【清掃日誌22】 ドブ攫い
俺は分不相応に洒落たカフェで食事をするのが好きなのだが、流石に仕事をしている日はガッツリと塩気の効いた飯を食わなければ身体が持たない。
労働者用食堂の軒先。
大盛ポトフとバジルの効いたフライドライスを掻き込む。
旨い。
やっぱり人間、動くと腹が減る様に出来てるんだね。
これで椅子やテーブルがあれば最高なんだけどね。
「…ポール坊ちゃん、申し訳ありません。
この様な環境の案件に足を運んで下さるとは…」
『ベーカー課長が謝る事じゃないよ。
そもそもウチの家業なんだからさ。
俺が来るのは本来当たり前なんだよ。』
数日前から弊社・ポールソン清掃会社は工業区にある小運河を清掃している。
工業区では昔から不法投棄が著しく、この小運河も最低でも半年に一回清掃しないとゴミで埋まってしまうからだ。
要はドブ攫いをしているのだ。
俺達がテラス(という名の裏軒)に追いやられて地べたに座ってメシを食わされているのは、作業で臭いが付いてしまっている所為である。
通りがかる労働者達が「ゴミ屋かよ。」「臭いなあ。」「ゴミ屋が食堂来るなよ。」と心無い言葉を投げ掛けて行く。
「坊ちゃん。
せめて坊ちゃんだけでもちゃんとした店でお食事をなさって下さい。」
『大丈夫だよ。
ここの店、俺は結構好きだな。』
ドブ攫いの日は、労働者の集まりが悪い。
当たり前だ。
こんな仕事、好きでやってる奴なんかいる訳がない。
(臨時労働者の増員を掛けたが、全く集まらなかったので社員を交代でこの現場に投入している。)
本職である弊社ですら請けたくはない案件だったのだ。
ただ、今回は工業区の役人共にゴリ押しされて泣く泣く請ける羽目になった。
(許認可権をチラつかされたらね、そりゃあ仕方ないよね。)
所詮は掃除屋、俺達の立場は極めて弱い。
この仕事を断れないと悟った時から、スキルを使うか否かを悩み続けている。
俺の保有スキルは【清掃】。
読んで字の如く、僅かなコインを触媒に何でも清掃してしまう能力である。
この規模の小運河なら、金貨が5枚程度(5万ウェン)あれば俺1人で浄化する事が可能だ。
時間も小一時間あれば十分だろう。
…故にこそ使えない。
俺が頑張れば頑張る程、雇用が失われてしまうからである。
清掃業は、食い詰めた者の最後の砦だ。
弊社が雇用枠を減らせば、目の前の何人かが確実に野垂れ死ぬ。
俺がスキルを使わなければ、労働者達は苦役に晒され続ける。
俺がスキルを使えば、労働者達は苦役すらも失う。
どれだけ考えても、正解は未だに見えない。
『みんな、本当にゴメンな。
最近はキーン不動産の仕事を安定して請けれているし、もう運河はやらずに済むと思っていた。
区長があそこまで形振り構わず強要して来るなんて思いもしなかったから…』
「謝る事などありません。
我々一同、坊ちゃんに食べさせて頂いているのですから!」
『逆だよ。
俺達家族が暮らせてるのは、皆が会社で働いてくれているからさ。』
いや、この台詞に関しては欺瞞だな。
認めたくは無いが、「会社がオマエラを喰わせてやってる。」という父さんの口癖が真理だ。
弊社の業務は清掃だが、本質においては《雇用の調整弁》である事が存在意義なのだ。
「専務、頑張って早く終わらせますので!」
『あ、いや違うんだ。
早く作業を終わらせてしまうと来期も押し付けられかねない。
どうせ、すぐ不法投棄で埋まるだろうしさ。
あまり褒められた事ではないが…
時間を稼ごう。
交代で早上がりしてくれていいから。
わざとトロトロ作業して行こう。』
工程表に基づけば、10日で終わらせなければならないのだが。
俺の経験上、こういう業者が集まりにくい案件を計画通りにこなしてしまうと、次も押し付けられる可能性が高まる。
「13日間であれば、ギリギリペナルティも課されません。」
ベーカー課長が慎重に押し殺した声で提案する。
生真面目な彼にとって、姦策を切り出すのはさぞかし苦痛だろう。
『みんな、13日だ。
その期間だけ我慢して欲しい。
次に押し付けられないよう、何とか交渉してみるから。』
この13日間は俺も作業に従事する。
そんな目で見るなよ、零細企業のボンボンが家業の手伝いをするだけの話じゃないか?
「おい、ゴミ屋!
臭ぇんだよ、失せろ!」
昼時で客が増えるのに比例して罵声も増える。
俺達は顔を合わせて立ち上がった。
「ちょっとアンタら!
