既に魔物の群れの中
既に魔物の群れの中
その臭いに気が付いたのは、そう言うスキルをどこかで手に入れていたから。
さらに索敵スキルも有れば殆どの敵がどこにいるのか事前に知ることができる、ここはゲームの中のような世界。
全ての仕組みはそう言ったゲームに準拠しているが、自分が死んだ時だけは現実に反映される。
「バシュン」
「ドン」
「くせえ」
「おい気を付けろ」
「こいつら頭を破壊しないと死なねえ~」
「バン」
「刀より鈍器の方が良いぞ!」
「そんなのねえよ」
初期のプレゼントで鈍器を手に入れた勇者候補は少ないと言って良い。
初期ストレージも少なかった善行LV15前後のB判定以下の勇者候補。
彼らの場合魔法のカバンなどのストレージを増やせる魔道具はプレゼントされていない。
実は善行LV15から上の人間は全部で10人に満たない。
この場所に来た勇者の内20人はAクラスからDクラスで、勇者セットを持たない者の方が多い。
「ターンアンデット」
「シュワー」
「おー」
「気を付けて」
「ありがとうよ」
「バガン」
どうやら彼は勇者ではなく冒険者なのだろう、最初から目の前にいる敵を見てメイスやハンマーを手にしている。
「戦えない者やケガをしたものは円形になり盾を使って防御せよ!」
村の中だけではない、いつの間にか村の外からも魔物が現れだす、その数は時間と共に増えて行く。
「あきらめるな、戦わねば生き残れぬぞ!」
「バシュ」
「ドズン」
何処からやって来るのか、映画や漫画などではこういった場面を何度となく見た事が有るが。
どう考えても実際より多くないかと思ってしまう。
現実の日本でならあり得ない、それは火葬と言う風習があるからだが。
この仮想世界にはそう言った風習は無いし、基本的にはNPCも死ねば時間とともにチリとなるように設定されている。
「どこかに大元があるはず」
「誰かが召喚もしくは転送していると?」
「ええそうよ、ここを離れてそいつをやっつけに行くわ」
「頼む」
ユズだけなのかもしれない、他の勇者には無かったクエストが指令されていた。
【召喚士の魔族を倒せ:LV60魔族の召喚士が3人現れた彼らを倒さないと死霊の行軍は終わらない】
「私も行く」
「私も」
この出兵で知り合った5人、柚子が一番強いのは全員が知る所。
彼女が行くのならその場所が一番安全であるが、そこが一番危険と隣り合わせであることも知ることになる。
5人が戦場を離れやや北の方角へと走って行く。
5人共にスピードアップのスキルを持っている為、柚子の足について行くぐらいの速さは出せるが、いかんせんLVの差は埋めがたい。




