アプリを使用したわけ
アプリを使用したわけ
女性が数人集まれば話をしない訳がない、しかも彼女らはそこそこ優秀であり善行LVもすでに30を超えている、もちろんユズは既に戦士LV60(計142)超え。
「何の話?」
「いまさらだから話すけど、この子が使ったアプリのせいで召喚されたのよ」
「アプリ?」
「今から半年前の受験生行方不明事件、覚えてる?」
「1週間後に死体で発見されたってやつ?」
「なになに?」
一人はまるっきりそう言う事柄に疎い様子。
「デスアプリ、そうよね」
「あたしは聞いただけだ、悪い奴を懲らしめたいなら良いものがあるって」
それは制裁SNSと言うサイト、そこに登録すると闇バイトからヒットマンを雇えるとか。
殺したいやつが居たら書き込むとか、やばい話がまことしやかに噂されていた。
普通の人ならそんな危ないサイトに入って何かしようとは思わない。
だが本当に復讐をしたい、自分だけではどうにもできない、と思う人間がいたなら一度は試しにそこへ入ってみようと思うだろう。
「匿名だよ、マスクにサングラス、男か女かも分からない、報酬は10万円」
「10万で私達を巻き込んだってこと?」
「あんな場所に来るやつら何てほとんどおかしい奴らでしょ、自業自得よ」
「私たちは違うんだけど」
「どうせバカな男どもにこびへつらう女なんて同罪よ」
「あなたもそうだったんでしょ?」
「あたしは違う、ミナヨを助けるために…」
「それで自分もやられたんだ、どうしようもないね」
「…」
「まあ今更どうしようもないから、あんたをどうこうしようとは思わないけど」
「私は許せない、罪もない人まで巻き込んで責任取りなさいよ」
「まあまあ」
「どうして止めるの?」
「あなた善行LV18ぐらい?」
「そうだけど」
「じゃあ真面目に魔物退治していればいずれ生きて戻れるわよ」
「なんでわかるのよ」
「なんとなくそんな感じがする、ステータスの此処に善行LVが見えるでしょ」
「あ いつの間に何か表示が増えている」
「LVが上がると善行LVも表示されるのよ」
「そうなの?」
「聞いた話しだと善行LV30以上貯めるとこの世界で死んでも生きて元の世界へ帰れるらしいよ」
「ほんとに?」
「聞いた話しだよ」
「誰に?」
「解説者に」
「え?」
「聞かなかったの?」
まあそこまで詳しく掘り下げて質問することができるのは、ユズやノブユキのような再召喚組ぐらいのものだ。
初めてこの世界へとやって来る人たちは、それどころではない。
ゲームの中のような設定に隠された本当の意味など分かるはずも無く、そして解説者にうまく乗せられてしまうのだ。
「柚子ちゃん」
「だって、そう言う事聞いておかないと納得できないでしょ」
「じゃあ奴らを確実に葬るには直接やらないとだめなんだ」
「奴らって居残り組だったよね」
善行LVが低いクズ野郎は全員居残り組、現在はLV10を超えたぐらいであり。
中にはいまだ一桁LVだったりする、そのうちLV上げにダンジョンへと行かされるかもしれないが。
そうなると簡単に死ぬ可能性は低くなって来る。
「直接手を出すのは辞めておいた方が良いよ」
「なんでよ!」
「自分が元の世界に戻れなくなるからよ」
当然のことながら人殺しは悪行だ、一人殺せば相手が悪人だとしても善行LVを減らすことになる。
召喚勇者を殺しても善行LVが上がる場合は、そう言うクエストが発生した場合に限られている。
例えば勇者候補がNPCを殺して逃げたとか、お尋ね者になったとか。
もしくは魔族側に寝返って王国に危害を及ぼしたとかいう形になれば、悪人を討伐するクエストとして彼らに天罰を下せる。
「それまで待てって言う事?」
「あなたね、あいつらがどんなに憎くてもあなた自身が戻れないと意味ないでしょ、それとも一緒に死んでもいいの?後悔しない?」
「…それは」
「悪い奴らは死んで当たり前、だけどそのために犠牲になるなんておかしいでしょ」
「やるならチャンスが来るまで待たないと、そう言う事ね」
「あんた、名前は?」
「大城柚子」
「私は滑川美佳」
「私は朝倉明奈」
「なんか名乗ってるし、私は木村祥子」
「六月純です」
何故か名乗り合ってお互いの話を移動の間にすることになった。
どうせなら協力し合ってこの世界から生きて戻りたい、そんな思いから協力しようと言う事になったのだが。
この世界がそんなに甘くはないことがこれから徐々に分かって来るだろう。