ウチの客に因縁付けてんじゃないよ!!」
その時、店の奥から鋭い怒声が響いた。
剣幕に驚いたのか罵声を投げ掛けた者たちは逃げ去って行った。
確か店主が言ってたな。
忙しい時間帯は娘だか姪だかに手伝わせている、と。
恐らくは彼女がそれなのだろう。
「ゴメンね。
アナタ達お客なのに、外に出しちゃって。
さっき貰ったチップだけど、やっぱり返すわ。
寧ろこっちが何か追加サービスするべき場面よ。」
『お気遣いありがとう。
でも迷惑料なので、そのまま店の皆さんで分けて下さい。』
「そろそろ席も空くから。
中で食べて行きなよ。
他の客は黙らせるから。
父さんも歓迎してるしさ。」
「メアリ!!!
清掃人夫なんかにいつまで構ってる!?
早く戻って来い!!」
「…ゴメン。
父さんの歓迎は嘘♪
でもアタシは来店に感謝してるから。」
『…申し出は嬉しいです。
でも、我々が客の立場でも
運河の臭いをさせている者と同席したいとは思わないから。
それでは。』
俺自身が店の客層とか気にする人間だからな。
自分が嫌がられた時だけ悲劇ぶるのはおかしい話だ。
そうだろ?
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5日間ほど、そんな日が続いた。
昼食は、その定食屋の裏軒で食べ続けた。
仕方ないだろう?
他の店は軒すら貸してくれなかったのだから。
「今は他の客は居ない。
父さんに頼んで来るから、たまには椅子に座って食べなよ。」
『御提案は光栄です。
ですが、それでは店内に臭いが染みついてしまいます。』
丁度、ヘドロの深い箇所を掃除したばかりでね。
余程、スキルを使ってしまおうかと悩む程には、臭いが染みついてしまったのだ。
店内どころか、軒を借りる事すら心苦しい。
「少しだけ待っててね。
次はアナタ達の食事に取り掛かるから。」
『いつもお気遣いありがとうございます。
ここのポトフが気に入りましてね。』
「材料に使ってるのはいい野菜じゃあない。
それは知ってるよね?」
『分かります。
港湾区に友人が多いもので。』
「そっか、すまないね。
前まではちゃんとした材料を使ってたんだけど。」
屑野菜。
工業用水を使って密造されている屋内栽培作物。
当然、違法。
政府当局は躍起になってこれを根絶しようとしている。
だが、屑野菜の普及は止まらない。
生鮮食材があり得ないスピードで高騰している事が理由だ。
野菜も果物も正規品は買えない値段になった。
背に腹は代えられないから、危険で不味い屑野菜を皆が泣く泣く食べている。
少し前は港湾区でしか作られていなかったのに、とうとう工業区や商業区でも製造が始まった。
経済法則の前では警吏の棍棒ですらも無力に過ぎない。
「おい!! ゴミ屋ぁ!!!」
俺達の食事が運ばれようとしている時だった。
店内から出て来た柄の悪い若者の団体が怒鳴り込んで来る。
「店の中まで臭いが入って来るんだよ!!!」
「ゴミ屋はゴミでも食ってろ!!!」
「目ざわりなんだよ!!」
若者たちが食堂の椅子を投げつけて来たので、俺達は一目散に逃げだした。
走るのに夢中で気が付かなかったが、どうやら肘に椅子が当たっていたらしく、後で少し腫れた。
酷いだろ?
でも清掃業を営んでいたら、こういうトラブルも日常茶飯事なんだぜ。
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『みんな当たりがキツイよな。』
「最近は失業率も上がってますから。
特に日雇い労働者が多い工業区は荒んでるんですよ。
…賃金も下げられる一方ですし。」
『ウチは下げないように父さんに頼んでおくよ。』
「いつもすみません。
高額案件の時に払われるボーナスも
アレ、本当は坊ちゃんが言い出してくれたんですよね?」
『さあ、どうだったかな。
キーン不動産にも許可をちゃんと取ってあるから
しばらく案件ボーナスは無くならないと思うよ。』
「…何から何まで。」
『俺ね。
もう少し頑張って富裕区や貴族区の仕事を取るよ。
せめて仕事場所位は選びたいよね。』
地域差別をするつもりはないが。
作業地の民度の違いは無視できない。
俺達みたいに立場の弱い人間にとっては死活問題だからな。
「では、専務。
午後は大通りの脇まで工程を進めますよ?」
『いや!
