクエストを引き当ててしまったようだ、報酬はかなりおいしいのだが。
目の前に現れた巨大な猿は身長18メートル横幅7メートル。
木々を掴みへし折りながらこちらへとやってくる、その口からはよだれが垂れており。
獲物を見つけたとでも言いたそうにこちらを見ている。
「でか!」
「ねえ、あんなのどうすんのよ」
「クエストだからな…」
「ノブ君」
「やろう」
「皆なんでもいいから1回は攻撃当ててくれ」
「なんで?」
「LV80の魔物だ、クエスト報酬だけでは無く少しでもHP削ることができれば自分のLVも上がる可能性がある」
「そうなの?」
「ああ」
「ゴアー」
「じゃあ、行くよ!」
「うん」
あの大きさだ、その辺に落ちている石でもいいから、うまく当てることができればHPを1ポイントぐらいは削ることができるはず。
俺と柚子は普段使わないスキルを発現させると素早く木の間を走り回り、ジャイアント魔猿めがけて飛びかかった。
「ドン!」
「ズシャ!」
「バシュン!」
「ガー」
「トン、コン、シュン、シュン、バシュン…」
俺と柚子の攻撃が一旦引くと、そのタイミングを見計らって魔法や弓矢が魔猿めがけて飛んでいく。
案の定1ポイントから5ポイント程度のダメージを与えることができたようだ。
「もう一度!」
「分かった!」
獲物がバカでかいおかげで1回の攻撃ぐらいでは倒すことなどできない。
だがHPのバーは1割ぐらい削られて、切られた個所からはエフェクトとして赤い血が流れている。
「バン」
「バン」
「ザシュ!」
「ドシュバシュ」
「シュン、パシュン、パスン…」
「ポイズン」
2回目の攻撃が終わったと同時に柚子が毒魔法でHPのドロップデバフを追加する。
「デバフの方がHPの減りが早そうね」
よく見ると剣での攻撃が1メモリーに対して毒のデバフは1秒で2メモリーずつ減り始めた。
「足止めするわよ!」
「分かった!」
俺と柚子は同時に2本の脚へと攻撃を始める、すでに四つ足になって待ち構えている魔猿だが。
木々の間を高速で走り回る俺達に目が付いてこないらしく、その太い腕を大振りして無駄に木々をなぎ倒すだけで、その攻撃はこちらへは全く届いていなかった。
「シュシュシュ…」
「パーフェクトエッジ」
「覇王剣、ダブルエッジ!」
柚子は最近手に入れた剣技の技を、俺は前回手に入れた剣技スキルを使用した。
「バシュン、バシュン」
「ズバシュ」
「浅い」
「ズバシュ」
「グギャー」
足を根元近くから断ち切られてのたうち回るジャイアント魔猿。
おかげであたりに真っ赤な血が飛び散る。
両足を断ち切られ、さすがにHPが半分近くまで減ってきた、そこにみんなの攻撃が入り魔猿は気が狂ったように泣き叫ぶ。
「グギャギャガー」
「ギャギャー」
《痛そうだにゃ》
「ニャーニャ…」
「なんだって?」
《手下にしないのかにゃ~》
そういえばテイマーの資格を入手していたのだった、召喚士の上級職であるテイマー。
クロを従属させたときに手に入れた新しい職業。
《そうすると解剖はどうなるんだ?》
《とりあえずやってみるにゃ》
いつの間にか馬車から出てきたクロ、確かにやってみた方が早い。
「汝の命我に預けん、テイム!」
「グアー」
「だめか…」
《残念だにゃ、足を切ったからかにゃ》
「何したの?」
「テイムできるかどうかやってみた」
「新しい職業ね」
「あとで詳しく話すよ」
「ゴアー」
「仕方がない、終わらせよう」
「ズシャ!」
どうやらテイミングにはいくつかの条件があるようだ、HPをどこまで削ればよいのか。
それと足や腕などが欠損していてもテイムできるのかなど。
確かに腕や足が無い状態でテイムしても、もとに戻せるのかは微妙だ。
【クエスト魔猿討伐が完了しました】
「あとは解剖だな」
この時点で全員のLVが10以上アップし俺の魔術士LVも70まで上がった。




