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反応はすぐに返ってきた。

慌ててさらに書き込みをしようとしたけれど、リーゼが待ったをかけてきた。

さらに表示を弄るよう言われる。

言われた通りにした。


「これで喋るか考えるだけで書き込みできるぞ。やってみ?」


やってみる。

できた。

これなら、声に出す必要が無いので【無能】という単語が出ても、他の客等に聞かれる心配はない。


そうして知ったのは、ギフト【無能】についての情報だった。

僕の知らない情報だった。

それは聞いた事のない話ばかりで、ただただ驚いた。


「【無能】は、クズギフトじゃ、ない?」


小さく、本当に小さく呟いた。

その呟きは、リーゼに届いていた。


「あぁ、そうだよ。

神様から嫌われてるとか、そんなのは嘘っぱちだ」


嘘っぱち。

その言葉に、胸がスゥっと軽くなる。

僕は、神様に嫌われたんじゃない。

ただ、他の人と比べるとスキルの得方、覚え方が違うだけ。

そう説明される。


「……僕は無能の無価値なんかじゃ、ない?」


「あぁ、これからその証拠を見せてやる」


「証拠?」


「研修だよ、研修。

あぁ、ところで少年は食べ物の好き嫌いはあるか?」


「はい?」


意味がわからなかった。

同時に掲示板へ、リーゼの今の言葉が書き込まれる。


「とくにないけど」


「それなら良かった。

これ食べたら早速行くぞ」


なんて言って、注文したポテトをガツガツと食べ、アルコールを飲み干した。

僕もミルクを飲み干す。


そこからの行動は早かった。

リーゼは適当なモンスターの討伐クエストを受ける。

そして僕を連れて、そのモンスターが出る森までやってきた。


「あのぅ、リーゼさん?」


僕の顔は引きつっていた。

その森は、高ランクのモンスターが出る危険地域だったからだ。

冒険者に成り立てホヤホヤの、僕のような奴が来る場所ではない。


「とりあえずドラゴン狩ろうか。

あ、トドメはお前がさせよー」


「え、えええ?!」


無理だ。

僕は今までドラゴンなんて倒したことはない。

それどころか、畑を襲ってきたスライムにすらボコボコにされてきた経歴を持つくらい弱っちいのだ。


「む、無理無理無理!!

絶対、無理!!」


「大丈夫大丈夫、手伝ってやるから」


「というか、なんでドラゴン退治?!」


僕は悲鳴を上げる。


「え、だって、【無能】のギフトホルダーがスキルを得る方法がこれなんだぞ」


「はい?」


僕が聞き返そうとした時。

僕たちの頭上に影がさした。

見上げると、そこにはレッドアークドラゴンと呼ばれる上位種のドラゴンがいた。


待って待ってちょっと待って!!?


僕はもう半泣きどころか全泣きだった。


「お、食べがいがありそうなのが来たな」


リーゼはそう口にして、トン、とジャンプした。

その時、気づいた。

リーゼは武器を持っていなかった。

普通、ドラゴン退治には武器や魔法を使う。

けれども、彼女は武器を手にしていない。

ならば、魔法を使うのだろうかと一瞬考えた。

けれど、その予想は見事に打ち砕かれることとなった。


どごぉっ!!


リーゼは、ドラゴンの横っ面を蹴ったのだ。

鈍く、だけれど大きな音が響いてドラゴンが倒れる。

ドラゴンは起き上がる気配がない。


「よーし、食材確保っと」


リーゼがまたなんか言った。


「ほらほら、こっちこい。

こいつ、〆るから」


なんか言っている。

なんなら、リーゼは手招きしている。

僕は呆然と、それでも足を動かしてリーゼの隣へ立つ。


リーゼは指を空中で滑らせる。

すると、剣が出現した。

その柄を僕の方へ向けながら、


「デカイからなぁ、これじゃないと神経まで届かないんだよなぁ」


と言ってくる。

さらに、


「ほら、ここな?

ここに神経集中してるから、ここを切ればこいつ締められるから」


と、ドラゴンの首を指さしてくる。

刺せ、ということなのだろう。

うぅ。


「……えいっ!!」


僕は剣を受け取ると、思いっきりドラゴンの首へ叩きつけた。

そこからも、リーゼの指示に従って動いた。

ドラゴンを解体したのだ。

ギルドへ提出する素材と、僕たちが食べる食材にわける。

そう、食べるのだ。

解体しながら、リーゼが説明してくれた。


「自分でモンスターを倒して、それを調理して食べる。

そうしないと【無能】のギフトホルダーはスキルを得られないんだ。

これが、スレで書かれていた【無能】の凄い秘密の正体だ」


「……本当ですか?」


とても、信じられなかった。


「まぁ、信じられないよな。

でも、食べてみてからでも文句は言えるだろ」


リーゼは楽しそうに言いつつ、火を起こす。

そして、切り分けたドラゴン肉に下処理をすると焼き始めたのだった。

肉は、普通に美味しかった。

普段から少食な僕だけど、ガツガツとたくさん平らげてしまった。


そして、この後、掲示板へ報告に戻った僕はステータスを確認した。

言われた通り、スキルが増えていた。


■■■


○名前:サツキ・アルドール

○状態:普通

○ギフト:無能

技能(スキル):[邪炎][落雷][土穿][暴風][飛翔]

特殊(エクストラ・スキル):[邪眼]


■■■



掲示板にリーゼが、そのステータス表示を貼り付けてくれた。


掲示板にいる人たちから、【おめでとう】を言われた。


この時は素直に【ありがとう】を書き込むことができた。

けれど、同時に疑問が浮かぶ。


「リーゼはいったい何者なんですか?」


その疑問が掲示板へと書き込まれた。

そもそも、ドラゴンを一人で蹴飛ばすなんてこと普通できるわけはないのだ。

そのことも書き込まれる。

名前のところは、【底辺冒険者】に自動で書き換わる。

リーゼはニコニコと楽しそうに笑っていた。

彼女が掲示板へ書き込みをする。

そこには、細かいことなんてどうだっていい、と書かれていた。

さらに、スレ民達から色々教わる気になったか、とも書かれていた。


僕は、リーゼを見る。


「うん、なった」


僕は頷いた。

リーゼは、嬉しそうにはにかんだ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 底辺さんすげー [一言] マイペースな姐さんに振り回される田舎少年は良い
[良い点] ステータスダウンももしかして嘘? 嫌われるで民衆が敵になるのはまぁ理解できなくもないけど、喰えだけじゃ分からんとこに〆てがあるのね… [気になる点] この秘密初めて知った無能はあれかな? …
[良い点] ま・さ・かのステゴロw [気になる点] 【無能】=無制限取得技能の略なのかしら [一言] “なろう”のおねショタにそんなものはイラナイです むしろ、『胃袋の中にまで歯生えてんのかオマエ』み…
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