まだ皆に食事が行き渡ってない。』
「ははっ…
もう諦めました。
昼飯抜きで、さっさと今日の分を終わらせてしまいます。」
『休憩、まだ昼休憩時間だ。
俺、何か食べる物買って来るから。
みんな、身体を休めておいて!』
纏まった人数の弁当を買えそうな場所を走って探しながら、街を見渡す。
…駄目だ、思っていた以上に食料が出回っていない。
今日の作業員は俺を入れて計19名。
探せば何とかなると思ったが、どこも在庫切れで閉店している。
仕方ない。
区役所の売店で軍の放出レーションを買うか…
もう少しまともな物を食わせてやりたいが…
「あら、やっぱりさっきの掃除屋さんだ。」
『食堂の?
先程はご迷惑をお掛けしました。』
「ちょっとちょっと、お兄さんが謝る筋合いじゃないでしょ。
この辺、ガラ悪いんだ。
ゴメンね。」
『もう、お店には立ち寄らない事に決めました。
従業員達にも言い含めておきます。』
「あら、やっぱり貴方が社長さん?」
『いえ。
たまにしか家業を手伝わない怠け者です。』
「うふふふ。
変な人。」
『それではお嬢さん、色々とありがとうございました。』
「待って。
食料探してるんでしょ?」
『あ、はい。
ですので放出品のレーションを…』
「やめときなさいな。
最近は消費期限シール張り替えてるって噂よ。」
『そうなんですか!?
区役所の取扱品なのに!?』
「今の区長になってから変な事が多いのよ。
レーションもきっとアイツらの所為。
少なくともアタシ達はそう信じてる。
選挙の直後から異臭がするようになったから。
そんなことよりさ!
お兄さん達が戻って来るかと思ってね。
玉葱のプルスを残してあるんだ。
取りに来なよ。」
『い、いや。
気持ちはありがたいですが。
どうして俺達なんかに…』
「お兄さん達だろ?
運河掃除に来てくれた会社って。」
『え、ええ。
如何にも。』
「工業区の業者同士でさぁ。
ずっと押し付けあってたんだ。
区議員達も偉そうに言うばっかりで、中抜きする事しか考えてないし。」
『…。』
「きっと好きで請けてくれた訳じゃないんだと思う。
でも、助かったよ。
運河が詰まってさ、最近は貨物艇も来れなくなっちゃってた。
臭いが酷過ぎて体調を崩す奴も多かった。
来てくれてありがとう。」
『…仕事はします。
でも、来期は請けない方向に持って行きます。』
「…そっか。
色々ゴメンね。」
『いえ、こちらこそ
大したお力になれずに申し訳ありません。』
2人で出前用のミニリアカーを引きながら、ポツポツと情報交換をする。
工業区の食糧事情も大抵酷い。
割り振られている筈の配給が皆に行き渡らない。
どこかで止まっている・抜かれている。堰き止められている。
『ヤクザですか?』
「ふふふ。
本当にそう思う?」
『いえ、地方では…
ヤクザ者が配給品を横領するケースが散見されると聞いたものですから。』
「自覚がないのよ。」
『?』
「みんな、自分が泥棒だっていう自覚がないの。」
『ど、泥棒ですか?』
「配給。
皆が不正をしているのよ。
書類を誤魔化して二重取りをしたり、受給申請の時期だけ志願兵登録をしたりね。
それを全員がやってるの。」
『い、いや。
流石に全員ということは。』
「見たでしょ?
運河。
アレ、近所の住民全員がゴミを捨てて、見て見ぬフリをし続けなきゃ
ああはならないわ。」
『…。』
そうなのだ。
住民が不法投棄さえしなければ、そもそもが税金を投入して清掃業者を呼ぶ必要がない。
運河など氷山の一角だ。
工業区の人々は、自分で自分の首を絞めている。
勿論、工業区の住民だけが不正をする訳でもない。
貴族区や富裕区にだって下らない振舞をする人間はいっぱいいる。
だが、積極的に街を汚すのは貧民であって、貴族は自分の近所をみすみす汚さない。
その違いは何か?
貴族にとって自らが住む屋敷や街は私物でありステータスだが、貧民に誇り以外の私物は無く、日頃押し込められている団地や地区は憎むべき牢獄だからである。
だから工業区の人々はゴミを捨てる事で境遇に報復する。
ああ、わかる。
鬱憤が溜まっている事は理解出来るよ?
物価は上がる、賃金は下がる、雇用は無くなる、金持ち達は見せつける様に享楽に耽る。
どこかに当たり散らさなきゃ、やってらんないよな。
その当たり先が運河だったり清掃業者だったりするだけの話なのだ。
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娘は鍋の蓋をまな板代わりにして手際よくサラミを刻む。
温めなおされたプルスに、パセリとサラミとフライドオニオンが散りばめられる。
きっと正規の大麦ではない筈だが、それでも口に入れたプルスは中央区のレストランで出されるものと遜色がなかった。
俺達は頬張りながら無邪気に歓声を挙げた。
匂いを嗅いだ通行人たちが地べたに座った俺達を羨ましそうに眺める程の逸品である。
人間、腹が膨れ心が感銘を受ければ力が湧くのだろう。
その後の作業信じられない程スムーズに進んだ。
解散間際に娘が鍋を引き取りに来たので全員で礼を述べながら返却する。
「随分、綺麗にしてくれたね。」
『そういう契約ですから。』
「臭いがかなりマシになってるけど…
何か特別な薬でも使った?」
随分勘のいい女だ。
少しだけスキルを使った事を察したか?
いや、違うな。
高い当事者意識の賜物なのだろう。
『いえ。
普通の清掃を行っただけです。』
「あはは。」
『?』
「お兄さん、嘘が下手だってよく言われない?」
『妹や幼馴染や別れた妻からは
いつも《嘘つき》と叱責されています。』
「ふふっ。
愛されてる証拠だよ。
女が《嘘つき》呼ばわりして責めるのはねえ、本命の男にだけさ。」
『勉強になります。』
「ねえ、どうして?」
『?』
「どうして、そんなに熱心にやってくれてるの?
さっきも言ったけどさ。
地元の人間が押し付け合ってる貧乏籤なんだよ?」
『…これが弊社の業務ですから。
無論、抜本的な解決にはなっているとは申しませんが。』
「それって何とかしてくれるって… ことでしょ?」
…何とかするのはどこぞの不動産屋だがな。
『仰る意味が分かりません。
食事、美味しかったです。
先程の騒動の迷惑料、後で送らせて下さい。』
「やめてよ、却って迷惑だからさ。」
『では迷惑料を後で掛けさせて頂きます。』
「あっはっは。
妹さんと幼馴染さんと別れた奥さんが怒る気持ちもわかるよww」
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「どうして私に相談しないんだ。
工業区だろう?
あそこの区長。
あんな小物は何とでもなる。」
『アンタがバタバタしているみたいだったからな。
声を掛けるのに気が引けた。』
「私が不在ならメッセージだけでも置いていけ。
社員にもハロルドにも言い含めてある。」
『お気遣い感謝するよ。』
「ただの返礼だ。
感謝される程のこともない。」
『返礼をねだりに来た時にそういう話をされると気まずいな。』
「…要は運河に不法投棄させないように持って行けばいいんだな?」
『出来れば、不法投棄全般を抑制して欲しい。
あ、それと工業区。
全然食料が行き渡ってない。
…配給が足りないんだ。』
「わかった。
不正が起こりにくい配布方法を現場に考えさせる。」
『別に不正があるとまでは言っていない。』
「オマエが言葉を濁したという事は、住民側も不正を行っているということだ。」
…敵わないな、この男には。
『この埋め合わせは必ずする。
アンタの物件、今度スキルで請け負うよ。
だから、不法投棄を何とかして欲しい。』
「埋め合わせ?
オマエは何を言っている?」
『いや、タダで頼み事をする訳にもいかんだろう。』
「…。」
『何だよ?』
ドナルド・キーンは大きな左手で顔を覆い、声を立てずに身体を揺する。
昔からコイツは本当に嬉しい時はこうやって笑うのだ。
陰謀が成功した時とかな。
『おい、何がおかしい?』
俺は後悔の溜息を漏らしながら、笑い続けるこの男を眺めていた。
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解決は極めてシンプルだった。
ヤクザの下部組織に不法投棄の監視権業務が委託されたのだ。
往来で何人かの若者が殴られているのを見た。
蹴飛ばされいる老婆すらも見かけた。
ただでさえ強勢を誇っていた工業区のヤクザはますます増長し、区民たちは行政を蛇蝎のように憎んだ。
政治局でも監視業務委託を問題視しているらしく、査察チームが編成中とのこと。
ついでに以前から黒い疑惑が囁かれていた区長や区議員の事務所にもメスが入るらしい。
当初はドナルド・キーンに激しい不信感を抱いた俺だったが、奴の本命を理解した事で一応の矛は収めることにした。
長年、不法投棄に悩まされていた運河は嘘のように綺麗になった。
そりゃあ誰だってヤクザに絡まれたくないからな。
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「ねえ、お兄さんがやったんだよね?
この奇跡みたいな景色。」
『さあ、俺はただの掃除屋です。』
色々な意味で仕事は終わった。
区役所にはもっと粘着されるかと思ったが、杞憂だった。
まあ家宅捜索されている最中に掃除屋の事なんか一々考える奴はいなのだろう。
「御礼も言わせてくれないんだね。」
『我々は与えられた業務を遂行しただけです。
もしも想定以上の成果が上がったのであれば
それは行政当局や区民の皆様のご助力の賜物です。』
「でも、知ってるよ。
ありがとう。
お兄さんはアタシのヒーローだよ。」
『過大評価は光栄ですが、俺はただの掃除屋に過ぎません。』
「嘘つき♪」




